パリ2024オリンピック大会は自身初の大舞台だった。
メダル獲得に大きな期待が寄せられたが、悔しい結果で幕を閉じることとなった太田海也。

その大舞台から約3か月。新たなスタートとなる世界選手権では、オリンピックと同じくチームスプリント、スプリント、ケイリンの3種目にエントリーされている。

パリの舞台が、彼にもたらしたものとは一体なんだったのか。
そして、再びスタートを切る原点となった、体に染みついた想いとは。インタビュー形式でお届けする。

さらなる成長のための大きな経験となったパリ

Q:厳しい判定にも泣いたオリンピックでした。気持ちの整理はつきましたか?

スッキリするとか、完全に切り替えられたというわけではないです。それでも、俯瞰してみると、自分がもっと成長していくための大きな経験になったし、次につなげるために起きたことなのかなと感じています。レースでの経験だけではなくて、オリンピックに向かうまでの厳しい道のり、4年に1回という特別な大会だからこそ味わうことができて、自分を高めることができました。

正直にいえば、終わった時は「こんな経験したくなかった」と思いました。自分のなかでも、あのとき得た経験は、まだ変化している途中だなとは感じます。

「競技が楽しい」

Q:世界選手権はスプリント、ケイリン、チームスプリント、とフルエントリー。どういった気持ちでこの大会を迎えますか?

オリンピックが終わり、今後どうしていきたいかが定まらないような時間もありましたが、練習をするなかで「競技が楽しい」「世界で1番になりたい」という気持ちがまた新たに湧き上がってくるのを感じました。オリンピックが終わったからといって、これまで培ってきたものがすべて消えてしまったわけではなくて、体に染み付いているんだなと思いましたね。

オリンピックも含めて、これまではすごいプレッシャーのなかで身構えてレースに挑むことが多かったのですが、今回は良い意味で大会を楽しんでいきたいなと思っています。

Q:オリンピック後、オフを挟んで自転車に乗ったときに「競技が好き」と感じた?

というよりも、ベロドロームに戻ってきて、この環境で練習をする毎日に戻った時に「競技は楽しい」と感じました。このルーティンに戻ることが、どこに遊びに行くよりも気持ちのリフレッシュになるんですよね。

どこかに遊びに行っても、おいしいご飯を食べても、疲れが取れるということはないんです。練習して、ご飯食べて、早く寝てというルーティンをすることが、自分にとって1番良い時間になる。アスリートの方はわかる人も多いと思います。

それだけの毎日だとどうしてもマンネリ化してしまうので、そういう時に遊びに行くとかはあるんですけれど。体や心が疲れている時に1番良いのは、練習して早く寝ることです(笑)

悔しさを経て この大会では金メダル争いへ

Q:オリンピックが終わり、他国のメンバーも大きく変わってくるかと思います。特にオーストラリアはマシュー・リチャードソンもいなくなり、チームスプリントにおいてはチャンスも大きいのでは?

とはいえ、やっぱりオーストラリアは強いです。オリンピックでも走ったレイ・ホフマンはかなり速いですし、そのほかにトーマス・コーニッシュもいる。オランダも強いと思います。

それでも、楽しみは大きいですね。日本はオリンピックから力が落ちていませんし、あの悔しさを経て4年後に向かうために、ここで力を見せたいという気持ちはほかの国よりも強い。ジェイソンコーチもそういう想いを持っているはずです。そのために、全日本選手権ではエキシビジョンという形で出場して調整を入れているので、しっかりと戦っていきたいです。とにかく、1・2位決定戦の舞台にあがることが目標ですね。

初のメダルを獲りにいく

Q:スプリントとケイリンへの意気込みは?

今大会では、オリンピックまでと調整やトレーニングの仕方を変えて臨む形になります。それがどういう結果に結びつくのかは未知数ではありますが、だからこそ思い切ったレースができると思っていますし、これまで培ってきた経験を活かす絶好のタイミングだと感じています。

世界選手権のメダルはまだ獲ったことがないので、獲りにいきます。