2024年10月16日から5日間にわたって、デンマーク・バレラップを舞台に開催された『2024UCI世界選手権トラック』。
日本チームは、6つのメダルを獲得。男女ケイリン(山﨑賢人・佐藤水菜)、男子スクラッチ(窪木一茂)では金メダルを獲得という素晴らしい結果を残した。

3つの金を獲得、6種目でメダリストが誕生『2024世界選手権トラック』日本人選手結果一覧

この記事では、大会終了直後に実施した、ジェイソン・ニブレット短距離ヘッドコーチとブノワ・べトゥ テクニカルディレクターへのインタビューをお届けする。

ジェイソン・ニブレット 短距離ヘッドコーチ インタビュー

Q:素晴らしい結果となりました。

とても嬉しいです。パリオリンピックは難しい大会でしたが、今回は選手が強さを発揮してくれました。選手たちが要所要所で素晴らしい決断力を発揮したことで、この結果に結びつきました。

Q:短距離チームのメダル獲得の最大の要因はなんでしょうか?

難しい質問ですね。それぞれが獲得したメダルは、パズルを完成させるための1つのピースのようなものだと考えています。

(山﨑)賢人は(ケイリンの)アジアチャンピオンに輝いたことで今大会の出場権を獲得し、世界チャンピオンになるきっかけを作りました。

山﨑賢人

(佐藤)水菜はスプリントで日本女子初の銅メダルを獲得し、大きな一歩を成し遂げました。今回のケイリンでの優勝は、過去数年間で彼女が築き上げてきたものが実った結果だと思います。優勝する実力は既に持ち合わせていましたが、実際に(優勝という)結果を残すことはできていませんでした。今日の彼女の走りは特に素晴らしかったです。

佐藤水菜

(太田)海也にとっては、苦い経験となったオリンピック直後の世界選手権でした。彼のメダル獲得を見れて良かったです。不運な結果に見舞われてきた経験が、価値ある経験であったことを証明できたと思います。過去の経験から学び、強敵相手となる状況でも最適な戦術を立て、落ち着きを保ちながらレースに臨めていました。

太田海也

男子チームスプリントにも同じことが言えます。オリンピックでは本調子を出し切るには至りませんでした。今大会でも過去最高の走りとは言えませんが、過去の経験が報われた結果だと思っています。

左から長迫吉拓、太田海也、小原佑太

今後は新天地でトレーニングを積んだ(マシュー・)リチャードソンも登場*してきます。日本だけでなく各国が同じように、さらなる成長を目指し活動していくことでしょう。安心することはできません。今後に備えていくことが重要です。

*パリオリンピックで3つのメダルを獲得後、オーストラリアからイギリスへの国籍変更を発表。この世界大会には出場していない。

Q:今後の展望は?

まずは少し休養が必要です。もちろんプロの競輪選手たちは日本の競輪に備えて、それぞれでトレーニングしていかなければなりません。2024年は国内外でさまざまなレースに出場してきましたが、日本の競輪に切り替え集中することは、選手にとっても異なる刺激になります。

一方で、選手にとってはノーマルな日常に戻ることができリフレッシュできる期間でもあります。ビーチなどに休養に行き、エネルギーをチャージするのも必要です。

今回はいつもと違い、「まずは休養を楽しんで、また次に向けて集合しよう」というメッセージを送りたいです。
そして休養明けには、みんなで「次なる成長・前進とは何か、そのためには何が必要か」を話し合いたいです。

Q:今大会の結果は日本チームにとってどんな意味を持ちますか?

短距離・中長距離含め、全プログラムに影響を及ぼす大会だったと思います。

特に窪木(一茂)のスクラッチ優勝は特別でした。水菜と同様、実力は既に持っていましたが、スプリント力を発揮した彼の優勝は特別なんです。過去にポイントレースで世界チャンピオンに輝いた(オーストラリア中長距離コーチのキャメロン・)マイヤーにも言われました。「彼の走りは素晴らしく、もし私が世界一になった時のポイントレースに窪木が出場していれば、窪木が同じく優勝を勝ち取っただろう」と。

スクラッチでの窪木の勝利は、日本チームにとって試金石となる結果です。アカデミー(Bチーム)やジュニアの若手の選手たちに大きな刺激を与え、彼らが「これが私たちが目指す、目指せる場所である」と思える大会になったと思います。

Q:今後に向けて一言お願いします。

我々はまだ前進・成長の過程です。大きな前進ですが、まだ伸び代は大いにあります。伊豆に帰ったら、各選手に自身の伸び代について聞いてまわるのが楽しみです。
今大会での経験や成果を基に、さらに成長し続けていきたいと思います。

ブノワ・べトゥ テクニカルディレクター インタビュー

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