5月29日、自転車トラック競技のパリオリンピック代表内定メンバーが一堂に会し、記者会見が行われた。

パリオリンピック日本代表候補選手 出場予定種目発表

代表が公に発表された今、選手たちの胸に去来する想いとはどのようなものなのか?この記事では女子短距離種目の佐藤水菜、太田りゆ、リザーブとして選出された梅川風子、3人のコメントをお伝えする。

佐藤水菜

佐藤水菜, 2024パリオリンピック 自転車トラック競技日本代表候補選手発表記者会見

ケイリン、スプリントに出場予定

Q:パリオリンピック出場メンバーに決まりました。今の想いをお聞かせください。

自分個人ではなくチーム全体の話になってしまいますが、選考で悔しい思いをした選手もいて、いろんな思いを見てきました。だからこそ正選手として選ばれた責任を感じますし、結果を出したいと思っています。

前回の世界選手権には万全の状態で挑めなくて、また同じようなことが起こらないかと不安もあります。さまざまな思いがありますが、コーチともしっかり話し合って環境を整えていきたいと思っています。

Q:周りの方からお祝いなどはありましたか?

今はSNSを控えているので、プライベートでのやりとりのある方や、伊豆に来て直接声を伝えてくれる方々にお祝いの言葉をいただきました。

Q:佐藤選手にとってオリンピックはどのような舞台ですか?

すごくかっこよくて、キラキラしている晴れ舞台。でもいろんなものを抱えて挑む大会だと思います。みなさんからの期待もそうですし、出られなかった人に「この人が出てくれて良かった」と納得してもらえるような走りをしなきゃいけないなと思っています。

「私が出ていいのかな」という不安は正直大きいです。ワクワクはないですし、プレッシャーもまだ感じられる立場ではない。まだまだ足りないものがとても多いと思っています。オリンピックまでの短い期間でできることは限られていますが、その中で粗をなくして、少しでも前を向いて走れるようにしたいです。

Q:ご自身の強みはどのようなところですか?

課題はたくさんありますが、「勝たなきゃいけない」というタイミングでしっかり出し切れることは強みだと思います。

Q:改めて、どのような大会にしたいと思っていますか?

「絶対に達成しなくていはいけないこと」と捉えているのは日本記録の更新、そしてネーションズカップで獲ったケイリン金メダル、スプリント銀メダル以上の結果です。それを達成するにはまだまだ足りないことだらけなので、あと2ヶ月で磨き上げていきたいと思います。

太田りゆ

太田りゆ, 2024パリオリンピック 自転車トラック競技日本代表候補選手発表記者会見

ケイリン、スプリントに出場予定

Q:オリンピック代表が決まった今の気持ちを聞かせてください。

前回リザーブだったところから3年間必死にやってパリオリンピックが決まり、まずは舞台に立てることを嬉しく思っています。

「勝って勝って勝ちまくる」というような、皆さんが安心できる選手ではないとわかっています。上がり下がりもありましたし、いつも楽しくやれていたわけでもありませんでした。それでも絶対止まらずに、ちょっとずつでも進んできた3年間で、だからこそ短いとは言えない3年間でした。でも止まらなかったということ、歩み続けたということに誇りを持って、本番は一生懸命戦いたいと思います。

Q:その原動力はなんだったんでしょう?

綺麗ごとのつもりはなく本音で、サポートしてくださる方々のおかげです。ナショナルチームやチームブリヂストンサイクリング、HPCJC。それだけではなく、普段関わっている全ての人が肩を支えてくれたなと思います。

Q:一番近くで見た東京オリンピックはどのような大会でしたか?

先輩たちが苦しんでいるのを見てきて、その先輩たちの強さも知っていて、みんないける、と思って見ていました。「オリンピックには魔物がいる」とよく言われますし、そういうことだったのかなと思いますが……自分は違う結果を掴めたら、と思います。

そして客席から観戦したことで、応援してくださる方々がどのような表情で自分たちを見ていてるのかをこの目で見ることができました。選手の気持ち、応援する方々の気持ち、全部の気持ちを汲み取れる立場だったのが(東京での)リザーブだったなと思います。

Q:これまでのレースで、悔いとして印象に残っているものがあればお聞かせください。

前回の東京オリンピックの前の世界選手権です。「ここで勝てば東京に繋がるかも」というスプリントのレースでしたが、心のどこかで「勝てるわけない」と思って、そのまま負けてしまいました。

でも今回のパリオリンピックに向けたキーポイントとなるレースだったのは、2023世界選手権のケイリン敗者復活戦。東京前と同じく「ここでの結果がパリオリンピック出場に大きく影響する」というものでしたが、今度はそこで勝つことができました。「できた、できなかった」を思うときに、よく思い出すレースです。

Q:改めて、パリではどのような走りを見せたいですか?

パワーのある走りが強みだと思っています。そういう走りが一番強いし、楽しんで走れています。パリオリンピックでは自分史上最高の状態で臨めるよう、あと2ヶ月、しっかりやっていきます。

梅川風子

梅川風子, 2024パリオリンピック 自転車トラック競技日本代表候補選手発表記者会見

リザーブとして選出

Q:リザーブという結果となって、今の心境を教えてください。

コメントしづらいというのが正直なところです。選考期間の成績によって選ばれているというのは納得しています。コーチや関係者の皆様に尽力いただき、トレーニング環境を整えていただき、自分では買えないような高価な自転車を作っていただきました。準備は整っていましたが、私自身が調子を上げられなかったのは私自身の問題だったと思っています。

ただ、現在は調子が上がっています。なのに選ばれないのか、ということには一石を投じたいと思い、具体的なアクションも起こしました。しかし判断が翻ることはなく、今はこの結果を噛み砕いている最中です。

Q:「選ばれなかった選手の分も」という声もありました。

あまり私のことは背負いすぎて欲しくはないなと思います。楽しんで、精一杯バンクを駆け抜けて欲しいです。ただ、そう思ってくれるチームメイトがいてくれることはとても嬉しいです。

Q:パリオリンピックとは、改めてどのような場所ですか?

リザーブという立場になるまでは「自分がここまでやってきたことを表現する場」だと捉えていました。でもリザーブは、そこで表現できる立場ではありません。これまでの考えに囚われず、噛み砕いて、10年後20年後に「自分がこの役割をしてよかった」と思えたらいいなと思います。誰かがやらなくてはならない仕事ではあるので、投げ出さずにと思っています。

コーチ陣が語るメンバー構成の意図 パリオリンピック日本代表候補選手 出場予定種目発表