決勝 ホーフラント vs ラブレイセン
予選から群を抜くスピードを武器に、決勝まで危なげなく勝ち上がったオランダのジェフリー・ホーフラントとハリー・ラブレイセン。この2人の対戦は2020年世界選手権の決勝と同じで、その時はラブレイセンが勝ってアルカンシェル(虹色の世界チャンピオンジャージ)を手にしている。
今回の予選タイムは2人が同タイムで9秒215のオリンピックレコードを樹立。同タイムの場合ラスト100mのタイムが速い選手が上位という規定によって、予選順位はホーフラントが1位となっているが、このタイムは平均時速にすると78.113km/h。超人的とも言えるスピードだった。
決勝は3回戦制で行われ、先に2回勝った方が勝者となる。
決勝 1回目
ホーフラントが外、ラブレイセンが内側からのスタート。レースは序盤から火花散る展開となる。先行するラブレイセンに対して後ろからホーフラントが揺さぶりをかけていく。
速いペースで2人のスピードが上がり、残り2周を切ったあたりからスプリント勝負が始まる。そして残り1周、コーナーの傾斜を利用してスピードを上げてきたのは後ろのホーフラント。一気に加速して先行するラブレイセンを捕らえる。
逃げるホーフラント、追うラブレイセン。そしてフィニッシュは、僅差でホーフラントが先着。ラブレイセンの強力な追い上げを力で押さえ込んで、1回目のレースを制した。
ラスト200mのタイムは9秒724。平均時速は74.044km/h。
決勝 2回目
ホーフラントが勝てば金メダル。ラブレイセンが勝てば決定戦を行い勝者を決める。
今度は内側スタートのホーフラントが先行。1回目と同じようにお互い牽制しながら序盤からペースを上げていく。残り2周手前の4コーナーでラブレイセンがフェイントをかけて前へ。
そしてさらに息詰まる攻防が続く中、残り2周を切ってからの2コーナーで後ろのホーフラントが猛然とスパート、ラブレイセンを抜いてラスト1周のスプリント勝負に出る。
1回目と同じ展開となったレース。ホーフラントが再び逃げ切って勝負を決するのかと思いきや、最終コーナーを回ったところで、追い上げるラブレイセンのスピードが上がっていく。先着したのはラブレイセン。フィニッシュ直前でホーフラントを捕らえ2回目のレース制した。
これで対戦成績は1対1。勝負は決定戦に持ち越された。このレースのラスト200mのタイムは9秒776。平均時速は73.650km/h。
決勝 決定戦
他の種目の表彰式を挟み、10分ほどの短いインターバルを経て始まった決定戦。
時速70キロ超えの高速バトルを繰り返した体には相当なダメージがあるはず。体力の回復具合も勝敗の要因となった。
内側スタートのラブレイセンが先行してレースがスタート。これまで同様互いの牽制が続く中、残り2周手前の4コーナでホーフラントがフェイントをかけて前を取る。
そして残り1周のスプリント勝負が始まった。逃げるホーフラントとの間を徐々に詰めるラブレイセン。しかしホーフラントのスピードが思いのほか上がっていかない。雌雄を決する決定戦は、ラブレイセンが逃げるホーフラントを最終バックで追い抜きそのままフィニッシュ。死闘を制しての金メダル獲得となった。
レース後、疲労困憊の表情であえぐラブレイセン。ホーフラントは自転車を降りたとたんトラックに倒れ込み、体の痛みにもだえ苦しむ。世界最強といわれる2人の金メダルを巡る戦いは、かくも厳しいものだった。
なお、男子スプリントの3位決定戦は、イギリスのジャック・カーリンとROC(ロシアオリンピック委員会)のデニス・ドミトリエフの対戦となり、ジャック・カーリンが勝って銅メダルを獲得した。
Text:伴達朗
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