パリオリンピック最終日となる8月11日、日本発祥の種目「ケイリン」のオリンピックメダリストが決定した。期待を背負っての初出場となった太田海也と中野慎詞のレースをレポートする。

ケイリン

日本の「競輪」がルーツの種目。

トラックの6周の着順を競うレース。3周までは先頭誘導をする「ペーサー」が先頭を走り、風除けをしながら全体のスピードを上げていく。ペーサーが離脱すると、残り3周のスプリント勝負!選手それぞれの得意分野、作戦が巧妙に絡み合う種目。

準々決勝 先行の日本人選手たち

1組6人、全3組、各組4着までが準決勝へ進むレース。太田は第1組に出走した。既にスプリントで銅メダルを獲得したジャック・カーリン(イギリス)、2019スプリント世界王者のマシュー・グレーツァー(オーストラリア)、2m近い巨体で高スピードを誇るミカイル・ヤコフレフ(イスラエル)など、曲者が揃った第1組。

レースがスタートすると、太田は5番手の位置で周回を重ねていく。ペーサー退避の前に位置を上げていって動き出したのは太田。残り3周半から位置を上げていくと、ペーサー退避の残り3周では3番手まで位置を上げていく。

残り2周で先頭に立った太田、そして後ろにはグレーツァー、その横にヤコフレフと続く。最終周回では先頭のまま太田が内側で粘りを見せて、グレーツァー、ヤコフレフ、そしてカーリンが飛び込んでくる。最終的には4着で準々決勝を突破した。

第2組。中野慎詞に加え、世界最強のスプリンター、ハリー・ラブレイセン(オランダ)を含め6人が集った。ラブレイセンが一番前、中野が3番手で周回を重ねていく。またしてもペーサー退避の前に位置を上げてきた選手はニック・ワメス(カナダ)。そしてその動きに中野が反応してワメスに飛びつき、残り2周半でワメス、中野、ラブレイセンの順となる。

残り2周で外に出て中野が仕掛けていくと、最終周回に入ってからラブレイセン、コロンビアのオルタボ、イギリスのタンブルなどが中野をかわしていく。しかし4着でフィニッシュした中野は準決勝進出となった。

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準決勝 上手く前の選手を使って決勝へ

中野は第1組、太田は2組となった準決勝。

中野の第1組にはジャック・カーリン(イギリス)、マシュー・グレーツァー(オーストラリア)、クリスティアン・オルテガ(コロンビア)、サム・デイキン(ニュージーランド)、そしてマテウス・ルディク(ポーランド)が組み込まれる。

レースがスタートすると、中は隊列の4番目で周回を重ねていく。最後尾にいたルディクが位置を上げてくると、この動きに付いていったのは5番手のマシュー・グレーツァー、そしてその後ろに中野が続いていく。

残り2周では最後尾となった中野だが、常にグレーツァーの後輪に付けている状態で上手くグレーツァーを利用していくと、最終周回ではグレーツァーが2番手へ。

中野は3番手でフィニッシュし、決勝への切符を掴んだ。1着はカーリン、2着にグレーツァー、そして中野が3着となり決勝へと進む。

まさかの判定 太田は失格

太田は2組に出走。相手にはラブレイセン(オランダ)、マシュー・リチャードソン(オーストラリア)など強豪が名を連ねた。先頭にリチャードソン、太田、ルカ・スピーゲル(ドイツ)、ハーミッシュ・タンブル(イギリス)、ラブレイセン(オランダ)、シャローム(マレーシア)の順で隊列を組んで周回を重ねていく。

5番手にいたラブレイセンがまずは展開を作り、残り3周を切って一気に先頭へ。太田はこの動きに反応できずに最後方で残り2周を迎える。ラブレイセンがスピードを上げていく中、ここから5番手となっていたリチャードソンが前へと出ていくと、続いたのは太田。

最終周回に入りリチャードソンはラブレイセンを押さえて先行。ラブレイセンがその後ろに続き、太田がラブレイセンと並走してフィニッシュ。1着はリチャードソン、2着にラブレイセン、3着は太田となった。

しかしレース後の判定で太田が他の競技者が内側にいる時に進路妨害(内側に進路を狭める)したとして降格の決定。更には危険な行為として警告を受け、スプリントの時に受けた警告と通算して2個目の警告を受け、失格扱いとなってしまった。

結果として太田はケイリン種目での順位が付かず。失格扱いとなってしまった。この結果、太田は7-12位決定戦に出走することも叶わず、初のオリンピックに幕を閉じた。

決勝 あと1秒で……

4年に1度、頂点へと上るための権利を得た6人は以下となった。

ハリー・ラブレイセン オランダ
ジャック・カーリン イギリス
マシュー・グレーツァー オーストラリア
中野慎詞 日本
ムハマド シャー・シャローム マレーシア
マシュー・リチャードソン オーストラリア

レースの並びは中野、ラブレイセン、グレーツァー、カーリン、シャローム、そしてリチャードソン。レースはペーサー離脱の残り3周でも動かず、しかし残り2周半ではグレーツァーが3番手から前へと加速していく。

残り2周で先頭になったグレーツァー、そこに中野が続いていく。グレーツァーが先頭となりスピードを上げていくと、残り1周半で3番手からラブレイセンが加速していく。ラブレイセンの動きに2番手の中野も反応し、外へ持ち出して加速していく。

最終周回突入時は内にグレーツァー、真ん中に中野、外にラブレイセンと並んだデッドヒート。そしてラブレイセンが自転車一つ抜け出して掛けていく。

同時に外から猛スピードで上がってきたのはリチャードソン。ラブレイセンが単独で先頭に立つと、後輪にはリチャードソンが位置する。

最終ストレートに入るとラブレイセンとリチャードソンの勝負となるが、この勝負はラブレイセンが逃げ切って先着。次いでリチャードソン。

そして3着争いは、内側で粘っていた中野にシャロームがぶつかる形で中野と接触。中野、シャロームが同時に落車すると、後方にいたカーリンを巻き込む3選手のクラッシュとなった。

そのクラッシュに巻き込まれなかったグレーツァーが3着となり、銅メダルを獲得した。

シャロームはレース後に降格扱いとなり最終成績を6位とした。中野とカーリンはフィニッシュ出来なかったものの、同着4位の扱いとなった。

順位 選手名 所属
1位 ハリー・ラブレイセン LAVREYSEN Harrie オランダ
2位 マシュー・リチャードソン RICHARDSON Matthew オーストラリア
3位 マシュー・グレーツァー GLAETZER Matthew オーストラリア
4位 中野慎詞 日本
順位なし 太田海也 日本

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選手コメント

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