きっかけはお兄ちゃん

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気持ちが常に安定してるタイプ、だけど……

酒井亜樹, HPCJC, 女子エリート, 500mTT, 2023全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム

Q:走ってる時に楽しさや高揚感は感じますか?

必死で漕いでいるので、楽しいとかはないですね。これはBMXの時もそうでしたが、走る前はすごく怖くて不安。でも終わったら「あ〜、楽しかった!」って思えることもあります。

Q:いつもニコニコしているので、あまり緊張していないように見えます。

普段から、あまり感情の浮き沈みがない方かなと思います。レースでは緊張しますが……実は「友達と喧嘩したこと」が、人生で一度もないんです。あまり腹が立たないタイプだと思います。

落ち込むことはあるけれど、それもレースの時くらいです。

丹野夏波, 女子エリート, 2022全日本選手権BMXレース

『2022 BMXレーシング全日本選手権』で負けた時は、めちゃくちゃ落ち込みました。

予選は全部1位で、決勝でも最終コーナーまで1位で走ってたんです。でもぶつかって、最後のコーナーで私だけ転んでしまったんですよね。

当時のレースレポートはこちら
▶︎「2022年の日本一は島田遼と丹野夏波/2022全日本選手権BMXレース

悔しかった2022全日本をバネに

2023全日本選手権BMXレーシング

『2023全日本選手権BMXレーシング』表彰メンバー

先日行われた『2023 BMXレーシング全日本選手権』も観に行きました。去年負けてしまったので「今年は出たかった、勝ちたかった」という思いもあったのですが……

Q:2021年にはBMXレーシングで日本一にもなっています。現在はトラック競技にフィールドを変えていますが、改めて今のご自身のスタンスを教えていただけますか?

BMXのコースってあまり多くないので、一旦離れてしまうと「両方」はなかなか難しいです。1回離れて、戻れる自信もない。なので今は「転向」のつもりでトラック競技に出ています。

でもトラック競技に声をかけてもらって、「こういった形で活躍できるんなら、これはチャンスかも」と思えたことも本当です。去年の無念を晴らす場がなかったのは残念ですが、今はトラック競技で頑張ろうと思っています。悔しい思いはこっちで力に変えようと思います!

私って「自転車が好き」だったんだ

Q:トラック競技に転向するきっかけは、BMXレーサーを対象としたトラック競技への適性テストだったかと思います。その時、どのようなことを感じましたか?

私はこれまで、自転車といえばBMXしか乗ったことがありませんでした。ピストバイクはおろか、ロードバイクにすら乗ったことがない。トラック競技テストの時に初めてトラックバイクに乗った時、何かわからないけど楽しくて。

「他の自転車でも楽しいんだ」ってテストの時に初めて思いました。

酒井亜樹, 女子500mTT, WOMEN'S 500mTT, 2023アジア選手権トラック, 2023 Asian Track Championships Nilai, Malaysia

BMXは大好きだったけど、たぶん私って「自転車が好き」だったんですね。

BMXが好きだしBMXで強くなれたら良かったけれど、こうやって機会をもらえたから、このフィールドでとにかく強くなりたい。速く走りたい。そう思いました。

Q:BMXでもナショナルチームの枠にいますが、トラックに来て環境の違いは感じますか?

めちゃくちゃ感じます。こんな環境に誘っていただいてとてもありがたいと思っています。

今でもBMXのナショナルチームには一応名前が残ってるんです。でも入っていても、一緒に集まって練習をやるってことはなくて……「アジア選手権いきまーす、◯月◯日にここ集合ね」って感じ。今は「自分は練習するだけ」の環境を作っていただいているので、とてもありがたいと思います。

Q:実家のご家族は、このチャレンジをどのように受け止めてますか?

サポートしてくれてます。「好きなことをやるんなら、それを応援するよ」って。

実は今、伊豆で乗ってる車も実家の車。私の車ってわけじゃないんですよね(笑)一旦大阪に帰ると思ってたんですが、そのまま伊豆で暮らすことになったので……だから「ごめんね」って言いながら乗っています。

「速さ」が「強さ」に直結する面白さ

酒井亜樹, 女子500mTT, WOMEN'S 500mTT, 2023アジア選手権トラック, 2023 Asian Track Championships Nilai, Malaysia

Q:今の酒井選手は走るたびに日本記録を更新するので、観る側としたら「おいおいどこまで行くんだ」という気持ちになってしまいます。

そんなことないですよ(笑)
BMXってタイムが速ければ必ず勝てるわけじゃないのですが、チームスプリントの1走は「速さが勝ちに直結する」ポジションです。その数字の変化とか、成長が目で見てわかるところはすごく楽しいですね。

あと、これは今の時期だからこそかもですが、できることがどんどん増えていくのが楽しいです。

酒井亜樹が日本記録を2回更新 500mタイムトライアル/2023アジア選手権トラック

 

Q:タイムの良さって、走っていて実感できるものですか?

今はまだそれほど強くないですね。アジア選手権の時は500mタイムトライアルで1本目が19秒2、2本目が19秒1(※1周目のタイム、2本とも最終的に日本記録を更新)だったのですが、この差は走っている時はわからなかったです。終わってタイムを聞いて「ああ、良かったんや」ってわかる感じ。

Q:スタートは顔を上げて、立ち漕ぎでぐっぐっと漕ぎ始めますよね。一旦座ってからって、下を見てるんですか、それとも前を見てますか?

私は前を向いている方だと思います。下を向いたらどっか違うところに行っちゃうので……でも空力的なことを考えたら、下を向いた方が体が小さくなるので、良さそうですよね。まだそこまでいけてないです。

酒井亜樹, 梅川風子, 佐藤水菜, 女子チームスプリント予選, WOMEN'S Team Sprint Qualification, 2023アジア選手権トラック, 2023 Asian Track Championships Nilai, Malaysia

Q:チームスプリントは1走なので1周で離脱するわけですが、1周走り終わった時の疲れ具合ってどんなものですか?

レース前が100だとして、0まで使い切ってる……つもり……そうであって欲しい……(笑)

出し切れているかわからないくらい「気づいたらゴール」って感じなんです。とりあえず一生懸命踏んでいます。

酒井亜樹, 女子500mTT, WOMEN'S 500mTT, 2023アジア選手権トラック, 2023 Asian Track Championships Nilai, Malaysia

Q:最後に、世界選手権での個人の目標を教えてください。

アジア選手権の時の500mタイムトライアルで出した、19秒1が私の1周のベストタイムです。同じくらいか、それより速いタイムを出したいです。世界を見れば18秒7くらいの選手がいるので、18秒5くらいを出せるようにならなきゃ勝てない。いつかは18秒台を出したいですね。

Q:今は伸び代や期待感もすごく大きい時期ですよね。

はい、何もわからないけれど、新しいことに挑戦する楽しさはすごく感じています!