ワールドツアーの経験をどう生かすか
ロードレースは勝者は1人だが、その1人を勝たせるために協力するチーム戦である。オリンピックロードレースにおける出場枠数は最大で5枠。国別のUCIポイントランキングから各国の枠数が振り分けられている。
UCIポイントを最も獲得できるワールドツアーを走るワールドチームの所属選手が多い国が出場枠数を稼いでいる傾向が見られている。最大5枠となっており獲得しているのは、ベルギー、イタリア、オランダ、フランス、コロンビア、スペインの6か国だ。
スロベニアに注目
獲得標高4865mもの上りが非常に厳しい今回の東京オリンピックロードレースのコースを考えるならば、最も注目すべきは、やはりツールでマイヨ・ジョーヌを纏うタデイ・ポガチャルがいるスロベニアだろう。
ポガチャルのライバルとしてマイヨ・ジョーヌを争ったが、不運な落車が続き、第9ステージでリタイヤしたプリモシュ・ログリッチが同チームとなると、上り勝負になれば敵はいないように思える。ログリッチは、一昨年日本を訪れた際、コース上最後の勝負所となるであろう明神・三国峠を入念に試走していた。
元スキージャンパーの経歴を持つログリッチは、スキージャンプをやっていたときはオリンピックが最大の目標であったが、自転車に転向してからツールが最も大事なレースと言ったそう。少し感覚が変化し「絶対にここで勝ちたい」とも語っていた。
グランツールでは1チームあたりの出場選手数は8名だが、オリンピックは1チームあたりの出場選手が少ない上に距離も244㎞と長いため、集団コントロールが難しいという点もあり、「個の力」の大きさが物をいっている。
「個の力」というところで注目したいのは、ツールの上りステージでも単独逃げ切りで勝利を挙げ、山岳アシスト・スプリントもできる、まさに”万能”という言葉が似合うワウト・ヴァンアールト、そしてこちらも独走力に優れた21歳、レムコ・エヴェネプールの二人だ。
ジロ・デ・イタリアに出場したエヴェネプールは、既に日本入りしており、調整を行っている。この二人にリオ大会ロードレースでのチャンピオン、グレッグ・ヴァンアーヴェルマートらを加えた強力なベルギーチームがどのような戦法をとるかも非常に興味深いところだ。
その他にも上りに強いメンバーを揃えたコロンビアや、全員がグランツール表彰台圏内であるイギリスなど、注目選手を挙げればキリがない。
日本代表は新城幸也・増田成幸
日本代表は、ワールドチームに所属する新城幸也と国内を主戦場とする増田成幸の2人。ワールドチーム所属の超強豪選手たちの攻防に対してうまく立ち回り、どこまで食い下がることができるだろうか。
ロードレースだけでなく、ツールに出場した選手からオリンピックのトラック競技に出場する選手も多く在籍しており、ロット・スーダルスプリンター、カレブ・イワンの発射台を務めたロジャー・クルーゲ(ドイツ)は、落車による怪我でツール第13ステージでリタイヤしているが、トラック男子オムニアム、マディソンに出場を予定している。
個人タイムトライアルや中級山岳ステージでの逃げで活躍したEFエデュケーション・NIPPOのステファン・ビッセガー(スイス)は、トラック男子チームパシュートに出場する予定だ。
Text : 滝沢佳奈子(サイクルスポーツ)
なお沿道での観戦については、新型コロナウイルス感染拡大防止のため「控えていただきますようお願いいたします」との要請が出ている。中継で楽しもう。