ボートにあった「おかわり精神」
Q:G1では6日間で5走。競技なら、下手したら1日で10本近く走ります。感じ方はどのように違いますか?
競輪祭にはナショナルチームのめちゃめちゃキツい練習をしてから入ったのですが、初日が一番体が動きにくくて、最終日に一番良い状態が持ってこれたと思います。1日1本だから、次の日には回復している感じがありますね。
Q:ベテラン選手などは1日走って力尽きてたりもしますが、若さでしょうか……
(笑)ベテランの皆さんに比べて、自分がまだまだ力を出しきれていないということはあると思います。でも年齢的なところもあるのかな。
周りの人に比べ、「体力をつけること」しか持てる武器がないと考えていました。そこを重点的にずっとトレーニングしてきた結果、体力がついてきたと思います。
Q:それはボート時代からの積み重ねもあったりしますか?
体力自体はボートとあまり関係がないと思います。でも「一番しんどいところでもう1本やる」という精神的な部分はボートで鍛えられました。そういう意味では「ボートのおかげ」はすごく感じています。
Q:ボートの練習ってどんなものだったんでしょう?
「キツいものを、みずから、ずっとやり続ける」という感じでした。それが一番できた選手が、一番強い選手になっていく。ボートはそういう競技です。
自転車は「キツいことをしたからといってそれが強さに比例するか」というと、そこまでわかりやすいものじゃない。ボートはその辺りがわかりやすいです。ボート選手はそういう面は強いんじゃないかと思いますね。
Q:みんな積極的に”おかわり(※もう一本)”しにいく感じでしょうか?
みんなおかわりしにいくし、ほんとにもう……イメージした通りだと思いますよ。みんなが想像する「嫌なこと」をみんなしたがる、おかわり合戦な感じです。
でも日本の今のトップの選手たちがそれをやっていて、僕らみたいな下のボート選手はその人以上にハングリー精神を持ってやらないと、追いつくどころか差がどんどん開いていく、という世界でした。
おかわりできないから、出し切る
Q:ナショナルチームだと、そういう「おかわり精神」はないですよね?
まったくないですね。おかわり「できない」のがナショナルチームの決まりでもあります。決まったメニューの中で出し切ることが重要です。
「おかわり精神」でずっと練習してきたボート時代だったので、自転車を始めたばかりの頃は「今日の練習物足りないなあ」と思うことが多かったです。でもナショナルチームに入って、「おかわりできないからこそ1本の集中力を研ぎ澄ます」ことを覚えました。そうすれば4本の練習だとして、3本目でリタイアしたくなるような感覚になってきます。良い方向に転向できたなと思いました。
Q:スプリントの3本目にもつれ込んだりするとちょっと嬉しかったりしますか?
※スプリント種目の対戦では2本先取の3本勝負なので、ストレート勝ちにならなかった場合は3本目が実施される。
3本目になると他の選手は「うっ」ってなりますよね。でも僕は「3本目だ、得意なところに入った」って思うんですよ(笑)そういうマインドがあることが「3本目を落としにくい」要因かなと思っています。気持ちの問題ですが。
Q:ナショナルチームで「出し切る」ことを覚えたからこそ、競輪でも1本に集中して走れるということになるのでしょうか。
はい、すごくつながっているなと思います。最初の頃は「1日2本の方がパフォーマンスがいいのに」と思っていたくらいなので、その辺りは効果的だったなと感じます。
Q:ナショナルチームのトレーニングは「肉体の強化」に注目が集まりがちですが、そういった「1本で出し切る」という点は意外に重要な要素かもしれませんね。
そうですね。ジェイソン(・ニブレット短距離ヘッドコーチ)やブノワ(・ベトゥ テクニカルディレクター)とミーティングをすると、自分の持っている物を出し切れることを褒められることが多いです。技術や体力面よりも「1本で出し切ることができている」と言われます。自分としてもそこは自信を持って言えることかなと感じます。
Q:昨シーズン(2023年1月)の沖縄合宿の際、血を吐いたって話をしてましたよね?今回はいかがでしょう。
※インタビューは沖縄合宿中に実施
前回は吐きすぎて血が出ました(笑)今回は目的としてる部分が違うということもありますし、血を吐くようなトレーニングはこの後の金曜日に予定されてて……だからこの後血を吐く予定です。吐いたらすぐ報告します(笑)でもリバースは9割くらいの確立だと思いますよ。
1月に血を吐いたことで、いろんな対策方法を考えました。喉を乾燥させないとか、水分の摂り方とか……成長した姿をお見せできると思います。
自分の力を全部出し切って
Q:ヤンググランプリ、ラインをどうするかなどはすでにお話しされてますか?
岡山の山根(将太)先輩とラインを組もうか、という話はしています。まだ細かい話はしてません。前に行きたい気持ちは強いんですが、山根選手も意識を持ってやってる選手なので、しっかり話し合って決めていきたいです。
Q:チームでやるのと個人でやるのはまったく違うと思います。どちらが得意ですか?
……両方得意じゃないですね。どちらも良い時もあれば悪い時もあります。
Q:改めて、ヤンググランプリをどのように捉えていますか?
ラインというよりも個々で戦う意識が高いレースだと思います。普段の競輪より競技寄りになりそう。だからこそ僕や慎詞は「ここで結果を残したい」と思っているんじゃないでしょうか。しっかり力を出して、優勝を目指してがんばりたいです。自分の力を全部出し切って走りたいですね。