「過去最大枠」を獲得 その秘密に迫る

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ロスオリンピック世代の2人の存在

ここまで挙げてきた中でも、特に僥倖だったのはジュニアから上がったばかりの垣田真穂&池田瑞紀の存在。

パリオリンピックへ向けた強化が本格化した2023年のはじめに、ジュニアからエリートへ上がってきたこの2人。もともと2028年のロサンゼルスオリンピックを目標にしている年代ではあったが、若手ながら実力のあるこの2人がナショナルチームに加わったことで「女子チームパシュートでオリンピックを目指せる」体制となった。そもそもこの2人が来なければ、女子中長距離はチームパシュートの編成を組むことすらままならない人数だった。

パリオリンピックまでの限られた時間の中で、女子中長距離チームは着実な成長を見せた。そして出場枠が決まる2024年春、「ギリギリの10位」ではあるが、パリオリンピック出場枠獲得圏内に滑り込んだ。

なお、上記の2人は「タレント発掘事業*から自転車競技をスタートした」という経歴を持つ。「スポーツ界全体としての取り組み」が功を奏した一例という意味でも、特筆すべき事例だ。

※さまざまなスポーツを体験し、その中で自分に合った競技へ進路を決めていく事業。
タレント発掘・育成プログラムとは?/日本スポーツ振興センター

先輩たちの礎があったからこそ

もともと女子チームパシュートは、東京オリンピックの前にもこの種目での枠獲得を目指し、そして途中で断念した過去がある。

これは前述したように他のチーム種目でも同様で、男子チームスプリントは直前シーズンのワールドカップ(ネーションズカップの前身)でメダルを獲得したにもかかわらず枠が取れなかったし、男子チームパシュートも日本記録を更新してもまだ枠獲得には届かなかった。

どのチーム種目も、東京世代のメンバーが「手が届かなかった」ことを、今の世代でようやく実現することができた。

2019年にワールドカップで金メダルを獲得した男子チームスプリントメンバー(新田祐大、雨谷一樹、深谷知広)。

2019年ワールドカップで日本記録を更新した男子チームパシュートメンバー(沢田桂太郎、窪木一茂、今村駿介、近谷涼)。

短距離・中長距離、男女ともに、強化を続け、選手の層が厚くなったことで「東京以上」の枠を獲得することができた。

今回出場枠を獲得できなかった女子チームスプリントも、「この次」への礎となっていることは間違いないだろう。

選手は入れ替わっていくが、築いたものはゼロにはならない。築いたものを継続し、そして洗練していったからこその今回の獲得出場枠数となった。パリオリンピックを楽しむと同時に「その次」には何が繋がっていくのか、そういったことにも注目していただきたい。

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