1回戦 新田祐大
1回戦は全部で5レースが行われ、各レース2着までがそのまま次の準々決勝に進出。3着以下は敗者復活戦回りとなる。
まずは新田祐大。
新田はもうひとつの出場種目男子スプリントでは、自らも予想だにしなかった予選敗退という悔しい結果に終わっている。その日から3日が経ち、気持ちの切り替えは出来ているのか。注目が集まった。
メンバーは新田の他、オーストラリアのマシュー・グレーツァー、中国のズ・チャオ(徐超)、そして前日の男子スプリントで死闘の末に金メダルを獲得したオランダのハリー・ラブレイセン。ラブレイセンはこの種目の2020年世界選手権のチャンピオンでもある。ポーランドのマテウス・ルディク、そしてROC(ロシアオリンピック委員会)のデニス・ドミトリエフという顔触れ。いずれ劣らぬ強豪揃いの組となった。
スタート前、新田の名前が場内アナウンスでコールされると一際大きな拍手が沸き起こる。新田は自分の腹と両腿を拳で叩き、一声気合いを入れて自転車に乗る。レースに向かう時のいつものルーティンだ。
スタート後の並びは、ペーサーのすぐ後ろ、隊列の先頭に新田、2番目にROCのドミトリエフ、3番目にポーランドのルディク、4番目に中国のズ・チャオ、5番目にオランダのラブレイセン、そして最後尾の6番目にオーストラリアのグレーツァー。
残り3周でペーサーが離脱すると、まず動いたのは4番目につけていた中国のズ・チャオ。他選手の出方をうかがいながら新田を交わして先頭へ。
その後ろに付けていたROCのドミトリエフは一度新田の前に入ろうとするが、もう一度踏み直してズ・チャオを交わして先頭へ。そこからレーススピードが一気に上がった。
残り2周を切って先頭はドミトリエフ、2番目にズ・チャオ、そして3番目に新田。新田の後ろにはオランダのラブレイセン、オーストラリのグレーツァーと強豪選手が追い上げに入るタイミングを計っている。
そして迎えた最終周回。新田が最初のコーナーを回ったところでスピードを上げた。重いギアをパワー全開で踏み込みぐんぐん加速する。
新田は前を行くズ・チャオを最終コーナーで追い抜き、そしてフィニッシュ直前では先頭のドミトリエフも捕らえて1着。場内の拍手に拳を振って応えた。