最注目はマディソンとデルニー
最注目の種目はマディソンとデルニーの2種目。
順番に説明しよう。
とにかく「距離至上主義」なマディソン
100年以上前から実施されてきた「SixDayレース」が発祥とされる種目マディソン。
オリンピック種目でもある2人1組のチーム戦で、10周ごとに設けられたポイント周回を4位までに通過することでポイントが付与されていき、積み上げた合計ポイントを競うレースだ。(詳しいルールガイドはコチラ)
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しかし「SixDay」のマディソンのルールは少し異なる。「2人1組・ポイント制」なのは同じだが、最も重視されるのは総周回数。
チームAとチームB、仮に下記のような結果になった場合でも、総周回数が1周でも上回っているAチームが上位となるのだ。
チームA「400周走破・30ポイント獲得」▶︎ 勝ち
チームB「399周走破・150ポイント獲得」▶︎ 負け
ポイント数は総周回数が同じだった場合のみ順位に影響する、最後の順位判断基準となる。
「6日間の“総走行距離”を競う」という元祖SixDayレースの思想を尊重したルールだ。
「とにかく走る」チーム、「ポイントも大事にする」チーム、それぞれの戦略と耐久戦への対応力が鍵となる。
SixDayマディソンルール参照:ORIGINAL SIXDAYS WEEKEND
その他、「チーム・エリミネーション」と呼ばれるSixDay特有の、マディソンとエリミネーションを融合した種目なども実施されている。
こちらは2人1組で交代しながら走行し、スプリント周回を最後尾で通過したペアから除外されていくというレースだ。
「空気抵抗ガン無視」デルニー
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SixDayの名物であり、マディソンとともに異様な盛り上がりを見せるデルニー。
「デルニー*」と呼ばれる原動機付き自転車1台と、選手1人がペアを組み、「(前)デルニー・(後)選手」の並びで終始レースを走り切る種目。
※レースで使用されている型・仕組みの原動機付き自転車を発明した、Roger Derny氏とその息子が名前の由来(参照:The Guardian)。
デルニーの後を常に走ることで、選手は空気抵抗を抑えた上で走行可能。
競輪に例えると、「無尽蔵かつ自分の加減速に合わせてくれる“最強の先行選手”の番手にずっとついている」ようなイメージ。
ご存知のとおり、空気抵抗は自転車競技の1番の敵。それをガン無視できることによる、ハイスピードレースが魅力だ。
“初対面のおじさん”と一心同体
デルニーでは、デルニードライバー1人と選手1人がペアを組む。
ヨーロッパ各地で実施されるSixDayでは、各開催地に熟練のデルニードライバーがいるのだが、各レースでペアを組むドライバーは出走直前の抽選で決められる。
ほぼ初対面のデルニードライバーを信頼し、息を合わせることが本種目の鍵となる。
加速・減速をどのように調整しているのかという疑問だが、選手がドライバーに、「Allez(アレー)!」の掛け声で加速、「Ho(ホー)!」の掛け声で減速を要求している、という通説もあるようだ。
参照:「Cyclist」Inside the secretive world of the derny pacer(2024年8月9日)
パリピも試行錯誤している…
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歴史的な観点や、独自の種目についてSixDayを紹介してきた。
普段のトラック競技大会とは様々な面で一線を画す本パリピイベントだが、特に近年では容易に開催が継続されてきた訳ではないようだ。
名前の通り、従来は6日間に渡り開催される大会だったが、新型コロナウイスルのパンデミックにより一時は開催不可となり、その後復活を願う声が開催各国で挙がったものの、平日をまたいだ連続6日間の実施では毎日スタンドを観客で埋めることが簡単ではなくなった。
参照:Cycling WEEKLY(2024年11月8日公開)
3年ぶり・新フォーマットで開催!100年以上の歴史を持つパーティー型レースイベント/『SIX DAY BERLIN 2023』1月27日〜29日
ベルギー・ヘントのように依然6日間で実施する開催地もあるなか、イギリス・ロンドンやドイツ・ベルリンのように週末限定で2〜3日間に縮小して開催する動きも出てきている。
UCIも「SixDayの開催期間・プログラムは主催者が自由に設定できるものとする」という規則を2025年1月1日から施行した。(UCI規則 3.2.227)
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100年以上の歴史を持ち、いまだ多くのファンに愛されているSixDayを存続させようと、各主催者やUCIが試行錯誤していたのだ。
そんな背景を頭の片隅に浮かべながら観戦すると、ド派手な“パリピイベント”も何だか愛おしく見えてくるかもしれない。
窪木一茂・今村駿介が“トラック界のパリピイベント”に出場!/『SixDays Weekend Berlin 2025』1月31日〜