1年の延期を経てその日を迎え、コロナ禍の中でオリンピックを戦い抜いた2021年。
オリンピック後に発症した腰の不調と闘いながら、最後の最後に『KEIRINグランプリ2022』の栄冠を勝ち取った2022年。
グランプリチャンピオンとして迎えた2023年、脇本雄太は今、何を考えているのか?2023年3月21日に終了した『ウィナーズカップ(G2)』直後の脇本雄太選手に、近況について伺った。
レースに勝つ、その気持ちは変わらない
Q:KEIRINグランプリ2022で優勝して、何か変化はありましたか?
僕に関しては、たぶん何にも変わってないですね。「どうせ脇本だから」みたいに見られていたので……生活面でも特に変えたことはないです。
Q:税金だけ半端なく増えた、みたいな。
そんな感じですね。全部妻に任せてるのでしっかりとは把握してないんですが、「やばい」とは言ってました。(2022年に)歴代最高賞金額を得たといっても、気持ちとしてはそんなことはありません。
振り返ってみると、ダービー(日本選手権競輪、2019年)を初めて獲った時は、賞金に対して「凄いな」みたいに感じていました。でもそれよりも、勝ちたい気持ちや、勝った時の気持ちが忘れられなくて、今も選手として続けられていると思います。まだまだ「勝つことへのモチベーション」は衰えていないです。
バケモノ扱いされる脇本
Q:KEIRINグランプリ2022で優勝した時、レースに勝ったこと自体は嬉しかったですよね?
それはもちろんです。レースで味わう感動は変わっていませんので。自分が納得できる勝ち方があって、それが達成できたらもちろん嬉しいです。
Q:グランプリで勝った時は、どういった点が嬉しかったですか?
グランプリって「自力で勝つ」が難しいレースだと思うんです。それを打ち破りたいと思っていて、達成できました。それが嬉しかったです。これまでのグランプリはすべて先行で挑んでいて、2着も2回ありました。でもそれは「惜しい2着」と「惜しくない2着」がありましたね。
Q:「やっとか」とは思いました?
それはありませんでした。
Q:グランプリで勝ったら「日本一」という感じはありますか?
う〜ん、オリンピックの経験者なので、別枠というか。みんな俺のこと”バケモノ”っていう……
Q:(笑)これで体が治ればいいんですけどね。練習自体は思うようにできているのでしょうか?
ナショナルと同じような練習はできませんが、環境を作ってはいます。
体を整えに片道4時間
Q:現在の練習サイクルはどのようなものですか?
基本はナショナルチームでの練習を踏襲していますけれど、質は低いです。見てくれる人もいないし、自分で判断しているので。
Q:以前のインタビューでもおっしゃっていましたね。そこから改善した部分はありますか?
競輪場内のジムは頑張って改良しています。マッサーがいないことが課題で、今は施術を受けに京都に行ったり、東京に行ったりしています。その時の状況にもよりますが、遠方に行く方が多いので、片道4時間、いつも日帰りです。その日の練習はすべて潰れてしまいます。移動費も掛かりますし、なかなか厳しいですよね。
Q:脇本選手の稼ぎがあればできないことではないですが、キツいですね。
さらに、治療となると東京か筑波ですね。ナショナルチームのドクターは東京にいるのですが、僕の腸骨を見てくれた「腰の名医」の先生は筑波にいるんです。この方もナショナルチームからの繋がりの方ですね。
Q:ナショナルチームで培った人脈も、役立っているんですね。
とはいえ身体の日常的なメンテナンスの人脈は乏しいのが、今の悩みではあります。だからナショナルチームは環境が良いと本当に思いますね。練習後の夜に施術を受けられる点が本当に良かったです。かといって伊豆に住むことは僕にとって不便すぎる……家庭や地元を投げ出してまで、伊豆に住み続けることはできませんでした。