2023年5月12日から15日にかけて伊豆ベロドロームにて開催される『2023全日本選手権トラック』。各種目の「日本チャンピオン」を決める大会だ。

この記事では本大会で実施されるトラック競技種目のルールを解説。観戦のお供に役立てて欲しい。

短距離種目

スプリント
ケイリン
1kmTT(男子)/ 50mTT(女子)
チームスプリント(ジュニアは実施なし)

スプリント

【ルール】
予選はフライングスタート(助走つきスタート)で行う200mの個人タイムトライアル。勝ち上がった選手たちは1対1・先着順のタイマン勝負となる本戦へと駒を進める。

200mFTT世界記録・日本記録

日本記録 世界記録
男子エリート 9秒518(脇本雄太/2021年) 9秒100(ニコラス・ポール/2019年)
女子エリート 10秒711(小林優香/2021年) 10秒154(ケルシー・ミシェル/2019年)

本戦は勝ち上がりトーナメント式で行われ、選手たちは3周回を走り、勝敗を競う。2023年大会では*1/8(1回戦)・1/4(準々決勝)・1/2 (準決勝)・決勝と行われ、準々決勝からは3本形式で、2本先取した選手の勝ちとなる。

※女子は予選の後、1/2 (準決勝)・決勝に進む。

【見どころ】
とにかく「速い人」の勝ち!200mFTTを勝ち抜いた「速さ自慢」たちによるタイマンの、完全なる実力勝負に注目。スタートを切ってすぐ、ゆっくりと走り出した選手が互いの顔を見合わせながら加速のタイミングを図るなど、選手同士の駆け引きが繰り広げられる。ラスト200m、パワー全開のゴールスプリントをお見逃しなく。

ケイリン

【ルール】
日本で誕生した「競輪」が世界大会へと発展したものが「KEIRIN」だ。最大で7人の選手たちが一斉に走り出す。ペースメーカー先導のもと、ポジション争いを行いながら約3周をかけて時速50kmまで引き上げたのち、残り3周ほどで解放され、着順を競う。また、敗者復活戦も行われる。

【見どころ】
選手たちが繰り広げるスピード勝負!時速50kmから解放された選手たちは、ラスト3周の高速勝負の舞台へと繰り出す。ラスト1周では鐘が鳴り、レースが最終局面を迎えることを伝える。

チームスプリント

【ルール】
3人チームで3周を走り、そのタイムを競う。1周ごとに先頭を走る選手が抜け、最後まで残った1人の選手のフィニッシュタイムが最終の結果となる。予選は各チームごとのタイムトライアル。メダル決定戦は、2チームごとが先着を競う対戦方式で行われる。

日本記録 世界記録
男子 42秒742(長迫吉拓、小原佑太、太田海也/2023年) 41秒225(オランダ(ジェフリー・ホーフラント、ハリー・ラブレイセン、ロイ・バンデンバーグ、マティエス・ブフリ)/2020年)
女子 48秒074(太田りゆ、佐藤水菜、梅川風子/2022年) 45秒974(ドイツ(リー ソフィー・フリードリッヒ、ポーリン・グラボッシュ、エマ・ヒンツェ)/2022年)

【見どころ】
スタートダッシュが得意な第1走、速度をキープしつつ底上げしていく第2走、最後までスピードが衰えない第3走。それぞれの特性を活かした布陣、チームプレイに注目を!

※今大会のジュニアカテゴリーでは実施されない

500m / 1kmTT

【ルール】
男子は1kmTT、女子は500mTTで行われるタイムトライアル(タイム計測)種目。世界選手権では最初に予選が実施され、上位選手が決勝に進出。ただでさえキツい種目だが、それを2回走るスタミナも要求される。

日本記録 世界記録
500mTT 34秒882(前田佳代乃/2013年) 32秒268(ジェシカ・サラザール バレス/2016年)
1kmTT 59秒796(小原佑太/2022年) 56秒303(フランソワ・ペルビス/2013年)

【見どころ】
「思いっきり足の小指をぶつけに行くような種目」「走り終わったら鉄パイプで殴られてるような痛み」……などなど、極限レベルの”自分との戦い”がゆえの痛みを伴うこの種目。走り終わった選手たちの苦悶の表情に注目!

中長距離種目

個人パシュート
チームパシュート(ジュニアは実施なし)
スクラッチ
エリミネーション(ジュニアは実施なし)
ポイントレース
オムニアム(ジュニアは実施なし)
マディソン(ジュニアは実施なし)

個人パシュート

【ルール】
男子は4km、女子は3kmで実施。予選ののち、タイム上位選手が1・2位決定戦、3・4位決定戦に進出する。バンクのホームとバックに分かれ同時にスタートし、より速いタイムでフィニッシュするか、パシュート(追い抜き)して相手選手に追いつけば勝ちとなる。

日本記録 世界記録
男子(4km) 4分10秒521(松田祥位/2022年) 3分59秒636(フィリポ・ガンナ/2022年)
女子(3km) 3分33秒740(梶原悠未/2019年) 3分16秒937(クロエ・ダイガート/2020年)

【見どころ】
最初に飛ばすタイプなのか、終盤までペースを維持するタイプなのか、選手によって走り方はそれぞれ。だから「これはA選手が勝つな……あれっ、スピードが落ちてきた?うそ、B選手が勝った!」のようなどんでん返しも起こりうる。最後までハラハラしながら見るのが楽しい種目。

※ジュニアカテゴリーでは男子3km、女子2kmで実施

チームパシュート

【ルール】
4人1組で構成されたチームが2チームずつ4kmを走り、3番目の選手がゴールしたタイムを競う。「団体追い抜き」とも呼ばれ、空気抵抗を避けるために4人が息を揃え、順に先頭を交代しながら速さを求める。予選はタイムトライアル方式、その後のメダル決定戦は、2チームごとが先着を競う対戦方式で行われる。対戦方式にて“追い抜き”(他チームを追い越す)した場合、その時点で勝ちが決まる。

【見どころ】
勝負の鍵は、シンクロ率の高さにある。それぞれの走者が走りにおける役割を持ち、互いの疲労を減らす「one for all」のチームワーク。美しいラインから生み出される速度感、バンクの傾斜を駆使した交代風景は、見どころのひとつ。

日本記録 世界記録
男子 3分52秒956(沢田桂太郎、今村駿介、窪木一茂、近谷涼/2020年) 3分42秒307(イタリア(シモーネ・コンソーニ、フィリポ・ガンナ、フランチェスコ・ラモーン、ジョナサン・ミラン)/2021年)
女子 4分18秒510(池田瑞紀、梶原悠未、内野艶和、垣田真穂/2023年) 4分04秒242(ドイツ(フランチスカ・ブラウス、リサ・ブレナウアー、リサ・クレイン、マイキ・クローガ)/2021年)

※今大会のジュニアカテゴリーでは実施されない

スクラッチ

【ルール】
男子は15km、女子は10kmで実施される中長距離種目。「トラックで行われるロードレース」とも言われる「最後に1着でフィニッシュした人が勝ち」のシンプルなルールだ。

【見どころ】
集団の中にいれば体力を温存できる。でも前に出て、先にフィニッシュしなければ勝てない。誰が逃げる?誰がそれを追いかける?それともひとかたまりの集団のまま進んで、最後の最後で全員が全力ダッシュ?選手たちの駆け引き、思惑を想像しながら見るとより楽しめる。

エリミネーション

【ルール】
2周ごとに最後尾の選手が1人除外(エリミネート)され、最後は1対1の勝負で決着。

【見どころ】
余裕を持って走っていたと思ったのに、エリミネート直前に他の選手が前に出てきたせいでいつの間にか最後尾、除外に!なんてことも。長く走るスタミナ、除外されないようにスピードを出す力だけでなく、位置取りも重要となる。トラック競技初心者にもわかりやすく、とっかかりとしておすすめの種目だ。

※今大会のジュニアカテゴリーでは実施されない

ポイントレース

【ルール】
男子は40km、女子は25kmで行われる種目。10周回ごとに1位~4位に対して5点、3点、2点、1点が割り振られる。フィニッシュ着順では各ポイントが倍になり、レース中に集団に1周差を付ければ20点を獲得できる。最終的に高ポイントを獲得した選手が勝ち。

【見どころ】
ポイント周回で手堅くポイントを取ることも重要だけど、ラップ(1周追い抜き)が成功すれば一気に20ポイント獲得のチャンスも!あえて「あとちょっとでラップできる位置」を陣取って1位の5ポイントをもらう……なんて手も。「今あの選手は何ポイント?」と計算しながら観戦してみて。

オムニアム

【ルール】
ラテン語で「全部」を意味するオムニアムは、1日を通して全4種目を行い、総合点で順位が競われる複合種目。スクラッチ→テンポレース→エリミネーション→ポイントレースの順に実施され、3種目目までの合計得点を持ち点として、最後のポイントレースが行われる。

テンポレースのルール
男子は10km・女子は7.5kmを走り、獲得したポイント数で争う。5周目からは、毎周1位通過の選手にのみ1ポイントが与えられる。ラップ(1周追い抜き)が成功すれば一気に20ポイント獲得のチャンスも。そのほかの3種目は前述したものと同様のルールだが、オムニアムの種目として実施される際は距離が少し短くなる。

【見どころ】
勝負に「絶対」がないこの種目で選手に求められるのは、トラック競技における「総合力」。持久力や戦略など、さまざまな要素が詰め込まれた種目がオムニアム。後半での大どんでん返しもありうる、「絶対勝てる」が少ない総合種目を、ハラハラしながら観戦しよう。

※今大会のジュニアカテゴリーでは実施されない

マディソン

【ルール】
2人1組で行われるペア種目。男子は200周50kmを、女子は120周30kmを走る。選手たちは走者交代の際に相手の腕を取り投げ飛ばす、通称ハンドスリングという技術を駆使して加速を続ける。ルールはポイントレースと一緒で、10周ごとに設けられたポイント周回で、1位〜4位に対して5点、3点、2点、1点が割り振られ、ゴール周回のポイントは倍になる。集団から抜け出し、他ペアと1周差をつける(ラップする)と、そのペアには20点が加算される。

【見どころ】
ハイスピードのなか2人1組で互いの手を取り投げ合う、迫力のハンドスリングが見どころ。巧みに交代を繰り返すテクニックと、複雑な戦略から目が離せない。ポイント獲得1周前の合図である鐘が鳴る前後のペアの動きや、スプリント勝負にも注目だ。

※今大会のジュニアカテゴリーでは実施されない

日本記録
世界記録(男子)
世界記録(女子)