2024年7月26日からフランス・パリで行われる夏季オリンピック。自転車トラック競技では短距離で3種目、中長距離で3種目(男女)が実施される。
日本チームからは、トラック競技に総勢13人が出場予定。しかし3年前の東京オリンピックの時、日本からの出場選手はわずか6人だった。
出場選手は倍以上。その背景にはどのような理由があるのだろうか?
この記事では「過去最大」の出場人数となった自転車トラック競技の、ここまでの足取りと出場枠獲得のしくみを改めてお伝えする。
パリオリンピック実施種目と出場予定選手
男子 | 短距離 | チームスプリント | 長迫吉拓 太田海也 小原佑太 |
スプリント | 小原佑太 太田海也 |
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ケイリン | 中野慎詞 太田海也 |
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中長距離 | チームパシュート | 中野慎詞 今村駿介 橋本英也 窪木一茂 |
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マディソン | 橋本英也 窪木一茂 |
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オムニアム | 窪木一茂 | ||
女子 | 短距離 | スプリント | 佐藤水菜 太田りゆ |
ケイリン | 佐藤水菜 太田りゆ |
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中長距離 | チームパシュート | 池田瑞紀 垣田真穂 内野艶和 梶原悠未 |
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マディソン | 垣田真穂 内野艶和 |
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オムニアム | 梶原悠未 |
※出場選手は合計13人(男子7人、女子6人)
ポイント①チーム種目による獲得出場種目数が増えた
東京オリンピックとパリオリンピックで、自転車トラック競技の実施種目自体は変更がない。しかし東京オリンピックに比べ、日本代表チームはより多くの種目で出場枠を獲得することができた。これはチームで行う種目(チームスプリント&チームパシュート)の強化が上手くいったことが理由に挙げられる。
東京オリンピック時の出場種目と出場選手
※チーム種目は女子マディソンのみだった
男子 | 短距離 | スプリント | 新田祐大 脇本雄太 |
ケイリン | 新田祐大 脇本雄太 |
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中長距離 | オムニアム | 橋本英也 | |
女子 | 短距離 | スプリント | 小林優香 |
ケイリン | 小林優香 | ||
中長距離 | マディソン | 中村妃智 梶原悠未 |
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オムニアム | 梶原悠未 |
※出場選手は合計6人(男子3人、女子3人)
ポイント②チーム種目の強化の成功
なぜチーム種目での出場枠を獲得することができたのか。
短距離種目であるチームスプリントは、3人1組で行う種目。
中長距離種目であるチームパシュートは、4人1組で行う種目。
必要人数が多いぶん、選手層が厚くなければチームを作ること自体ができないし、ましてや国際大会で実績を積み、メダルを取ることもできない。
「戦える人を集める」ことも含めて難易度が高いが、そのぶん受けられる恩恵も大きく、オリンピックの出場枠については「チーム種目で枠が取れれば、個人種目の枠も得ることができる」というルールとなっている。だからこそ、短距離・中長距離ともに「チーム種目を強化対象」としてトレーニングを続けてきた。
チームパシュートにおいてはダニエル・ギジガー中長距離ヘッドコーチが就任したことが大きい。2023年に就任後、すぐに梶原悠未をチームパシュートの編成に加えることを決行。そして当時まだ高校生だった池田瑞紀と垣田真穂をナショナルチームに引き入れ、内野艶和を加えた揺るぎない4人のチームを作り上げた。女子はオリンピックランキング10位とギリギリの出場枠獲得となったが、2年で土台を築きあげたといって良いだろう。
男子は東京オリンピックでもチームパシュートで出場を目指していたが、2020世界選手権で日本記録を更新するもランキング外となり出場枠を獲得できず。2019年から2020年にかけて成長を見せていたものの、最後に間に合わなかった形だった。男子は強化を継続し続けたこと、継続性の賜物といえる。
男子チームスプリントに関しては、東京オリンピックの時代から強かった。ワールドカップ(現ネーションズカップ)では金メダルを量産していたものの、最後の2020世界選手権でまさかの予選敗退となりオリンピック出場を逃した苦い過去がある。
残念ながら女子チームスプリントは途中で強化を断念したが、残りの3種目(男子チームスプリント、男女チームパシュート)は強化の甲斐あり、オリンピックランキングの枠獲得圏内に入ることが成功。
男子は最大人数の7人、女子は1枠だけ逃して6人が出場することとなった。
ポイント③個人でも強くなった
チーム種目での強化が上手くいったことによって、出場人数は東京時から2倍以上となった。だが、チーム種目が強くなったことは個人の力が上がったことの証明でもある。個人種目のケイリン、スプリント、オムニアムではどの種目でも日本はランキング上位だ。
東京オリンピックの時にHPCJCがトレーニングセンターとして確立され、そのメソッドは更に精度を増してきた。更にはスタッフの習熟度も高まっているため、効率化も図れている。
トラック競技を強くするために存在する強化スタッフや施設があること、そしてその施設がフルに活用されていることで、選手1人1人が強くなっているのが今の日本チーム。
個人の強みがチームに活かされているからこそ、パリオリンピックには過去最大のチームとして臨むことができている。