8月3日〜9日の7日間で実施される、『2023世界選手権トラック』。本年は新たな試みとして、同じ日程でロード、BMX、パラサイクリングなど様々な「自転車競技」の世界選手権が実施される。

それぞれの種目において「世界選手権」は重要な意味合いを持つが、ここではトラック競技にとって「世界選手権はなぜ重要なのか?」をお伝えしていく。

同じ優勝でも、アジア選手権の3倍

世界選手権は1500ポイント。
アジア選手権は450ポイント。

……これは、それぞれの大会で個人種目で「優勝」した場合、獲得できるオリンピックポイントの数だ。

パリオリンピックの出場枠を獲得するためには、世界の主要大会で良い成績を残し、ポイント(オリンピックポイント)を獲得してランキング上位に入る必要がある。

オリンピックランキング(オリンピックの枠獲得の基準となるランキング)の対象大会の内、世界選手権は「一番ポイントを獲れる大会」。

対象となる大会と、それぞれの獲得ポイントは以下の通りとなっている。

大会の種類と係数

対象となる大会と成績 係数
オリンピック直近の『大陸選手権』2大会
でのベスト順位
0.75倍
『2023UCIトラックネーションズカップ 』
でのベスト順位2つ
+
『2024UCIトラックネーションズカップ 』
でのベスト順位2つ
1倍
『2023世界選手権トラック』
でのベスト順位
1.5倍

各大会で獲得できるUCIポイント(個人種目の場合)

世界選手権 ネーションズカップ 大陸選手権
1位 1000 800 600
2位 900 720 540
3位 800 640 480

つまり、世界選手権で優勝したら1000×1.5で1500ポイントを獲得できる。アジア選手権での優勝(600×0.75=450)とは3倍以上の差だ。

例えば、アジア選手権終了時点の男子ケイリンオリンピックランキングと各国のポイントは以下の通り。

男子ケイリンオリンピックランキング

※アジア選手権終了時点

順位 オリンピックポイント
1位 オーストラリア 3075
2位 オランダ 2955
3位 中国 2587.5
4位 フランス 2580
5位 日本 2535
6位 イギリス 2407.5
7位 カナダ 2175
8位 ドイツ 2066.25
—–出場権獲得ライン—–
9位 ポーランド 1972.5
10位 チェコ 1785

暫定1位のオーストラリアのポイントが3075であることを踏まえると、世界選手権優勝で得られる1500ポイントがどれだけ大きい意味を持つかわかるだろう。

選考期間中、唯一の世界選手権

加えて2023年の世界選手権は、パリオリンピック出場枠選考期間中の「唯一」の世界選手権でもある。

パリオリンピックまでのスケジュール

2022年7月9日〜2024年4月14日 出場枠選考期間
2024年4月15日 最終版「UCIトラックオリンピックランキング 2022-2024」決定
2024年4月22日 UCIから各国への通知
2024年5月6日 各国の出場枠承認締め切り
2024年5月13日 出場枠再分配用期間
2024年7月8日 「2024パリオリンピック」エントリー締め切り
2024年7月26日〜8月11日 「2024パリオリンピック」開催期間

2023年8月の世界選手権の後は、2024年春にネーションズカップが開催予定。まだスケジュールが発表されていないが、大陸選手権が4月14日までに開催されればこの成績も選考対象となる。

だが、いずれも獲得できるオリンピックポイントは世界選手権に及ばない。従って世界選手権でいかに成績を残すかがオリンピック枠獲得のために重要となる。

(もちろん、小さい大会でコツコツとポイントを積み上げることも手ではある)

オリンピック直前の緊張感に耐え切れるか

1/2 Page