2024年夏に終了したパリオリンピック。これを機に競技を引退する選手が出たり、若手の育成に本腰を入れ始めたりするなど、2025年は各国で新たな動きがスタートしていく時期だ。自転車トラック競技の世界でも、「2028ロサンザルスオリンピック」に向けた新シーズンがスタートする。
この記事では「オリンピックへの道のり」をテーマに、自転車トラック競技の主要大会をご紹介。「どんな大会に注目すればいいの?」といった部分をぜひ学んでいただき、ロサンゼルスオリンピックまで選手たちと共に走ってほしい。
オリンピック出場を左右するのは「直前2年」
まず最初に知っていただきたいのは、オリンピック出場枠に直接関係するのは「オリンピック直前2年間の大会」ということ。ロサンゼルスオリンピックの出場枠ルールはまだ発表されていない(2025年1月)ため今後変更される可能性はあるものの、これまでのオリンピックでは「直前2年間」が評価の対象となっている。
つまり、ロサンゼルスオリンピックの場合は2027・2028年の大会が対象ということ。では2025・2026年は本気を出さなくてもOKかというと、そんなことはない。
・「本番の大会」で経験を積む
島国である日本では海外の選手と共にレースをする機会が限られている。海外のハイレベルな選手とレースをする経験や、海外という慣れない環境で体の調子をどのように保つかなど「本番の大会」で得られることは数多くある。
・これまでの結果によって(国としての)出場枠が決まる
2027・2028年になってオリンピック枠獲得のための大会が始まった時、そもそもその大会への出場権がなければ話が始まらない。大会にはそれぞれ出場のためのルールがあり、良い成績を得ている国や地域は最大数の出場枠を得ることができる。
国としてのチャンスをより増やすため、2025・2026年の大会でも気を抜くことはできない。
・良いパフォーマンスをすることでコーチに評価を受ける
そして国としての出場枠を無事に獲得することができても、そこに「どの選手が出るのか」は国内でのセレクションの結果次第。それまでの大会できちんと結果を出し、コーチに「この選手で勝負しよう」と思わせることが選手にとって重要事項となる。
重要な大会は3つ
さて改めて、オリンピック出場枠の評価対象にもなる、自転車トラック競技において重要な3つの大会をご紹介しよう。
大陸選手権
1年に1回開催。大陸ごとに行われる大会で、日本の選手はアジア選手権に出場する。日本はアジア圏ではほぼ負けなしの状態で、例年金メダル祭りになることが特徴だ。
ネーションズカップ
全世界の選手が対象となる大会で、例年3戦が行われる(ただし2025年は第1戦以外情報が出ていない(2025年1月時点))。
ネーションズカップの特徴は「UCIトラックチーム」が出場できること。国・地域としての代表チーム(ナショナルチーム)には一定の出場枠が与えられるが、選手数が多い国の場合は「大会に出られない選手」が生まれてしまう。ネーションズカップの場合はUCIトラックチームとしても出場枠を得ることができるため、より多くの選手が大会に出場できる。
これによってより多くの選手に経験を積めさせられるほか、国・地域としての「UCIポイント」もかさ増しすることができる。オリンピック出場枠はUCIポイントによるランキングの上位から与えられるのが基本となるため、オリンピックにも直接的に効果がある。
なお世界を転戦する大会のため、国によって参加しやすい・しにくいが発生する。アジアで行われる大会にはヨーロッパ圏の選手があまり出場しないとか、大陸選手権と時期が近い国はそのラウンドを欠席するなどがあり、その辺りの読み合いも面白みのひとつ。
世界選手権
シーズンの締めくくりに行われる最大の大会が世界選手権。1年に1回開催され、ここで優勝することはオリンピックで勝利することに匹敵する栄誉となる。
以上の3つの大会がオリンピック出場枠に直接的に関わる大会だ。なお重要度としては
世界選手権>ネーションズカップ>大陸選手権
となる。
そのほかにも国内選手権(日本の場合は全日本選手権)やチャンピオンズリーグ、ジャパントラックカップなど様々な大会があるが、これらはオリンピックには直接的には関係しない(評価の対象とはならない)。ただ前述したように、これらの大会で活躍することが主要大会への出場へ繋がる場合もあるため、無碍にして良いわけではない。
4年間の道のりを、共に
自転車トラック競技で重要な大会は大陸選手権、ネーションズカップ、世界選手権で、オリンピック枠獲得のための評価対象となるのは直前の2年間。しかし前述したように、すでにその前からロサンゼルスへの道はスタートしている。
ロサンゼルスオリンピックの出場枠ルールがここで説明した通りになるとは限らないが、おおよそこのようなものだと思って構えておいていただいた方が、楽しみが長く続くだろう。4年間の道のりを「選手たちと共に」走っていただければ幸いだ。