初開催へ「2.5億円」以上を出資

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WCC選手の活躍から広がるトラック競技

Men's 1km Time Trial Podium / 2021 Track Cycling World Championships, Roubaix, HOOGLAND Jeffrey(NED)ジェフリー・ホーフラント, PAUL Nicholas(TTO)ニコラス・ポール, EILERS Joachim(GER)ヨアヒム・アイラース

(左)ニコラス・ポール

トリニダード・トバゴと言えば、東京オリンピックにも出場し、世界選手権でも表彰台に登っているニコラス・ポールが有名。200mFTTの世界記録を保持する男子短距離選手だ。

ニコラス・ポールはその素質が見込まれ、スイス・エーグルにある「UCIワールドサイクリングセンター(WCC)」の選手として選抜されており、このWCCからトレーニングや大会出場に関する費用など、様々なサポートを受けている。同じく東京オリンピックに出場したクウェシ・ブラウンWCC選手に選ばれている男子短距離選手。その他、女子ロード選手としてウィメンズワールドツアーで活躍しているテニール・キャンベル以前WCCに所属していたトリニダード・トバゴ選手だ。

WCCとは以上のトリニダード・トバゴ選手のように、自国に十分なトレーニング環境へのアクセスを持たない選手たちを受け入れ、トレーニング・育成の支援を行っているUCIの施設。自国で自転車競技が盛んでなくても、WCCによる支援によって、オリンピックなどの世界的な大舞台で自国を代表し出場することができるのだ。

『2022カリブ諸国選手権トラック』に初出場し、メダルを獲得したアドリアーナ・シージャギャットはトリニダード・トバゴ現地メディアに以下のように語っている。

「(トリニダード・トバゴの)女子選手は近年減少傾向にありましたが、ニコラス・ポールやクウェシ・ブラウン、テニール・キャンベルらの活躍で、多くの女子選手たちが自転車競技に参入し始めています」

その他『2022カリブ諸国選手権トラック』ではクウェシ・ブラウン(トリニダード・トバゴ)や、以前WCCに所属していた女子中長距離のアンバー・ジョセフ(バルバドス)らが、メダル複数枚獲得の活躍を見せている。

バルバドス JOSEPH Amber Women's Omnium / Men's Individual Pursuit / TISSOT UCI TRACK CYCLING WORLD CUP I, Minsk, Beralus

アンバー・ジョセフ

将来アドリアーナ・シージャギャットなどの次世代選手が、ニコラス・ポールやクウェシ・ブラウンなどのように国際舞台で活躍し、さらに次世代の自国選手に影響を与える存在になるかもしれない。

参照:TRINIDAD and TOBAGO NEWS DAY(2022年12月7日)

ベロドローム不在の国から誕生した世界記録/UCIワールドサイクリングセンターの存在とは?

新WCCサテライトセンターが設立


男女揃って『2022カリブ諸国選手権トラック』での活躍を見せたトリニダード・トバゴチーム。そんなトリニダード・トバゴに、「WCCサテライトセンター」が新たに設立されることを2022年12月8日にUCIが発表した。

「UCIサテライトセンター」とはスイス・エーグルにあるWCCと同じく、十分な環境を持たない自転車競技選手などを歓迎し、育成を行う施設。世界中から素質ある選手を歓迎し支援を行うWCCとは異なり、主に同大陸の選手たちを招き支援していくことで、WCCの活動を全世界に広げることを主な目的としている。

また「UCI(国際自転車競技連合)」の名を冠しているが、UCIが”所有”している施設ではなく、その活動を行う権利を与えられた既存の自転車競技施設がサテライトセンターとしての役割をそれぞれ果たしている。


TTOにて新たなサテライトセンターに”任命されたのは”、『2022カリブ諸国選手権トラック』の開催地にもなった「National Cycling Centre」。トリニダード・トバゴの選手はもちろんのこと、十分な環境を持たないカリブ諸国チームをはじめ、パン・アメリカ諸国の選手らを招待し支援を行っていく。

このトリニダード・トバゴに新たに設置されたサテライトセンターにて、今後複数年間にわたる支援を受けていくことに合意したアドリアーナ・シージャギャットは、以下のようにコメントしている。

「この施設にやってくる世界クラスの選手たちと共に、より高いレベルでトレーニングできることは私たちにとって非常にプラスとなります。

サテライトセンターは(選手に対するトレーニングの他に)指導者やメカニック、応急処置などのスキルを学ぶための機会も提供しています。選手だけでなく、様々なキャリアを目指す人たちにとって利益をもたらす施設なのです。より一生懸命トレーニングを積み、そのようなキャリアを目指す人たちにとって(このサテライトセンターの設立は)、非常に大きなモチベーションになります」

国際舞台でのさらなる活躍を目指す

LIMA, PERU - AUGUST 03: Nicholas Paul (L) and Njianse Philip of Trinidad and Tobago celebrate after the final race in cycling track Sprint Men Finals Gold at Velodrome of VIDENA on Day 8 of Lima 2019 Pan American Games on August 03, 2019 in Lima, Peru. (Photo by Buda Mendes/Getty Images)

Photo by Buda Mendes/Getty Images

自国開催の国際大会に2.5億円以上を出資したり、新たなサテライトセンターが設立されたりなど、盛り上がりを見せているトリニダード・トバゴのトラック競技。2022年11月には、2度のオリンピック出場を経験し、2012ロンドンオリンピック・男子スプリントにて4位入賞を果たしたヌジサネ・フィリップをナショナルチームのコーチに任命するなど、その発展により力を入れている。

『2022カリブ諸国選手権トラック』で活躍した4人の女子選手は、2023年シーズンの大陸選手権やジュニア世界選手権での活躍を目指していることが、現地メディアにて伝えられている。

その他WCC選手のクウェシ・ブラウンらは2022年同様、2024パリオリンピックへの出場を目指し、ネーションズカップや世界選手権にも出場してくるだろう。

男女共に盛り上がりつつあるトリニダード・トバゴなど、発展しようとする世界のトラック競技に要注目だ。

参照:TRINIDAD and TOBAGO NEWS DAY(2022年11月9日)