【プロフィール】アリー・ウォラストン

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土壇場で爆発する「スプリント力」

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アリー・ウォラストンが表彰台を獲得しているレースを振り返ってみると、ある共通点が見えてくる。それはレース終盤での圧倒的なスプリント力。

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『2024ネーションズカップ第1戦』でウォラストンは3冠を達成しているが、そのうち個人種目2種目(エリミネーションとオムニアム)を見てみると、両種目とも2位以降の選手を置き去りにするスプリントを最終周回で披露。大差での優勝を飾っている。

ネーションズカップ2023年大会での優勝レースでも同じような勝ち方が見られた。中長距離選手ながらも爆発的なスプリント力を持っている選手であることがわかる。

『2023ネーションズカップ第1戦』エリミネーション

『2023ネーションズカップ第1戦』オムニアム・エリミネーション

爆発に至るまでの「したたかな準備」

『2024ネーションズカップ第1戦』エリミネーション

しかし、その”爆発”に至るまでのレース運びにも注目したい。『2024ネーションズカップ第1戦』でのエリミネーションと、オムニアム・ポイントレースでは、必ず先行選手の後方からスプリントを仕掛けている。

『2024ネーションズカップ第1戦』オムニアム・ポイントレース

さらに1着でフィニッシュした同大会オムニアムのスクラッチでは、最後のスプリントまでウォラストンは1度も先頭を牽引していない。先頭に位置するとすぐにバンクの外側へ退避し、先頭を交代している。

残り約4周回でケイティ・アーチボルド(イギリス)やジョージア・バーカー(オーストラリア)などの強豪選手たちが加速し先頭へ出た時、ウォラストンはまだ集団の中盤で待機。

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そして残り2周回、ついに先行選手を風避けに、一気に後方外側から加速するウォラストン。最終周回突入後にトップギアを踏み始めた先行選手たちを、既にトップスピードに達しているウォラストンが捲り上げ1着フィニッシュ。オムニアム1種目目を制した。

『2024ネーションズカップ第1戦』オムニアム・スクラッチ

「身体能力 × 頭脳」

体力を最終勝負の寸前まで温存し、先頭選手が気付きづらい位置からスピードを爆発させる。細かく見てみると、オムニアム・ポイントレースやエリミネーションでも、見えにくい後方から相手の不意をつくタイミングで一気に加速しているのがわかる。

最終スプリントは02:45〜

『2024ネーションズカップ第1戦』の約3週間前に開催されたロードレース『2024ツアー・ダウンアンダー』第1ステージの最終スプリントでも後方からの加速・追い上げを見せ、見事ステージ優勝を果たしたウォラストン。

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終盤の爆発的なスプリントを可能にする「瞬発力・パワー」だけでなく、レースを冷静に展開する「分析力・忍耐力」、そして「駆け引きのうまさ」、さらにロードで鍛えられた「持久力」を兼ね備えた選手であると言える。

身体能力だけではなく頭脳戦にも長けた選手だ。

ちなみにウォラストンは競技を続ける傍ら、「Part-time Student」として大学で法学の勉強にも励んでいる選手(2023年6月現在)。駆け引きのうまさや分析力の高さにも納得がいく。

ロードとトラック、パリではどちらに出場する?

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(左から)ケイティ・アーチボルド、アリー・ウォラストン、ジェニファー・バレンテ

パリ2024オリンピックでは、ロードレースとトラック中長距離種目の両方に出場できるような日程が組まれている。二足の草鞋を履き、世界トップレベルの成績を残しつつあるアリー・ウォラストンは、どちらの競技への出場を目指すかについてまだ明言していない(2024年2月現在)。いや、どちらもだろうか。

3月15日〜17日に香港で開催される『2024ネーションズカップ第2戦』には出場予定となっているウォラストン。オリンピックメダリスト有力候補として注目となっている。

最後に『2024ネーションズカップ第1戦』終了後のウォラストンのコメントを紹介する。

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(アデレードで)思い通りの実力が発揮できたことを誇りに思います。一貫した走りのなかで自己ベストの達成を目指していました。

数年前私がオムニアムを始めた頃、出場選手たちのレベルに圧倒されていました。今回は世界屈指の強豪を相手にレースをする初めての機会でしたが、私自身の成長を実感できる結果となったことを嬉しく思います。

(4レースを行う)オムニアムで「一貫性を維持する」ことは今の私の重要な課題です。

スポーツ選手である私たちは、オリンピック金メダルを常に夢見ています。私だけに限ったことではありません。今一度集中し直して、次のレースに挑みたいです。

出典:Cycling New Zealand
参照:『2024ネーションズカップ第2戦』エントリーリスト(2024年2月16日版)

アリー・ウォラストンが3冠を達成したレースレポートはこちら
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