YouTubeで見たクリス・フルームの走りが人生を変えた
Q:これまでのキャリアにお話しを戻すと、高校で自転車競技を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
中学の時にYouTubeが大好きでずっと見ていたのですが、そこで『ツール・ド・フランス』の動画を見たのがきっかけです。もともと行きたい高校があって、そこに自転車部もあったので、ロードをやってみたいなと思って始めました。
Q:特定の選手に憧れた?
見ていたのは2016年頃で、チームスカイがめちゃくちゃ強かった時期でした。クリス・フルーム*が大好きでしたね。意味がわからないフォームで下りを爆速で走っていて、「なにこれ?」って。
※クリス・フルーム:2010年代に4度のツール個人総合優勝を果たした名選手
Q:トップチューブの上に乗って下る、独特の走法ですね。
そうです!「この選手、やばいな」って(笑)。登りでもマイヨジョーヌを着てアタックしていて、痺れました。
ロードの世界に一直線……のはずが
Q:ということは、高校ではロードを専門にやっていたのでしょうか?
高校(平工業高等学校)の自転車部がいわき平競輪場の近くにあって、基本的には毎日競輪場でトラック練習をしていました。みんな競輪選手を目指しているような感じで……。
Q:「これは違うぞ」と(笑)
ただ、方針としては短中長距離すべてをこなせる選手を育てるという感じでした。トラックの中長距離選手はロードでも活躍している選手が多いですし、海外で走るにはスピードも必要。トラックでスピードを養って、将来的にロードに活かせたら良いなとポジティブに捉えていました。
そこから日本大学に進学したのですが、選んだ理由はロードが強い大学だったからです。武山晃輔さん(宇都宮ブリッツェン)などが活躍されている時期でした。
Q:……いつ道を間違えた…いや変えたのでしょうか?
最初はトラックの中長距離とロードを頑張っていて、どんどん実力は伸びていたのですが、練習中に落車して、バイクのフォークが折れて壊れてしまったんです。そこからはパワーマックスやワットバイクでの練習が多くなり、ロードは借り物の自転車があったのですがセッティングが合わなくて、あまり乗る気になれませんでした……。
もともと先輩から「短距離をやったほうが良い」と声をかけられていたこともあって、短距離の練習を始めてみたんです。2年生(2021年)の5月に『東日本学生選手権トラック』に出場したところ、意外と走れることができた(スプリント予選3位/10秒653、最終結果4位)。そこから「短距離のほうが向いてるかもしれない」と思うようになりました。
Q:短距離が楽しかったというより、結果が出るから進んだ?
きっかけはそうです。短距離のほうが結果が出るし、もし強くなれたら競輪選手という道もあるな、と。