2022年12月22日、太田りゆが母校の中学校で講演を行うと聞きつけ「これは世紀の名スピーチが聞けるかもしれない!?」と、取材へお邪魔した。

伺ったのは上尾市立上平中学校。年に一度、外部から著名人などを招き“ふれあい講演会”という形で講演会を行っているとのこと。体育館には3年生の生徒達が集まり、他の学年の生徒達はオンラインで各教室から視聴をした。

講演テーマは「なりたい自分になるために」。TV出演等は数多くこなす太田りゆであるものの、講演は人生初。しかも出身母校とのことで、さぞかし緊張しているか?と思いきや、思いの外リラックスしている様子で講演が始まった。

講演の詳しい内容は動画へ譲るとして、最も印象に残ったことは太田りゆが“成功者”として語るのではなく“挫折を味わいながらも道半ば”の挑戦者であることを、赤裸々に語っていたことであった。

動画:太田りゆ上尾市の母校で初講演、なりたい自分になるために

太田りゆは母校の後輩達へ何を伝えようとしたのか?そこで語られたのは、後輩たちの道標となるメッセージでもありつつ、パリへ向けた自身の心情整理のようでもあった。

初の講演を終えた太田りゆへ話を伺った。

ハチャメチャだった中学時代

Q:初めての講演は緊張はしましたか?

緊張はあまりしなかったですかね。

Q:今回はどういった経緯で、母校で講演を行う事に?

弟が所属していた部活動の顧問の先生が、母へ直接「講演会をしてくれないか?」と言いに来てくださったそうです。

最初は「いやいや私話すことないじゃん!オリンピック出てないし、ガールズグランプリにも出れてないし。皆に自慢出来るようなことが無いから、話すことなんて無いよ、と。しかも中学生の頃、私はもうハチャメチャだったんで。

太田りゆ上尾市の母校で初講演、なりたい自分になるために

ハチャメチャだった太田りゆ

スカートは半分にちょん切ってたし、眉毛には2つ剃り込みライン入れてましたし。「上平中のアタマ太田りゆ、ちょっと来い」みたいな感じで隣の中学校の人から呼び出されたり。あと、地元のゲームセンターのトイレの陣地争い頑張ってみたり。

Q:ナニソレ?

ゲームセンターのトイレに居れるのって、やっぱ強い中学校だけだったんで。

Q:そういうローカルルールね……

そう。そんなトンチンカンな感じの中学生でしたけど、学年委員長とかもやってたんです。友達が多かったんですよね、とにかく。真面目じゃなかったけど、皆とワイワイしたり、皆をまとめたりするのも得意でした。

でも先生には怒られっぱなしだし、中学生の頃のことなんか話せないよ、という感じでした。どうしようかね……みたいな感じで沖先生(沖美穂さん:競輪学校時代は太田選手の教官を努め、現在はJKA職員としてナショナルチームをサポート)にも相談して。「成功してることだけじゃなく、悔しいことを伝えていくのも良いんじゃない」と言われ「あぁなるほど!」と。

確かにオリンピックへ出場した人は少ないですが、オリンピックへギリギリ出場できず、リザーブで過ごした人っていうのも、かなり少ないかなと思って。そういう経験を話せるのは良いことかなと思ったのと、自分としても何か乗り越えられる面があるかなと思いました。

太田りゆ AUGUST 4, 2021 - Cycling : during the Tokyo 2020 Olympic Games at the Izu Velodrome in Shizuoka, Japan. (Photo by Shutaro Mochizuki/AFLO)

やってみよう、となり準備を始めたのですが、パワーポイントを使うすら生まれて初めて。まず使い方の勉強から始まって、前田佳代乃大先生にオンラインで画面共有しながら教えてもらって作りました。

まだ泣いちゃいますね

Q:話し方等は練習をして臨んだのですか?

喋りの練習というか、話したいことをある程度メモにまとめてはいました。でも、生徒の表情とか、どういうふうに感じてくれているかを見たくて、結局メモはあまり見ないで話しました。

Q:どのような表情が見えましたか?

皆、静かな子たちだったけど、うなずいてたりとか。考えてる顔してたり、マスク越しでも表情に出てる子とかも居ました。

Q:講演中も泣きかけて言葉に詰まるほど、東京オリンピック代表落選については引きずっている部分もあると思います。講演中も「この写真を自分から他人へ見せるのは初めて」と言っていましたが、講演をする中である程度整理がついた部分もありますか?

やはり、まだ泣いちゃいますね。整理がついたか?という点では、まだ半々だなと思います。講演では黙っちゃいましたが、我慢して話もできたし……うん、でもやっぱり声が震えちゃうし。

多分それはパリが終わらないとね、どうしようもないと思います。出れても、出れなくても、パリっていうものが終われば整理がつくと思いますね。

Q:また機会があればやってみたい?

そういう需要があって、皆が聞きたいと言ってくれるのであれば、話してみたいなと思います。今日は色々な意味でパワーをもらいました。やってみて自分なりの改善点も見えたし。

太田りゆ上尾市の母校で初講演、なりたい自分になるために

生徒達からはお礼の花束と合唱がプレゼントされた

生徒の皆が合唱してくれたのも嬉しかったです。あれは響いた、響きました。皆で歌ってもらえる事って、こんな響くんだなと思いました。皆こっち見て歌ってくれて、ありがとうって感じです。元気もらえました。

太田りゆ上尾市の母校で初講演、なりたい自分になるために

上平中学校 根本校長と