中長距離のパリオリンピック出場の命運を握る種目『チームパシュート』。東京オリンピックでは男女ともに上位8か国に入れず出場を逃した種目だが、2024年パリオリンピックに向けては、今シーズンから再挑戦が始まる。
パリオリンピックではチームパシュートによる出場国枠が広がり、上位10か国(東京では8か国)が出場可能。この種目での出場枠を獲得できれば、マディソンが付随し、結果的にオムニアムにも出場出来るため、チームの戦略上、重要な意味をもつ種目となる。
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新シーズン直前。重要なチームパシュートで世界に挑む祐誠高校出身コンビ(卒業生:今村駿介/チームブリヂストンサイクリング 在学生:池田瑞紀/チーム楽天Kドリームス)に、種目の見どころ、走っている自分たちにとってはどんな種目なのかなど、この種目について語っていただいた。
スピードと、「整う」感覚
Q:チームパシュートの見どころを観客目線でいうと、どこでしょうか?
今村:やっぱりスピードだと思います。男子は常に時速60km以上で走るため、相当速いです。交代も見どころの1つではありますが、やはりスピードですね。
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今村駿介:チームブリヂストンサイクリング所属・祐誠高校卒業生
池田:私もスピードだと思います。個人パシュートと比べると、普段1人では出せないようなスピードを見ることが出来ます。
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池田瑞紀:チーム楽天Kドリームス所属・祐誠高校3年生(2023年3月卒業予定)
今村:あとは対戦だと、ホームとバックに分かれてのレースになるので、どっちが勝つのか見られるところも面白いんじゃないでしょうか。
Q:では走っている側としての「面白いところ」はどこなのでしょう?
今村:自分の目線、体感での話になりますが、チームパシュートって「タイムが出ているからキツい」というわけではないんですよね。タイムが出ていても隊列が整っていれば、キツくないんです。むしろタイムが出る時は隊列が整っていて「無理をしていない状態」というか……タイムが出た方がナチュラルな力と言えるのかもしれません。
池田:私は、自分で出しているスピード以上のスピードが出せるところと、皆がそろっている時の一体感が凄いと感じます。隊列が整っていなければそういった状態ではないので。
わずか10cm
Q:その「整っている」感じは、走っている時にわかるものですか?
今村:はい。ベロドロームの床材は細長い板をいくつも並べたものですが、その隣の一本と自分が乗っている板との違いで、スピードの伸びが違うこともあります。皆が一緒のライン、一緒の板に乗っている時は整っていると感じます。
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Q:池田選手は感じたことはありますか?
池田:……まだ女子は練習が少ないこともあり、そのレベルには達していないと思います。
Q:整っている時、前との距離感はどんな感じですか?
今村:大体10cmくらいかと思います。それより詰めてしまうと、前に何かあった時の影響が大きいです。逆にそれ以上離れると空気抵抗が大きくなるので大体10cmかと思います。
Q:では走っている時に気を付けていることはありますか?
池田:私はアドレナリンが凄く出るので、チームとして設定されたペースを守ることを気を付けています。自分ひとりだけでなく、チームの種目ですので。アドレナリンが出過ぎると「ヤバい、ヤバい」となってしまいます。ですから落ち着いて走れよう気を付けています。
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今村:僕は第3走なので、自分が前に出るまでの体力に気を付けています。そこまでに力を使いすぎないようにしないと、自分が前に出てからがキツくなってしまいます。第3走だと隊列から離れるわけにはいきませんので、自分のパフォーマンスが結果に直結してしまいます。
加えて、僕は肩幅が広いので、空力的には良くない身体つきなんです。同じパワー領域で走っていてもロスが多いので、余計に走りには気を使います。
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左:窪木一茂、右:今村駿介