8月2日から始まるオリンピック・トラック競技種目。男女それぞれ短距離はチームスプリント、スプリント、ケイリンの3種目、中長距離はチームパシュート、マディソン、オムニアムの3種目が、伊豆ベロドロームにて1週間かけて行われる。
ここでは、短距離、中長距離それぞれ競技ごとの見どころや注目選手を洗い出していこう。
短距離
チームスプリント
トラック競技初日である8月2日に行われる女子チームスプリントは、世界選手権を制しているドイツが優勝候補最有力。
世界選でドイツと金メダル争いをしたオーストラリアは、ステファニー・モートンの競技引退もあり、チームスプリントには出場せず。
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ステファニー・モートン
前回大会で、現日本ナショナルチームヘッドコーチであるブノワ・ベトゥが金メダルへと導いた中国やロシア、カナダなど、個人種目にも強い選手がいる国がメダル争いを演じることになるだろう。
8月3日に行われる男子チームスプリントでは、この東京オリンピックまでの期間に何度も超人的走りを見せ、41秒225という世界記録を持つオランダが”絶対的”優勝候補となる。
今年に入ってから世界大会への出場を避けたオランダだが、よほどのことがない限り、しっかりと狙ってくるはずだ。オランダは、昨年の世界選手権の決勝で世界記録を出したメンバーがそのまま出場する。
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オリンピック記録はロンドンでイギリスが出した42秒600。果たして東京大会でこの記録を破ることになるだろうか。
オランダに対するは、リオオリンピックでのこの種目の優勝国イギリス。昨年の世界選でオランダとの金メダル争いをしたメンバーがそのまま出場予定となっている。オーストラリアやフランスなどの記録にも注目したい。
なお日本は、昨シーズン、飛躍的な成長を見せたものの惜しくも出場枠を逃している。
スプリント
男子の予選は8月4日、勝ち上がり選が5日に続き、6日には決勝戦が行われる。
1対1の勝負となるスプリントでは、勝ち上がり戦を優位に進めるため、まず予選の200mフライングタイムトライアルでのタイムが求められる。昨年の世界選手権のタイムトライアルでは、新田祐大が日本記録となる9秒562というタイムを叩き出している。
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新田祐大
一方で、世界選の予選で異次元のタイムを出したのはオランダのハリー・ラブレイセンとジェフリー・ホーフラントの2人。チームスプリントのメンバーとしても名を連ねる2人は、東京の舞台でももちろん優勝候補筆頭だ。世界選の決勝ではその2人の頂上決戦となり、ラブレイセンに軍配が上がっている。
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スプリントでの圧倒的な力のぶつかり合いは大迫力。ラスト1周は特に、これが本当に人間が出せる速度なのかと思ってしまうほどの速さでトラックを駆け抜ける。
男子のレースを現地で観戦できる人は、世界トップスプリンターたちの速さだけでなく、走る際に鳴る、まるで走路を削るかのような轟音も体感して欲しい。
速さだけでない。スプリントでは駆け引きの巧みさも試される。アズジルハスニ・アワン(マレーシア)やマティアス・ルディク(ポーランド)、デニス・ドミトリエフ(ロシア)の予想がつかないような動き方、トリッキーかつオリジナリティのある展開も見どころだ。
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Denis Dmitriev (RUS)
日本からは新田祐大と脇本雄太が参戦する。スプリントでは特に新田の走りに注目したいところ。この延期の期間でさらに磨き上げた肉体と精神、さらにはチームメイトの協力によって、スプリントの走り方の感覚をつかんだ新田が一段違う新しい世界を見せてくれるかもしれない。
女子スプリントは8月7日に予選、最終日8日に決勝が行われる。
女子の優勝候補はドイツ勢。昨年の世界選手権で、出場種目全てで優勝しているエマ・ヒンツェ(ドイツ)が今もっとも波に乗っている一人だろう。またヒンツェだけでなく、U23のトラックヨーロッパ選手権を総ナメしているリー ソフィー・フリードリッヒ(ドイツ)は、世界選のスプリント予選でヒンツェに次ぐタイムを出しており、要注目若手選手だ。
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また、前世界王者のリー・ワイジー(香港)やアナスタシア・ボイノワ(ロシア)、ミシェル・ケルシー(カナダ)なども昨シーズンまでの世界大会で結果を残してきており、ドイツ勢の対抗となり得るだろう。
日本からは小林優香が出場。小林もまた世界選の予選フライングタイムトライアルで日本記録を打ち出している。