オムニアム、五輪種目への追加は苦肉の策?
オリンピックでは、2012年ロンドン大会で初めて、オムニアムがトラック競技正式種目として採用。続く2016年リオ大会でも6種目で構成されるオムニアムが開催された。
しかしオムニアムのオリンピック正式種目化までの道のりは単純なものではなく、関係者それぞれの思惑が絡んでいた。
オリンピックでの種目数減の理由は「男女平等」
トラック正式種目が増えていく一方、オリンピックではトラック競技の種目数が縮小されていた。2000年代に入り、オリンピックで最大8種目が採用されていたトラック競技は、2012年、2016年大会では以下の計5種目に変更となった。
【採用種目】
スプリント
チームスプリント
チームパシュート
ケイリン
オムニアム
【除外種目】
個人パシュート
ポイントレース
マディソン
除外の理由は、IOC(国際オリンピック委員会)による「男女平等」政策にあった。
トラック競技において男子種目が増えていく一方、女子は競技者人口が少ないこともあり、採用される種目数には限りがあった。そこでIOCは「オリンピックにおける男女平等」を実現するために、男女の種目数を等しくするようUCIに指示したのだ。
UCIは男女の種目数を等しくするために、女子の参加が当時はまだ難しい、マディソンをまず除外。すると今度は短距離5種目に対し、長距離種目はポイントレースのみに。スプリンターを多く有する国がメダル争いで有利になってしまう。
さらに問題は「開催期間」にも生じた。短距離メインになれば競技時間が短くなるため、このままではトラック競技の全プログラムが3〜4日で終わってしまう。せっかくのオリンピックにもかかわらず、関心を集めることが難しくなってしまうと懸念の声が集まった。
解決策としての「オムニアム」
当時UCI会長であり、IOCメンバーでもあったパット・マッケイド(Pat McQuaid)氏は個人パシュートを除外する代わりに、複数の長距離種目を含む、種目複合型のオムニアムを新たに導入することを決定。これによって男女両者が等しく行えるだけでなく、短・中長距離のバランスが取れ、開催期間は1週間程と比較的長く開催できるようにしたのだ。
なお1度除外された個人パシュートは、その後オムニアムを構成する6種目の1つに組み込まれることとなった。
次回:【5/5】150年かけて築かれた「みんなの」トラック競技/UCI世界選手権・オリンピック史を振り返る
出典・参考:Cycling Weekly
Cycling News
オリンピック公式サイト
British Cycling
Fox News
Reuters