2026年7月30日(木)〜2日(日)に開催された『2026インターハイ自転車競技』。
高校生たちによる熱戦と、数々のドラマが生み出された4日間だったが、その舞台となった会場に違和感を覚えた方もいるかもしれない。
今大会は3日目までのトラックレースは大阪の岸和田競輪場で行われ、4日目のロードレースは京都の南丹市美山町特設ロードコースで実施された。
大会主催は“京都府”であり、本来であれば京都向日町競輪場にて開催できるはずだったのだが……。向日町競輪場は2029年度にリニューアルオープンが予定されており、現在改修工事の真っ只中。こうした事情からトラックレースとロードレースで府県をまたいだ会場で開催されたという背景がある。
この影響を大きく受けたのは、本来地元バンクでの開催だった京都の北桑田高等学校。慣れ親しんだバンクでの地の利も活かせず、そもそもトラック競技の練習場所を確保するにも苦労がある。そこでMore CADENCEでは大会期間中に北桑田高等学校の柏泰地監督と、サポートメンバーとしてチームに帯同した2年生の大岩勇仁選手に話を伺った。
移動時間、選手のコンディショニング……苦難はたくさんあった
柏泰地監督 インタビュー
Q:今回、向日町競輪場の改修工事がある中でインターハイを迎えました。まずは、インターハイまでの練習環境について教えてください。
向日町競輪場が改修工事に入る前は、週末を中心に月3~4回ほどトラック練習を行うことができていました。ただ、改修工事が始まってからは、他府県の競輪場をお借りして練習する形になりました。1番近い奈良競輪場でも片道1時間以上、明石競輪場になると3〜4時間ほどかかります。移動時間だけでもかなり負担が大きくなりました。
Q:移動だけでもかなり大変だったのではないですか。
現在、部員は27人います。十数人程度ならば車で送迎することもできましたし、向日町競輪場では自転車を借りられる環境もありました。でも今は、自転車と人の両方を運ばなければいけません。全員を連れて行くことは現実的に難しく、練習では人数を絞らざるを得ませんでした。申し訳ないですが、1年生を連れて行けない日もありました。
Q:一方で京都府大会などは全員が出場しますよね。
大会となると全員参加ですので、その時は全員で明石競輪場へ行き、日帰りで大会を行うという形でした。選手たちの負担は、かなり大きかったと思います。
Q:長距離移動が続くことで、コンディション面への影響もありましたか。
今までは近くで練習ができていたので、終われば学校へ戻って休憩することもできました。しかし北桑田高等学校自体が山間部にありますから、そこからさらに奈良や明石まで移動するとなると、本当に時間がかかります。
2日続けて日帰り遠征したこともありましたが、移動だけでも疲労が蓄積してしまい、「思った以上に走れない」ということもありましたね。
Q:コンディショニングの面では、どのような工夫をされていましたか。
あらかじめ「今週はこのメンバーでトラック練習へ行く」という予定を決めて、その日に合わせて練習メニューを調整していました。トラック練習の日に1番良い状態で走れるよう、逆算しながらコンディションを整えていくようにしていました。
Q:本来であれば、走り慣れた向日町競輪場で本番に向けても練習ができたはずです。
もちろん、慣れた環境で練習できれば1番良かったと思います。でも去年のインターハイは鳥取でしたし、他の学校もみんな同じ条件なので、あまり気にせず準備を進めました。
Q:トラック練習の回数自体は減ってしまいましたか。
向日町が使えた頃と比べると、3分の1、あるいは4分の1くらいまで減ったと思います。やはり移動時間もありますし、費用もかかります。どうしても以前と同じ回数はできません。
Q:その分は、どのように補ったのでしょうか。
北桑田高等学校は、もともとロード練習に非常に適した環境があります。ロードでしっかり走り込み、脚をつくる。その下地があるからこそ、トラック練習が減った中でも対応できた部分はあったと思います。
また、インターハイ直前には鳥取で3泊4日の合宿をさせていただきました。そこで集中的にトラック練習を行い、最後の追い込みができたことは非常に大きかったです。鳥取県の皆さんをはじめ、多くの方々に協力していただいたおかげだと感謝しています。
ほとんど止まらずに練習ができる“ロード”の環境
Q:北桑田高等学校は、チームパシュートが伝統的に強い学校という印象があります。その強さの要因は、やはり練習環境が大きいのでしょうか。
街中にある学校だと、どうしても信号で止まらなければいけません。一方で、私たちが普段練習している美山や京北地域には信号が2か所しかありません。ほとんど止まることなく走り続けることができます。そのコースを何周も走るだけでも、自然と力がついていきます。
Q:その環境に魅力を感じて入学してくる選手も多いのでしょうか。
「北桑田ならロード練習がたくさんできる」ということは、多くの選手が知ってくれています。ここ5年間は全日本ジュニアロード選手権も私たちが普段練習しているコースで開催されていますし、今年のインターハイもそうです。
こうした環境をメインに練習できることは、大きな魅力になっていると思います。ロードをやりたくて入学する子もいますし、チームパシュートに憧れて入ってくる子もいます。
Q:公立高校ということもあり、私立高校とは環境面で違う部分も多いですよね。
推薦制度はありますが、競技推薦の枠は4人だけです。また寮もありますが、地域から通えない一般の生徒も利用するため、私たちだけで使えるわけではありません。私立高校のように「ぜひ来てください」と積極的に声をかけられる訳ではありませんし、予算面でも違いがあります。そういう中でも北桑田を選んで来てくれる生徒がいることは嬉しいですね。
女子個人ロードレース優勝の綱嶋凜々音
Q:今回はホームバンクを使えないという逆境もありました。選手たちの気持ちに変化はありましたか。
ロードレースが根幹としてあり、これまで通りしっかり走り込めていました。そこで培ってきた力というのは、歴代の選手たちと比べても大きく差はないと思っています。ただ、トラック練習が限られていた分、1回1回の練習に向かう姿勢は、これまで以上に集中していたと思います。
Q:監督として、チームパシュートや中長距離を目指す選手たちとは、どのような思いで向き合っていますか。
私はウェイトトレーニングなどは詳しいのですが、自転車競技の経験がないんです。立場上、私が監督ではありますが、1人でチームを見ているわけではありません。全校生徒130人ほどの学校でありながら、自転車部には顧問の先生を7人もつけてもらっています。そしてそれぞれの先生が協力して選手へ声を掛けてくれています。相談できる相手が1人ではないことは、選手にとっても大きいと思います。
チームパシュートでの葛藤と決断
今大会のチームパシュートでは目標にしていたタイムに及ばなかったものの、優勝の栄冠を手にした
Q:チームパシュートは4人で走る種目ですが、毎年メンバーも変わりますし、選考は難しいのではないでしょうか。
難しいですね。今年のメンバーは1人を除いて、これまでチームパシュートを走った経験がありません。ただ、先輩たちが練習で走る姿を見て、「自分も走りたい」という想いはあり、チーム内での競争はずっとありました。メンバーが最初から決まっているわけではありません。3kmのタイムなど、その時点で1番走れる4人を選ぶという考えです。
今大会も直前まで本当に悩みました。メンバーに1年生を1人いれましたが、ここ最近タイムが伸びていて「今なら戦える」と判断しました。
Q:3年生を外して1年生を入れる、という決断にはさまざまな思いがあると思います。
もちろん3年間頑張ってきた3年生への心情もあります。でも、やっぱり勝ちにこだわること。それが私たちの最終的な考え方です。学年ではなく「今、1番走れる4人」で臨むことを全員で共有しています。全員が納得できる力を示した4人を、顧問の先生方とも何度も話し合って決断しました。
Q:今大会では結果としてトラブルがありながらも優勝を果たせました。
でも、それも大きな経験だったと思っています。良い思いも、悔しい思いも、全国大会でしか感じられないものがあります。その経験は、来年以降必ず活きていきます。だから今年だけではなく、来年、その先まで見据えた意味でも、この経験は決して無駄ではないと思っています。
大岩勇仁選手 インタビュー
ここなら強くなれると思い、北桑田へ
Q:北桑田高等学校へ進学しようと思った理由を教えてください。
もともと地元が京都ということもあって、自転車競技が強い学校として北桑田高等学校のことは知っていました。特にチームパシュートやロード競技が強い学校というイメージがありました。
Q:自転車競技はいつ頃から始めたのでしょうか。
趣味として自転車に乗り始めたのは中学2年生頃です。ただ、その頃は競技としてではなく、本当に趣味の範囲でした。本格的にレースへ出場するようになったのは高校に入る直前になってからです。
Q:本格的に競技へ取り組むきっかけはありましたか。
中学3年生の11月に「高石杯」というレースへ出場しました。その大会で全日本選手権の出場権を獲得することができて、「もっと競技を頑張りたい」と思うようになりました。それが北桑田高等学校を選ぶ大きなきっかけにもなりました。
Q:もともとは別のスポーツもされていたそうですね。
はい。本格的と言えるか分かりませんが、以前はスキーをやっていました。全国大会にも出場していました。
Q:実際に入学してみて、練習環境はいかがでしたか。
見学へ来た時から、「すごい環境だな」と思っていました。地元では何度も信号で止まっていましたが、ここではほとんどノンストップで走り続けることができます。「ここなら自分は強くなれる」と思って入学しました。
Q:監督や顧問の先生方は、普段どんな存在ですか。
厳しい面もありますが、話しかけにくい先生はいません。顧問の先生がたくさんいるので相談もしやすいですし、それぞれの先生に得意分野があります。「このことならこの先生」というのがあるので、相談しやすい環境でとても恵まれていると思います。
メンバー外からサポートメンバーに
Q:今回のインターハイでは、チームパシュートのサポートメンバーという立場になりました。メンバー発表を聞いた時は、どんな気持ちでしたか。
率直に、とても悔しかったです。後輩がメンバーに選ばれたこともあって悔しさしかありませんでした。
Q:その悔しさは、今後への原動力にもなりますか。
来年は絶対にメンバーに入りたいです。誰にもその席を譲らないくらいの走りを毎日できるようにもっと頑張ろうと思っています。
Q:サポートメンバーとしては、どのような役割を担当していましたか。
自転車や機材を運んだり、レース後には選手へ水を掛けたり、水を渡したりといったサポートを担当しました。
Q:実際にインターハイを間近で見て、気持ちに変化はありましたか。
もし自分が走っていたら、あの場面ではどう動いただろうとか、いろいろ考えながらレースを見ていました。この場にいるのにレースに出れないことも悔しかったです。
Q:1番力を入れている競技は何ですか。
やっぱりロードです。北桑田高等学校へ来た理由もロード競技をやりたかったからなので、1番好きな種目です。
Q:来年のインターハイが1番の目標になりますか。
まずはインターハイに出場することが目標です。そして最後の年なので、チームパシュートでも優勝したいですし、ロードレースでも優勝したいです。4km速度競走などの個人種目でも、日本一を目指したいと思っています。
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