今の自分にはケイリンしかない

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世界チャンピオンとしての役割

世界選手権で金メダルを獲得して以来、トークショーの登壇やイベントへの出場などが増え、常に世界チャンピオンとして周囲から見られるように環境は変化していった。回を重ねるごとに様々な経験を積み、人間として一回り成長することができた。

「自分が小さい頃、オリンピックで活躍した選手が学校訪問をしてくれて、すごい選手がきたんだなと感動したことがありましたが、今は自分がその立場になったんだなと実感しています。正直、いまだに慣れないんですけれど、小さな子供たちは自分を”すごい人”を見る目線でくるので、ちゃんとそこに応えないとな、と(笑)。つい謙遜してしまう時もあるのですが、謙遜すると子供たちは冷めてしまいます。だから夢を与える立場として、いらない謙遜は捨てるように頑張って意識しています」

そんな中、山﨑が日々考えているのは自分の役割について。街中で話しかけられるケースも増えてきたという。

「ロード練習の帰りに立ち寄ったコンビニで、小学校訪問をした時に会った児童と遭遇したり、伊豆箱根鉄道で女の子に“全日本選手権の時に写真を撮ってもらいました”と話しかけられたり。その度に”自分はちゃんとしてたかな?”と思うんです。その時に見せてもらった写真が、自分と中石(湊)に挟まれた写真だったので、まだアフロじゃないんだね?って突っ込んでおきましたけど(笑)。

横断幕を作ってもらったりして、日々皆に応援されているという実感があるので、ちゃんとしないとなという意識が強くなってきているように思います」

自分の立ち位置は理解している だから「ちゃんとする」

金メダルを獲得したことで、この1年で行動や考え方も世界チャンピオンらしく成長してきた山﨑。日本が待ち望んだ成績とは別に、自分の今の実力を外から見ることもできている。

「世界一の実力かと問われたら、実際のところ、そうではないと思うんです。僕はナショナルチームに入ってから、アジア選手権などで優勝できたこともありますが、負けることの方が多かった。だからもっと強くならないといけないんです。

その中で、例え結果が出なくても応援してくれる人たちが沢山いました。そういった応援が力になって、みんなのおかげで去年勝つことができたという感覚があるんです。応援してくれる人たちの気持ちを裏切りたくない。実力をもっとつけて、運だけでなく実力でも勝ちましたって言えたら、またみんなが喜んでくれるんじゃないかなと思っています。

それが自分自身が求めている結果であり、選手としての在り方。だから、ちゃんと応援される人で居続けたいと思っています」

思えば、昨年の世界選手権優勝直後に実施したインタビューでも、「周りの方の顔を見て嬉しくなりました」と語っていた山﨑。応援してくれる人の存在が、原動力となっていることは間違いない。

先日、『国スポ』の開会式イベントでトークショーを実施した際もファンサービスから中々戻ってこない姿が印象的であったが、それこそが自転車選手・山﨑賢人の考え方を示しているのかもしれない。

世界選手権の結果で今後の選手人生が決まる

「もう1年アルカンシェルが着られたり、メダルが取れるのだとしたら、それはすごくありがたいこと。なのでそこを目指します。正直、今後のことはまだ分からない。世界選手権の後にどうするかしっかり決めていきたいと思います」

崖っぷちに立たされた状況は昨年と変わらないが、そこに絶望感はなく、どこか達観しているようにも感じさせる山﨑賢人。
『2025世界選手権トラック』は自分自身のため、そして応援してくれる人のために大舞台に挑む。

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