1kmタイムトライアル。この種目は過去にはオリンピックの種目でもあったが、今は採用されていない。それなのにも関わらず、世界選手権では伝統的に種目として採用されている”過酷”なレースだ。
以前オランダの英雄テオ・ボスが
「スプリンターの痛みってのは、まぁわかり易く例えるなら、車のドアがあるでしょ?そのドアを思いっきり閉めて指を挟むと死にそうな程に痛いよね?そんな感じ(笑)それを自分から行うってところかな」
と橋本英也選手との対談で語っていた”痛み”の最たるものを感じることが出来るのが、何を隠そう1kmタイムトライアル。
2021世界選手権トラックを舞台に、自分がこれから苦しむことを分かっていながら、苦痛と孤独な闘いに挑んだ選手たちの結末をお伝えする。
世界選手権3日目、10月22日。サディスティックな種目にエントリーしたのは計23人の世界中の猛者たち。スプリント大国オランダからはジェフリー・ホーフラント(2018年のチャンピオン)、ドイツからヨアキム・アイラース(2016年のチャンピオン)、現200mフライングタイムトライアル世界記録保持者のニコラス・ポール(トリニダード・トバゴ)など、痛み好き……ではなく過酷な種目に挑戦する強豪が名を連ねた。日本からは初日のチームスプリントに出場した小原佑太がエントリー。
レースは単純に1人でスタートし、トラック4周のタイムを競う。
何と2回も地獄を味わう
予選→決勝(予選の上位8人)
勝ち上がれば2回も地獄を味わえるサービス付きな種目。日本の小原佑太は1分を切ることを目標に予選のスタートラインに立つ。
スタートすると一気に加速し、トップスピードまで持っていったら、後はそのスピードを維持するべく我慢するのみ。
小原佑太のフィニッシュタイムは目標に僅かに届かず1分0秒898。平均時速59.115kmと好タイムで予選を終える。
苦しみ抜いた小原。
1人ずつ地獄を味わいながらレースは進み、全員が走り終えての小原の順位は7位。見事に予選を通過し、再び孤独と痛みとの闘いの場を得ることに成功した。