呪いを断ち切った競輪祭
Q:競輪祭で優勝した時は嬉しかったですか?
嬉しかったですよ。ただ、ゴールした瞬間に手を挙げるような余裕はなかったです。めちゃキツくて。
Q:寺崎浩平選手の後ろでラスト一周、そこから出ていきましたね
ちょっと早かったですね。地脚があったからこそギリ保った、という感じです。
Q:残り2周のタイミングで出て行った寺崎選手のスピード、とても良い勢いでしたよね。
そうですね。あれだと後続もキツかったと思います。
Q:近畿勢の競輪祭優勝は59年ぶり。それは意識していましたか?
力づくで獲りに行かなきゃとは思っていましたけれど、あまり考えてはいませんでした。自分がマークだったら、そういうことを考えたりするのかもしれない。自力でこじ開ける分には、どのレースでも変わらないですから。“呪いを断ち切った”という感じもしないですね。
グランドスラムには固執していない
Q:これでグランドスラムまであとひとつ、残すG1タイトルは全日本選抜競輪のみとなりました
何がなんでもグランドスラムを達成したい、とは思っていないです。全日本選抜競輪の時に、周りがそういう空気になるんだろうな、くらいの感じ。でも、G1が6つになってから、グランプリまで含めたグランドスラムっていないですよね?
Q:いないですね*。来年の2月に脇本選手が全日本選抜競輪を制したら、それが史上初となります。とはいえG1を全部制してからのグランプリ制覇、というのが美しくはありますよね。
G1ひとつでも獲ったらグランプリに出ることはできてしまいますからね。
*井上茂徳、瀧澤正光の両氏がG1のグランドスラムとグランプリの全てのタイトルを獲得しているが、GIが6つになってからは誰も達成していない。これまで6開催のグランドスラムを達成したのは神山雄一郎と新田祐大のみ
Q:グランプリに対しての気負いはないですか?
ないです。でも、緊張はしますよ。
GIを獲るタイミング、それは器が成熟した時
Q:競輪祭を終えての賞金ランキングは1位:古性選手、2位:脇本選手。近畿で荒稼ぎしていますね。現在の近畿の3番手は、寺崎浩平選手になるんでしょうか?
そうですね。(窓場)千加頼と寺ちゃんが一緒くらい……いや、やっぱり寺ちゃんのほうが格的には上ですね。
Q:先ほど、競輪祭の決勝の際に寺崎選手の話をしましたが、寺崎選手に対して脇本選手が仕事をしてあげる、という機会もそのうち来ますか?
絶対きますね。
Q:どういうタイミングで来ることになるんでしょうか?
寺崎が、獲ってもいい器になった瞬間です。
Q:その判断基準は?
G1の決勝で頑張った数ですかね……僕と一緒の数を基準としてしまうとかわいそうだけど(脇本は14回目で優勝)。とは言え、数に関係なく、「こいつG1を獲ってもおかしくないな」と思う瞬間って来るんですよね。それはG1の決勝のレースぶりとかには関わらず、ですけれど。その時に、「獲れ」って言うかもしれません。
Q:古性選手の時も、そういう感覚がありました?古性選手が初めてG1を制したのは2021年のオールスター。それ以前から、「後ろ任せられるのは古性しかいない」と言っていましたよね。
古性くんに関しては、ちょっと遅かったと思うくらいでしたね。後ろを任せられる、そのレベルまでいってから古性くんがようやく獲った、という感じですね。
後ろにつくと分かる 古性優作の凄さ
Q:脇本選手や寺崎選手は、自力選手であり、ナショナルで英才教育を受けて競輪に戻って行った選手と言えると思います。古性選手のように、ナショナルのトレーニングを受けていない選手であれほどの強さを見せている、というのは、脇本選手にとって驚きはありますか?
古性くんのテクニックや走りを見たら、全然驚きはしないです。もう考えてる領域が違います。縦に速いとかそういう話ではなくて、古性の後ろにつくと凄さがわかる。回数としては少ないですが、あの凄さは実際に後ろにつかないとわかんないですね。反応が早すぎる。
Q:反応というと、判断ということですか?
いや、判断してから、アクションを起こすまでの反応。脳と体のタイムラグがほぼゼロだと思います。
Q:脇本選手のタイムラグは?
0.3秒とかですかね(笑)。僕は、そのぶんを縦脚で稼ぐという感じです。タイプが違うからこそできるラインなんじゃないですかね。