引退から舞い戻ったビットリア・ブッシが、2025年5月10日、宣言通りにアワーレコードにチャレンジし、世界記録を更新した。更新された新記録は「50.455km」となる。

 

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2日連続のチャレンジ

アワーレコードは「単独で1時間の間にどれだけバンクを周回出来たか」を競うもの。UCIポイントなどは特に関係なく、選手自身の腕試し的な位置付けにある。

今回のアワーレコードについて、事前に告知されていた実施日は5月9日。予定通り走り始めたブッシだったが、中間地点を少し過ぎたあたりでアタックを断念。翌日10日に再びアワーレコードを実施し従来の記録「50.267km」を上回る「50.455km」を記録した。

博士号とともに自転車競技に目覚めた数学者

ブッシの経歴はパワーに満ちている。陸上競技の指導者であった父のもとで文武両道を重視する環境で育ち、オックスフォード大学で数学を学ぶ道に進んだ。しかしこの時期に「父の死」という重大な出来事があり、自らを癒す方法をスポーツに見出し始める。

最初はトライアスロンからスタートし、複数の競技を経験したのち、自転車競技で才能を発揮するようになる。そして博士号を取得した2014年、イタリア国内選手権で個人TTの銅メダルを獲得。27歳にして自転車競技に本格的に参入するようになった。

3度のアワーレコード

自らの可能性をアワーレコードに見出したブッシは、2018年にメキシコ・アグアスカリエンテスでアワーレコードに初挑戦し、「48.007km」を記録。

その後、一度別選手に塗り替えられた記録を再度更新するため、2023年のはじめより再びアワーレコードに挑戦するためのクラウドファンディングを開始。「女子のアワーレコードが未だ到達していない『50km』の壁を越えてみせる」として支援者を募ったこのプロジェクトは目標金額を達成し、たくさんの応援者の期待を背負った上で新記録「50.267km」を達成した。

元レコードホルダーのビットリア・ブッシが「アワーレコード」へ再挑戦 クラウドファンディングも

2024年、3km個人パシュートの世界記録更新にチャレンジするも、結果は「3分19秒787」で惜しくも更新ならず。このチャレンジを区切りに引退したが、2025年に再度メキシコ・アグアスカリエンテスのバンクに舞い戻り、アワーレコードに挑戦。自身3度目の「アワーレコード更新」を成し遂げた。

新記録「50.455km」のその先へ

5月10日に挑戦を終えたブッシは

「UCI女子アワーレコードの歴史に貢献できたことを心から嬉しく思います。私にとってアワーレコードは、アスリートとしても人間としても、常に特別なものです。

そして『アスリートは競技パフォーマンスを行うだけの存在ではなく、世界にメッセージを伝える存在である』ということが、人々に届いていることを願います。この記録を通して、人生で最も大切なことの一つは、人生のあらゆる瞬間の尊さを理解することだと学びました」

とコメントしている。またブッシは2025年1月1日に従来の3kmから4kmに改定された女子個人パシュートにおいても、世界記録に挑戦する予定だ。

UCI「Vittoria Bussi beats her own UCI Hour Record presented by Tissot

GRUPO 24 ORE「Vittoria Bussi, donna dei record che ha messo insieme matematica e ciclismo

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