止まった瞬間に吐き気とめまい……
Q:聞いているだけで過酷さが分かりますが、どういう気持ちで走っているんですか?タイムは見えているんでしょうか?
タイムは見えません。今回ヘルメットのバイザーを隙間から風が入ってこない、大きなものに変えたんですが、前があまり見えないんです。かろうじて見える部分を、1分間ずっと見ていました。
Q:選手の皆さんは力を出し切って、自転車を降りてから倒れますよね。なぜ自転車に乗った状態でぶっ倒れないのかが不思議なのですが。
乗ってる時って苦しいは苦しいんですけど、足が動いてるから血が巡ってるんです。止まった瞬間に血が巡らなくなって、急に吐き気とかめまいとかが出てくるんです。
Q:なるほど!自転車から降りてからがヤバいんですね。
そうなんです。心肺は落ち着こうとしているんだけど、血を巡らさないとヤバいわけで。そのギャップがヤバいです。
Q:とはいえ1分を切った時は、死にかけになりながらも「よっしゃー!」と思った?
バンクを走ってる間は喜びが強いんですけど……退避路を走ってるうちにどんどん足が痛くなってくるんですよね。降りる頃には1分切ったことなんてもう吹き飛んでます。
「痛え、痛え……」って
予選(1本目)の後は、バック側で自転車から降ろされたのですが、日本の陣地はホーム側だから、めちゃくちゃ歩かされて……もう、遠かったですね。1kmより遠かったです。
※実際の距離は70m位でしたが、その距離が地獄だったとのこと
ちょっと休ませてもらってる時にジェイソンが来て「早く来い!足回せ!」って言われましたけど、「無理無理!」って
Q:エチケット袋も用意されてましたね。
あれは保険です(笑)食べたもの全部出るっていうよりは、胃酸が出るみたいに「オエっ」ってなることはあるんですよね。
でも吐いちゃったら吐き癖がつくんじゃないかと思ってるので、あんまり吐かないようにしてます。でも沖縄合宿ではやりましたが……(笑)
負けたくない……
Q:そこまでして1kmTTに挑む、その根源はなんなのでしょう?
うーん……やっぱり「負けたくない」ですね。
相手に勝つためには自分に勝たなきゃいけない。相手に勝つために、自分をどれだけ追い込めるか。そういう勝負だと思います。
Q:私は痛みに悶えてるところを撮らせていただいているわけですが、「この野郎」って思わないですか?
思います(笑)全日本選手権では平気なふりしてやろうと思ってたんですが、マジ無理でしたね。あの時は調子も悪くて……
Q:個人種目も結果は厳しかったですね。
そうです。アジア選手権あたりから狂った感じがします。
「出る大会全てで優勝する気持ちで」
Q:それはピーキングの一環でしょうか?世界選手権にピークを持っていくための……
それは、その通りです。ジェイソンが言うには「練習の一環だから、あまり深く考えるな」とのことでした。調子が悪いことは問題がない、でも大会を「練習だから」と捉えるな、そうも言われました。
ジャパントラックカップでは調子が悪かったのですが、「お前は気持ちだ」と。
出る大会すべてで優勝するという気持ちでいないと、来年からは厳しいぞ、と言われました。調子が悪かろうが良かろうが、条件は同じだから、そういう気持ちでやれ、と。
Q:それは心に響きましたか?
はい、ズキンと来ました。
キツかったんですよ。練習量も結構多かったですし、その頃から1kmTTメインだったし。そこに響きました。
Q:何というか、修羅の道を歩いているような話で……
そうですね(笑)報われたいけど、それも自分の頑張り次第です。
競輪と比べると
Q:ちなみに1kmTTが速いことは、日本の競輪には役立つんでしょうか?
まだ良くわからないです。1つのファクターにはなると思うんですが……
Q:例えば400mバンクなら、残り1周半くらいから行ける自信はあるんでしょうか?
展開もありますが、すんなり出させてもらえるようなら楽に行けると思います。でもそれは元々なんですよね。
でも1kmTTを1日2本やることに比べたら、1日に1本しか走らない競輪は体力的にとても楽です。
Q:脇本雄太選手なんかはそれを積み重ねたタイプですね。
そうですね。バグってますね。
Q:そういったバグってる人たちを見ていて、やっぱり「自分もバグりたいな」とは思う?
そうですね、バグらないと勝てないんで。バグります!