オリンピック直前の緊張感に耐え切れるか
選考期間中「唯一」の世界選手権であることは、選手のメンタルや自信といった部分にも影響を及ぼす可能性がある。ここで東京2020オリンピックに出場した、脇本雄太インタビューの一部を引用しよう。
ネーションズカップで自信をつけたところで、世界選手権でボコボコにされたら目も当てられない。僕はあくまで世界選手権を基準にするべきだと思います。
ネーションズカップ……僕らの時の名称はワールドカップでしたが、ああいうのは大会だと思ってはいけない。本当に調整してきた人間の実力を基準にしなければいけないので、世界選手権こそ基準にするべきです。
Q:そう思うと、パリオリンピックまでは次の世界選手権(2023年8月)しかない状況です。若い選手は本当の戦いを1回しか経験できません。
僕らの時は、比較的経験者が多かったですからね。僕と新田(祐大)さんに関しては「散々味わってきた感覚」でした。だから今の若手に対して正直なところ、「大丈夫?」はあります。加えて、オリンピックはさらに「別物」ですから。
▼インタビュー全文はこちら
脇本が懸念するように、特に現在の短距離メンバーはトラック競技での*オリンピック経験者がゼロ。世界選手権の経験者は多いものの、「オリンピック直前の世界選手権」となればまた別のレベルとなっていることが予想される。
例年以上に仕上がった「世界の走り」に直面した時、どれだけ粘り、歯を食いしばれるか、いつも通りの自分でいられるか。そして仮に良い結果が出せなかった時、どのように気持ちを持ち直せるか……そういった部分も問われる大会となるだろう。オリンピックに向けた「プレッシャーのシミュレーション」という意味でも重要な大会だ。
※長迫吉拓はBMXレーシングで東京オリンピックに出場している
もちろん選手はそんなこと分かってる
……と、あれこれと書いてきたが、こんなこと選手たちはもちろん承知の上で、来たる世界選手権に向けてのトレーニングに励んでいる。
期待感、緊張感、プレッシャー。あらゆる感情を背負って戦いに挑む選手たちを、ただ孤独に戦わせるのは忍びない。観客である我々も、多少なりともその感情を共に背負おうではないか。
そういうわけで、「どうして世界選手権は重要なのか?」を知っていただけると幸いです、という記事でした。世界選手権は8月3日から9日の7日間。一緒にハラハラドキドキして、応援していただきたい。