2019年に中長距離ヘッドコーチに就任したクレイグ・グリフィンコーチ。名だたる選手たちを指導してきた名伯楽は、日本でも梶原悠未を世界選手権優勝、そして東京オリンピックでの銀メダル獲得へと導いた。しかし、コーチに就任してから半年で新型コロナの影響を受け、海外でのレースはほとんどがキャンセルされてしまった。

いよいよ始まる2022シーズンはベルギーが日本代表中長距離チームの初戦となる。初戦を控えたヘッドコーチの胸中とは。シーズン開幕直前インタビューをお届けします。

※コーチの方が選手よりも興奮しているようです

本当の意味での能力開発ができていなかった

クレイグ・グリフィン / 2021 Track Cycling World Championships

Q:新シーズンが遂に始まりますね。パリオリンピックまで時間が無く、とても大事な1年になります。種目によっては再構築が必要な種目もありますね。

男子と女子のチームパシュートは再構築の対象です。レースは少ない中ですが、オムニアムとマディソンには新たな選手たちを投入しますので、戦術的、身体的、技術的に新選手たちの発展の場としたいです。

新型コロナの影響で、東京オリンピック前の香港のネーションズカップ、そしてオリンピック後の世界選手権しか、チームとして海外の選手たちとレースをすることが出来ませんでした。

そういった意味で本当の能力の開発は出来ていませんし、新たに入った選手たちは海外での経験が無い状態です。新しい選手たちには経験を、これまで活躍してきた選手たちには更なる発展を目標としたシーズンにしたいです。

Q:今は手探り状態かと思います。ベルギー遠征/ネーションズカップ第1戦の具体的な狙いは?

ベルギーはレースに出て、刺激を得ることが目的です。これは今まで活躍してきた梶原(悠未)、橋本(英也)、窪木(一茂)に対しても言えることです。彼らですら、最近はレースを行えていません。

そしてUCIポイントを獲得することも目標のひとつです。国としても個人としても、今はまったくポイントが足りていない状況です。

ベルギーでの目標はそんなところでしょうか。特にマディソンとオムニアムについては世界選手権に出るためにポイントが必要です。

若手にチャンスを

橋本英也 河野翔輝 今村駿介 兒島直樹, 男子チームパシュート, 2021全日本選手権トラック

Q:男子のオムニアムですが、ベルギー遠征では全員が出られますよね?ネーションズカップはどうでしょうか?

はい。ベルギーは全員が出場します。ネーションズカップはナショナルチームとブリヂストンで兒島(直樹)と今村(駿介)が出場します。

Q:ベテランの2人(窪木/橋本)からの「俺を出せ!」は、ありませんでしたか(笑)?

2人とも理解は示してくれました。兒島は2021年の日本チャンピオンですし、今村は東京オリンピックのリザーブでした。そういった若い選手たちにチャンスを与えてあげることも大事だと理解してくれています。レースを走る機会が無ければ、本当の意味での成長は難しいですから。

Q:女子は梶原選手と内野(艶和)選手ですね?

そうです。内野は2019年にジュニア世界選手権で金メダルを獲得してから海外でレースを行っていません。男子と同じ考えで、彼女の更なる能力発展を、レースを通じて行っていければと思っています。

チーム内に経験豊富な選手たちもいれば、新たに世界に挑む選手たちもいます。どちらも育てていかなければいけませんね。

内野艶和, 女子マディソン, 2021全日本トラック

内野艶和

Q:「若手を試す」意味合いが強い遠征ですね。個人種目で表彰台の期待はありますか?

チーム全体の調子が良いですし、レースの内容も良いだろうと思っています。ただ、他国の選手たちのレベルが分からないので……ベルギーの大会には27か国からレベルの高い選手たちが集まるということもあり、タフな内容になると予想しています。

自信を持って言えることは「少なくとも1種目で誰か表彰台に上がる」ということ。でも誰になるかは私にも分かりません。

梶原は「エンジンを大きくしている」

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