淡々としたレースの中でのかけひき
Q:男子のレースでアタック*がないのは珍しいと感じましたが、そもそも「アタック」するタイミングってどのように判断するものなんでしょう?狙っていくのか、その時の直感で決めるのか。
狙っていく、ですね。でも過去の世界選手権を見てみると、世界選手権のスクラッチでは「逃げ」が少なくて、最後に勝負する展開が多いんです。
※アタック:他選手を振り切るために急加速すること
Q:動く雰囲気がないというか、淡々としてましたよね。
そうですね。スプリントに自信のある選手はそれで好都合です。多くの選手は「仕掛けても、スプリント勝負でも、どっちでもいいよ」って感じだと思います。結局このレベルになるとどっちの能力も秀でていて、それなりに強いんですよね。
Q:みんな牽制してたとか、思惑が一致したなどありますか?
そう思います。逃げは生まれず、ずっと淡々としていましたからね。とはいえアタックが発生しないかどうかは、常に神経を研ぎ澄ませて見ているはずです。
残り30周、半分が過ぎた頃に僕が思っていたのは、大柄な選手の後ろで力を貯めることでした。だからオーストラリア*の選手の後ろをずっと取っていたことを覚えています。
※男子スクラッチ・オーストラリア代表はジョシュ・ダフィー
Q:確かに、彼はデカいですね。
このレース中、彼に手でどかされたシーンがあったんです。僕の前に強い選手がいて、その後ろに入りたい、みたいな時。どいてどいて、ってされました。基本的には推奨されない動作ですけど、危険回避の時なんかではOKとされるものです。
それで「何だこの野郎、絶対負けねえぞ」って思っていました(笑)
終盤戦、後方で力を貯める
Q:終盤戦に入ると、疲れも出てくると思いますが。
息が上がってるなとか、疲れもあるな、とかは思うのですが、いつもよりは少なかったです。
Q:残り20周を切ってスピードが上がる中、ちょっとずつ集団がばらけていきますね……
ペースを上げてみて「きついかな」と周りの反応を見てみたり、集団から離れることで勝率を上げたり、というそれぞれの思惑ですね。ふるいにかけながら様子を見ています。
この時はだいぶ後方にいましたが「バラけたらすぐ自分で追う」という準備をした状態でした。加えて、ここまではアクションがなかったので他の選手も余裕を残しているだろうから、集団を離れることはないだろうと思い、後ろで力を貯められる場所に残っていました。
Q:見てる側としては、先頭との差が開いて心配になる場面でした。ここから最終局面に向かっていくわけですが、集団のスイッチが入る瞬間ってどんな時なんでしょう?
それはもう、臨機応変ですね。
Q:最後の方はぐにゃぐにゃしながらというか、スピードが上がったり下がったりって感じでしたが、もうこのくらいになると体力的にキツい選手も出てきていますか?
います。踏んでやめて、踏んでやめて、でしたので。