世界が大注目のロード世界選手権2019、男子エリートロードレース。現地9月29日8時40分(日本時間16時40分)のスタートを前に日本チームを直前取材。出場するのは新城幸也バーレーン・メリダ)、中根英登(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ)の2人。レースの目標、注意すべき点、危険な敵など注目の1戦を前に様々なことを語ってもらった。

【新城幸也選手】

久しぶりにコンディションが良い感覚

Q:2年ぶりの世界選手権、意気込みはいかがでしょうか?

もちろん表彰台に上れれば最高ですけど、個人的な目標はトップ20です。1度は2010年に9位に入っていますが、今回は最低限の目標としてトップ20を掲げています。2016年のリオオリンピックの時程に久しぶりにコンディションが良い感覚を持っているので、最終周回でしっかり勝負に絡めるようにしたいです。

Q:コンディション面だとブエルタ(スペイン1周)から2週間ほど空ていますが、たくさん走っていた方が調整がうまくいくのでしょうか?

僕の場合はレースをどれだけたくさん走れるかというところが重要です。世界選手権やオリンピックで良い成績を出している時はグランツールの2週間後など、レースを走り続けた後でした。今年はシーズン序盤に怪我をしましたが、その後レースをたくさん走ってきています。データ上ですが、良い記録は全てブエルタの3週目に出せていて、力は出ている傾向にありました。なのでブエルタを終えてから2週間の休息を挟んでの世界選は、僕としては良いタイミングで大会を迎えることが出来ているなという感じです。

Q:ブエルタを走った後にフレッシュって・・・すごいですね

(笑)もう12回もグランツールを走っているので3週間のレースは慣れています。

新城幸也

簡単なレースではない 疲労度は350km位走るようなもの

Q:今回のコースのポイントはどういったところと見ていますか?

ポイントはたくさんあります。まず当日にならないと天気もわからないですし、風がどれだけ吹くかによってもレース展開は変わってきます。最初の170kmのライン区間(周回まで)は、1個目の山までは比較的広い道が続きます。試走してみたら追い風だったので、横風で大変になることはないのですが、2個目の山岳、3個目の山岳、周回に戻ってくる間、そこがライン区間の肝になる感じですね。

2個目の山と3個目の間っていうのはずっと常に細くて下りで、前に上がる余地がなく、3個目の上りは横風、頂上は吹きっさらし。そして下ったら追い横風で最も集団が壊れやすい方向です。試走の時の風とすると、周回に入ってきて40人になっていることもあり得ます。周回コースに入るまでに170kmも走っていますし、後手に踏まないようにしないといけません。そうなったとしても追いかけっこでちゃんと周回の前に入れるようにしないといけませんし、簡単なレースではありません。

実際の距離は280kmですが、たぶん疲労度は350km位走るような感じだと思います。周回に入ってきても100kmありますし、周回も簡単ではなくて、下りは速く、そして狭いですね。下りきってから上りに入るので、明らかに先頭で入った人が仕掛けるのに有利です。ですから周回で先頭集団から遅れないようしないといけません。周回コースはほぼ14kmですが、残り8km地点からは左右のカーブ、アップダウンもあるので、ほぼ前に上がるチャンスがない。周回コースの100kmはクリテリウムだと思って全開でいくしかないですね。

Q:そういうコースは得意ですか?

路面が乾いていれば得意です。ドライで風がなければチームとして動かなければいけなくなり、そういう展開では集団の中にいれば良いだけなので、風が吹かないことが僕にとっては有利に働きます。逆に問題は風です。横風などになると自分で対応するにも限りがあるので。

Q:日本チームは2人ですが、やはり人数が少ないことは厳しいですよね?

2人で上手く連携を取るだけです。走りながらどちらかが消耗していくので、周回に入る前までが1つの勝負です。周回に入ったら、下がると前に上がるのが大変なので、常に前にいるかどうかが問題になります。そういう意味では助け合うということはあまり出来ないと思うので、周回に入るまでを2人で連携してどうにかする、という感じじゃないかなと思います。

Q:新城選手から見る有力なチームは?

ベルギー、オランダ、フランス、スペインの4か国ですね。勝つ勝たないではなくて、レースを作るのはその4か国ということです。オランダはファンデルプールのために走るし、フランスはアラフィリップのために走りますよね。ただ天気が悪いとアラフィリップにはちょっとハンデがあるので、そうなるとオランダのファンデルプール等が有利かなと思います。ベルギーは誰でも勝負できるというのが強みですね。

Q:東京オリンピックまであと1年ですが、この世界選手権に特別な要素はありますか?

世界選手権に関わらず、ワールドツアーで走っていれば、同じ選手がオリンピックに出てきます。誰がどういう調子でどういう脚質かというのは世界選手権じゃなくてもわかるので、大事なのは日本チームに入った時のチーム運営だと思います。今は良いチームジャパンを作ってくれているので、この世界選、そしてこの後のアジア選で「スタッフの準備の仕方や経験を積んでいくこと」がオリンピックに向けて大事なのかなと思っています。

Q:新城選手はいつまで走り続けるのでしょうか?

さっきも言ったように久々にコンディションが良いです。この2年間は怪我でレースが走れなかった分、良いレベルまで自分を持ってこれなかったという背景があります。今回は久しぶりにグランツールを走って、元のレベルまで戻ってこれたっていう僕の嬉しさもあります。まだやれるという感触を得たので、自分を求めてくれるチームがある限り僕は続けていきたいですね。

Q:まだまだ長くなりそうですね(笑)

わかんないですよ、若い子が強くなってくれれば引退に追い込まれますからね(笑)
中根英登選手