5月29日、自転車トラック競技のパリオリンピック代表内定メンバーが一堂に会し、記者会見が行われた。
代表が公に発表された今、選手たちの胸に去来する想いとはどのようなものなのか?この記事では窪木一茂、橋本英也、今村駿介、そしてリザーブとなった松田祥位、男子中長距離種目の4人のコメントをお伝えする。
窪木一茂
Q:パリオリンピックへの選出おめでとうございます。窪木選手はチームの最年長でもあります。
ここがゴールではなく、メダルを獲ることがゴールだと思っています。最年長として、特にチームパシュートでオリンピックに出ることが目標でもあったので、若い選手に経験を伝えることを心がけてきました。
Q:今回は3種目に出場となりましたが、それぞれの種目への抱負をお願いします。
オムニアムではメダルの色を問わず、男子中長距離として初のメダルを獲りたいと思っています。
マディソンもメダル獲得が目標です。ペアとなる橋本選手としっかり噛み合えば十分目指せると思っています。
チームパシュートには短距離の中野慎詞選手が入ってくれることになりました。自分の役割は今まで通り、誰よりも長く牽いて、入賞に向けて貢献すること。出られなかった選手の分もしっかり走ります。
自分が3種目に出ることは望んでいたことなので、メダルを目指して頑張ります。
Q:2016年のリオ五輪以来のオリンピックですが、そこから比較してどのような部分が強化されていると感じますか?
リオの時は初のオリンピックで、全然思い出が残っていません。良い走りもいくつかありましたが、14位というリザルトで全然歯が立ちませんでした。
今はスプリント、短距離的な能力が一番強みとして育ったのかなと思います。中長距離のカテゴリーの中ではかなり上位のスプリント能力があるかなと思うので、このスプリント力を活かしてオムニアムやマディソンでメダルを目指したいと思っています。
Q:年々強くなっていますね。
日本代表選手であるということは、みんなの代表として海外に行くということです。「結果を残さなければこの立場にはいられない」という思いを長年持ち続けていて、そのために何をしなければならないかという部分を考えています。
普段のトレーニングにしても、コーチやスタッフの皆さんは僕のために自分の時間を使ってくれています。時間は万人に平等ですから、その時間をいただいている以上、結果を返すことで僕に関わってくれた方々が幸せになってくれたら、と考えています。
メダルにかける思いはとても強いです。僕は今34歳で、これが最後のオリンピックになるかは分かりませんが、リオの時とは全然違う感情で「メダルに近いところにいる」と思えています。
橋本英也
Q:代表選出おめでとうございます。
すごく嬉しいです。今回は2回目のオリンピックで、前回の東京オリンピックの時はオムニアムのみ1種目での出場でしたが、今回は2種目。よりメダルに近いと感じます。パリからメダルを持って帰れるように頑張りたいと思います。
Q:東京オリンピックはどのような大会でしたか?
新型コロナ禍での大会で、「自分が思い描いていたオリンピックとはだいぶ違うな」という部分がありました。さまざまな制限がありつつも開催ができたことには感謝していますが、「オリンピックの雰囲気」を味わうことはできなかった。次のパリはおそらく選手村にも滞在すると思うので、その雰囲気をしっかり味わいたいと思います。
そして、オリンピック「ゲーム」でもあります。その「ゲーム」をしっかり楽しんで、勝者になって帰ってきたいと思っています。
Q:この3年間で強化したのはどのような部分ですか?
東京オリンピックではコテンパンにやられました。元々体力が足りないと思っていて、基本的なジムトレーニングや長時間のロードトレーニング、そしてレースの中でのトレーニングと、全方位的に強化を重ねました。持久力やスピードも当時よりは強くなっていると思います。
Q:パリではどのような走りをしたいですか?
メダルの可能性が高いマディソンで金メダルを獲りたいです。後半でしっかり踏めている、体力があることが重要になりますので、窪木さんとしっかりコミュニケーションを取って金メダルを手繰り寄せたいなと思います。
Q:チームパシュートはいかがですか?
東京オリンピックが終わってから「次はチームパシュートでオリンピックに出よう」とトレーニングをして、日本記録も更新しました。やっと枠を獲れたけど、他の選手のための枠になってしまった。
選択と集中ということもあります。日本としてよりメダルの可能性が高い種目を優先する中で、その可能性を示せてこれなかったということはあるのですが、日本記録を更新した4人でオリンピックに行きたかったな、という想いがあります。
僕が危惧しているのは、今後チームパシュートでオリンピックを目指そうという選手がいなくなってしまうこと、そしてこれが最後のチームパシュートになるのではないかということ。次からは、どうすればチームパシュートで枠を獲ったメンバーがオリンピックに出られるのかということを考えていかないといけないと思います。
とはいえ、メダルに近いメンバー、選考基準に基づいて選ばれたメンバーだと思っています。ひとつでも多くのメダルを獲って日本に帰ってくることが第一優先だと思いますので、与えられた種目でしっかりメダルを持って帰りたいと思います。
今村駿介
Q:オリンピック出場が決定しました。
初めてなので嬉しいは嬉しいです。リザーブだった東京オリンピックの時は、どれくらいの力を持って橋本英也選手が臨むのかよくわかっていたからこそ「(その橋本選手でも)これくらいしか戦えないのか」と悔しい思いで見ていた部分がありました。
そこから3年間、どうすれば自分が戦えるのか模索してやってきました。まず舞台に立てることは嬉しいです。
Q:この3年間における一番大きな進歩はどのような部分ですか?
毎年世界選手権にチャレンジするチャンスをいただきました。1年で1番大きな大会でトライアンドエラーを繰り返して順位を少しずつ上げてきた、というのは大きいと思います。でもそれ以上にレース映像を繰り返し見て戦術的なところを盗んでいく、というところも大きかったと感じます。
大会で持てる力をしっかり出すということ。それによって戦術の幅が広がって「これはできる、これはできない」と選択肢が増えたことが大きいです。
Q:チームパシュートには中野慎詞選手が入ることになりました。
彼の1kmのタイムを見れば、タイムも狙えるんじゃないかと思います。短距離の選手を入れて走ることは初めてなのでこれから煮詰めていくとは思いますが、やることは「個人の走力を伸ばし、プランに対応できるような脚力をつけること」。自分の持つ経験を活かして中野選手にアドバイスし、タイムを狙っていきたいです。
ここからオリンピックまで、チームのライバルとして周りに刺激を与えていきたいと思います。そして何が起こるか分からないので、いつ代わっても大丈夫なように100%の準備をしていきたいと思います。
中野慎詞のコメントはこちら↓
松田祥位
Q:リザーブということになり、どのように受け止めていますか?
仕方がない、という感じです。
Q:一番悔しいお立場だとは思いますが……
兒島(直樹)が一番悔しいと思いますし、今村さんもチームパシュートしか走れないので、相当もどかしいと思います。自分がリザーブとなることは発表の2週間前くらいに聞かされましたが、その瞬間は怒りが込み上げました。みんな集められている中で先に退席してしまいました。
ただ、こういったことも自分のためになれば良いかなと思っています。吸収できることを全て吸収して、ロサンゼルスオリンピックなり、今後の自分の活動に繋げていきたいです。オリンピックに向けてどうやって調子を上げていくものなのか、どのように過ごすものなのか。そういったことを勉強する場としてはとても良いと捉えています。
Q:トレーニング強度は今後も変更なく?
おそらくそうです。コーチの中である程度構想ができていると思うんですが、今はエンデュランス中心の練習の期間で、その後にパワートレーニング、そして調整の期間、となっていくかと思います。
Q:以前はロードも走られていましたが、これからもトラック競技中心でやっていくのでしょうか?
トラックですかね。「チームパシュートでメダルを獲る」、そのためだけに車ひとつで三島に来て、2年ほど過ごしてきました。トラック競技自体も好きになってきましたし、思うような結果が得られるまではやり続けると思います。