自己中なくらいでちょうどいい!
長迫:チームスプリントってチーム競技だから協調性が要ると思いますが、1走の人だけは必要無いと思いますね。
梅川:(笑)
長迫:「とにかく速く走ろう」と思うとどうしても後ろを置いていってしまいます。千切らんといけん、千切ってナンボだと思ってるわけですよ。だから1走は協調性がない。自己中、めげない、責任感。それが第1走です。
※千切る……後ろを置いていくこと
梅川:私もそう。2走に対して「気持ちよく走って欲しい」なんて気持ち、無いからね。後ろを苦しめられたらこっちの勝ちですよ。
長迫:(太田)りゆが苦しんでるところを見ながら「しめしめ」ってしてるんだ……。
梅川:そう(笑)交代ラインで被されて来てたら「私、遅かったのかな……」ってなる。
長迫:うん、申し訳ないけど自分が走り終わるラインで後ろが来てなかったら「やったー」って思うよね。
Q:チーム種目ではあるものの、1走に関しては2走との勝負でもある、と。
梅川:そうそう。2走との殺し合い。
長迫:「ぶっちぎってやる」ってね。
チーム種目だからこその心の変化
Q:チームスプリントは短距離種目としては唯一のチーム戦ですが、個人種目に挑む時とメンタリティの違いはありますか?
梅川:それは違います。日本の競輪とチームスプリントの違いと同じで、タイム種目と対人種目の違いはあります。対人種目だと心が冷たくなって、タイム種目だと逆にアツくなる感じです。
Q:冷静と情熱?
梅川:はい。チームスプリントは情熱だけど、ケイリンやスプリントは冷た〜く、ひや〜っとしてます。
Q:長迫選手は、BMXとの違いは感じますか?
長迫:東京2020オリンピック以前の新田(祐大)さん深谷(知広)さんとのチームの時も、最初は正直全然噛み合いませんでした。レベル的にも低かったところから、徐々に上がっていって最終的にはワールドカップで優勝できるところにまで成長しました。
BMXでの優勝と比べると、3人でやるぶん3倍くらいの嬉しさがありましたね。実績のないところからスタートしたから嬉しいし、「この人たちのために頑張って良かったな」とも思ったし。
だからこそ日々の練習で怠けるやつを見ると腹が立つんだけど、でも個人種目だったら他の人の怠けなんてどうでもいいですね。
梅川:そうですね、個人種目ならどうでもいい。
長迫:チーム種目だからこそ、チームメンバーがしっかりやっていないと気になります。
Q:それは実際に指摘することも?
長迫:ある程度経験のある選手なら雰囲気で察しますが、若い子には言いますね。(太田)海也なんかは一個褒めるとすごく上機嫌になっちゃうんですよね。だから「あんま浮かれるな、最低ラインだと思ってやれ」みたいなことはよく言います。
走り終わっても結果が分からない
Q:1走はチームでただひとり、自分が走り終わってから2走・3走の走りを見ることができるポジションだと思いますが、自分が走り終わって、他の選手たちを見てる時ってどんな心境でしょう?
梅川:私が一番見たいのはタイムなんですよね。でも目が悪いのでそれも見れなくて、ただフワっと見てる感じ……
長迫:僕は1走にすべてをかけているので、走り終わると「ハ〜っ……」ってなっている状態。だからレースは全然見られてないです。ワールドカップで優勝した時も、終わってから深谷さんに肩を叩かれて「優勝だよ!」って言われて、「えっ?」って(笑)
長迫:思ったより早くレースが終わっちゃうという点もあります。(バンクの)上に上がったらもう3走目に入っちゃったりするし、レースを見る暇がないですね。
梅川:私は、早くバンクの下に降りたいんだけど、まだレースが続いているから降りられない。(邪魔にならないように)バンクの上部で走るんだけど、ある程度スピードを出してないとバンクから落っこちちゃうから……私はあの時間、結構しんどいんですよね(笑)
Q:ではチームスプリントの「勝った/負けた」に最初に気づくのって誰なんでしょう?
長迫:コーチ!
Q:選手3人の中でお願いします。
長迫:でも2走3走は走り終わってすごくしんどいタイミングだろうし……
梅川:電光掲示板を見て確認するか、アナウンスを聞くかだから……
Q:じゃあ走った人は、みんな勝ったかどうかよくわからないってことですか?
長迫:バックストレッチでフィニッシュすると、位置的に掲示板もよく見えないんですよね。ホームでフィニッシュしたらわかるかもしれない(笑)
※チームスプリントでは2チームがホーム/バックに分かれて同時にスタートするため、電光掲示板の見やすい位置でフィニッシュするかどうかはその時々で変わる。