単騎は気が楽 好きにやれば良い
Q:いつも前を走っている新山選手にとって、後ろについていると緊張するものでしょうか?
人のタイミングだし、自分が前を走るよりは責任が増えますよね。自力より緊張します。
前でどうしようもなく勝てなそうなメンバーの時が、一番楽です。もっといえば単騎が最も気楽ですね(笑)
Q:今回は単騎なのでは?
そうです。だから、今回はめちゃくちゃ気持ちが楽ですね(笑)。
好きにやれば良いし(笑)。
Q:でも、前もやり合いそうなのでチャンスがあるのでは?
あまり作戦は考えないで、感性だけで走ります。もちろん、このために練習を積んでいるわけなので無駄にならないように。結果云々ではなく、自分が後悔しない仕掛けをすることが大事ですかね。
Q:過去2回のGPとは違いますよね?
これまでも、結果より内容にはこだわっていました。少しためらったりしたこともあって後悔しているので、自分のためだけに仕掛けられれば良いと思います。そういった意味では単騎は良いです。過去2年よりは、狙いやすい構成だなとは思います。
Q:「最も自由な男」ですからね。
フリーダムです(笑)。
Q:もちろんラインがあることのメリットはたくさんあるとは思いますが、単騎のメリットもありますよね。
周りの警戒心は薄れると思います。単騎の僕が残り2周でフラーっと前に行っても、突っ張らないと思います。「ん?」とは思うものの、突っ張ったら違うラインに潰されてしまうこともよぎりますからね。「何してんだろ?」くらいだと思います。その流れで後ろがまごついてくれれば自由に動けますし。
今言ったのはあくまで一つの例なので、実際はレースの動きに合わせて、何十通りもパターンはありますが。
競輪選手は年末も無し
Q:しかし、年末までお仕事で大変じゃないですか?
いや、特にやることないですから(笑)。
Q:1年間ずっと走ってて、12月にはグランプリ出場が決まっているのに玉野(ひろしまピースカップ/G3)まで出場して……。
忘れやすいので、レースに行かないとレース勘がにぶっちゃうんです。過去2年間、それが良くないなと思ったので、今回は入れようかなと思って。1ヶ月空くと、競輪場に着いてから「何するんだっけ?」くらいになっちゃいます。自分のレース勘を磨くために、いろんなレースに出場して、大きなレースにフィードバックする感覚です。
「仕留める」新山ハンターの感覚
Q:S級S班でやってきて、洗練された部分はありますか?
何年か前までは、S級1班の若い先行屋が挑んでくる、みたいな構図が苦手でした。でも今のように、前を取って突っ張るとか、残り2周から行く、という戦法になってからは、その苦手意識もなくなりましたね。自分が挑戦者として向かっていけるようになったというか。それに伴って、成績は良くなっていきました。
「受けて立つ」ではなく「仕留めにいく」。僕が狩る側というか。
Q:新山選手の髭がライオンに見えてきました(笑)
結果云々よりも内容で考えています。相手が先行を狙っているなら先行をさせない。先行同士で、俺が先行して後手に回らせたら、俺の勝ち、と思っています。実際、結果もそうなると思いますし。
Q:突っ張りきれたらその時点で勝ち、というような感覚でしょうか?
そうですね。突っ張れなくてとか合わせられたりした時も、あっちはフカしてますから、中団にすっと入って捲っていく。捲りはそんなに得意ではないですが、自分の仕掛けでペースあがっているから捲ることができる。
自分の土俵で勝負できるようになったというか、自分の土俵ができたような感覚ですね。
自分に他の選手が合わせれば良い
Q:それでも決勝になってくると話は変わってくるのでは?
今年の後半くらいになって気づいたのは、そこで周りに合わせてしまって、結果的に自分のレースをしなくてどうするんだ、ということ。みんなを自分に合わせさせるようでなければ、自分の土俵に持ち込めるように、です。
Q:それはGPでも同じですか?
いきなり前を取りに行ったら、「え!?」って思ってもらえるかもしれないですね(笑)。
この1年間の「伏線」を回収できたらと思います。
藤井聡太棋士の名言
Q:自分のレーススタイルが固まっているので、すごく良い状態に見えますね。
前に藤井聡太棋士の名言を見たんです。「結果にこだわってる人はモチベーションを保つのは難しいけど、内容にこだわってる人はモチベーションを保ちやすい」っていうような内容で。勝ち負けだとどうしても浮き沈みが出てしまいますからね。負けても内容に納得できれば、次に同じやり方で勝とう、と思える。いいこと言うなぁと思って。
自分のスタイルを確立し、成長を続ける新山響平。インタビュー中は終始力まず、新山らしさの出る内容となった。
3度目となるKEIRINグランプリで日本の頂点を得ることができるのか。
30日のレースの結果を待ちたい。