渾身のレースは「競輪祭決勝」
Q:2022年のナンバーワンレースを挙げるならどれですか?
どうですかね……やっぱり競輪祭決勝でしょうか。ラインの力で勝つことができましたし、一番「結果を出そう」と思って結果を出せたレースでした。
Q:レース中、ヤバいと思った瞬間はありましたか?
新田さんがダッシュするまでは「千切れたらどうしよう」と思っていました。でも仕掛けたタイミングがすごく良くて……
Q:残り2周を切ってからの2コーナー目でしたね。
はい。ダッシュがすごく良かったので、3歩目くらいまで「ウッ」って思っていたんですが、4歩目で「いけるかも」となりました。そこからは落ち着いて走れました。
Q:最後のスパートのタイミングは早いと感じましたか?(最終周回の2コーナーを抜けたところ)
番手捲りなので、あれくらいで普通だと思います。後ろから車輪の音が聞こえていて「うわ、来てる」と、ずっと思っていました。前に人がいない時は、自分の前輪だけずっと見ているのですが、来てるかな?と後ろを見たらやられそうだと思って、前輪だけが視界に入っていました。
Q:逃げてる時に脇から後ろを見たりしたら、スピードは落ちますよね?
落ちると思います。でも前で逃げてる以上、後ろから誰か来たところで合わせて動くとか、対策ができるわけでもないです。ただ前に、できるだけ最短距離で、ということに集中するしかなかったです。
Q:勝った時には珍しくガッツポーズが出てましたね。
出ましたね……というか、しなきゃいけないと思って(笑)
Q:え、ファンサービスですか(笑)?
そうです(笑)だってお客さんもすごくワーってなってくれるし。……嬉しかったですよ!でもガッツポーズするのはどうなんだろうって、終わってからも思ったんです。「お前の力じゃないだろ、みんなのお陰だろ」って。
最初はあんまりでっかいガッツポーズは良くないなと思って、控えめにしたんです。でもバックまで回ってもお客さんがワーってなってくれているし、「やろ……」って最後は両手離しでやりました。
Q:では、感情の爆発ではなかったと。
色々考えちゃいましたね。終わってから「うわ、これでSSか」と思いました。
G1を獲りたい獲りたいとは思っていたのですが、「実力が伴ってるのか?」という疑問は常にありました。いざ獲っても「ここから1年SSにいていいのかな」と思ったりして。オールスターの決勝の時も松浦(悠士)さんのバックにハマって「これ優勝しちゃうぞ」と思ったんです。「優勝したら1年SSか」とか考えてたら……抜けれなかった(笑)
なので、今回はゴールした後に「SSか」と思いました。
Q:オールスターで学んだんですね(笑)
レース中にあれこれ考えるものではないと学びました(笑)あれは余裕があったのか、なかったのか……オールスターの時は足に余裕があったとは思ったんですが、抜けられなかったですね。
競技と競輪の違いの狭間で
Q:競技では1日に何本も走りますが、競輪は1日に1本です。疲れはどうですか?
競輪の時はレースに疲れるというより、宿舎生活に疲れてると思います。間違いなく競技の方がキツいですけど、何故か競輪の開催が終わると「あ〜疲れたな〜……」って思いながら帰るんですよね。
Q:それは気を使うからですか?
気を使う……と言っても、感染予防の関係で昔ほど仕事は無くなったので、そこは変わりましたね。でもやっぱり共同生活なので、多少は気を使います。
Q:新山選手はまだ若手としての扱いですか?
中堅ですかね(笑)でも北日本には若いのがあんまりいないです、関東は結構いるんですけど。後輩が欲しいですね。
Q:後輩にどうして欲しいですか?
……ストレスの捌け口になって……(笑)
Q:オールドスタイル(笑)
「コーヒー飲みたいなあ」って言われたら「じゃあ淹れますよ」ってやるんですよ。これはSSになっても関係ないです。
Q:「コーヒー飲みたいなあ」って言うのは、例えば誰ですか?
和田圭さんとか、小松崎大地さんとか……自分用にコーヒーを淹れようとしたら「お、いただきます」とか言ってきますね。
Q:これ名前出していいんですか?
いいですよ(笑)
Q:それ本当は気を使ってないのでは?
使って……ないかもですね。でも一応後輩ですから、後輩としての仕事はします。
ナショナルチームを辞めた時
Q:ナショナルチームを辞めるに至った経緯を改めてお聞きしたいのですが、どのような流れで?
自分から辞める旨を伝えました。ジャパントラックカップが終わったくらいの時ですね。やっぱり結果が出せないことが大きかったです。もちろん結果は出したかったんですが、なかなか出なくて。
自分が結果を出せない中で、周りでは出せる人は出している。同じキツいメニューをやった時のモチベーションの低さが出てきているのが、わかってきてしまって。それでも自分が強い気持ちを持てていれば良かったんですが「こんなキツい練習を何のためにしてるんだろう、結果も出せないのに」と思ってしまっていたんですよね。
競輪のためにもなりますけど、やっぱり「競技のため」の練習です。競技の自転車に乗って、競技のスケジュールに合わせてやって、でも結果が出ない。モチベーションが上がる目標を作れないままに過ごしていて、気分もすごく落ちていました。「このまま続けていいのか?」という疑問が湧いてきました。
全日本選手権の結果が出てからでも良いかな、と思ったんですが「引きずっても良くないし、全日本を最後にしよう」と決めました。1回ジャパントラックカップの時にジェイソン(・ニブレット短距離ヘッドコーチ)と話した時は「コンディション調整をして挑んだわけじゃないから」と言われました。全日本の前にもう一度「この間の話、気持ちは変わらない」と話しました。
ナショナルチームとして競技の大会に出るのはこれで最後にする、と。
Q:自分からの決断だったんですね。
はい。辞めると話した後の全日本はすごく気持ちが軽かったです。
Q:傍目からも調子が良さそうに見えました。
そこでバシっと結果を出して辞めてたらかっこよかったんですけどね。そうはならなくて。
Q:新山選手ってフィジカルデータはむしろ他の選手より良いくらいでしたよね?ハロン(200mフライングタイムトライアル)も速いし。でも結果がついてこなかった。
そこがモチベーションの差だったのかなと思います。