また、今回のコラボレーションの一部として、9月7日にはフォーラムも実施された。ピナレロの代表であるファウスト・ピナレロ氏、ジロ・デ・イタリアで区間3勝を挙げているダビデ・カッサーニ氏、1988年に世界選手権 個人ロードレースで金メダルを獲得したマウリツィオ・フォンドリエスト氏、そして日本からは片山右京氏(TEAM UKYO)、砂田弓弦氏(フォトグラファー)、奥明栄氏(東レ・カーボンマジック代表取締役)、神保正彦氏(シマノ自転車博物館学芸員)、そしてイタリアの自転車産業に関わる錚々たるメンバーがディスカッションを交わした。

写真右がピナレロ氏
ファウスト・ピナレロ氏は東レのカーボン素材に言及し、素晴らしい素材をどう自転車に組み上げるかについて語る。ディスカッションの中では、どういったアプローチで日本で競技自転車がもっと人気になるのか、その点についても語られた。
競輪、自転車が社会に貢献してきたことは大きい
シマノに40年以上にわたり勤めてきた神保氏は日本の自転車文化を問われると「昔は選手と役員しかいなかった。それでも1964年の東京五輪、80年代の人気、そして90年の世界選手権を通じて発展はしてきている。ただしジロ・デ・イタリアのような人々の生活に浸透するような形ではない。一方で日本には競輪があり、戦後の復興支援、そして今では世界に誇る日本発祥のスポーツとなった。競輪も含めて自転車競技が社会に貢献してきたことは大きい」とコメント。

神保正彦氏
本場で本物を感じて欲しい
砂田氏はイタリアに長らく住んでいた経験から、イタリアと日本の自転車競技の人気の差に注目。「日本では野球・サッカーの順で自転車は何番目と聞かれても分からない。だがイタリアはサッカーの次に自転車が人気。元々の文化の違いはあると思うが、大事なのは本場で本物を観ること」と語った。加えて、砂田氏はこれまでにジロで自身が撮ってきた写真を基に選手個人個人のエピソードを披露する流石のパフォーマンスがあったことにも言及しておきたい。

写真左:砂田氏 右:神保氏
エンジニアの育成 世界への貢献に繫がる
自動車のエンジニアリングに長年携わってきた奥氏は「車と比べると自転車は人間が生み出す要因が大きく、まだまだやれることはたくさんあるし、自社内でもデータが少ない。そういった挑戦をしていくことによって、社内のエンジニアの成長・育成につながり、ゆくゆくは世界の産業のレベルアップに繫がる。だからこそ技術の追求は今後も行なっていきたい。そしてそういった開発をJKAの補助事業が手助けしてくれていることに感謝したい」と、日本で行われることが世界を変えていく可能性を示した。

写真左:奥明栄氏 右:砂田弓弦氏
道は前にしかない
最後となったのは片山氏。F1から始まり、登山、自転車と様々なフィールドで活躍してきた片山氏には挑戦というテーマの質問が投げかけられた。その質問に対し片山氏の口からはHPCJC(トラック競技強化指定選手のためのトレーニングセンター)がキーワードとして挙がる。「東京五輪前から、JKAの支援のもと本格的にHPCJCがプロジェクトとして立ち上がり、2024年には世界選手権トラックで世界チャンピオンを3人も生み出しました。日本人だからフィジカルの差で勝てないとか、そういったことはないと勇気をもらえました。大谷翔平さん、野茂英雄さん、そしてトラック競技で証明されたように、時間は掛かるが日本のチームで強い日本人選手を輩出し、ジロやツールへ挑戦していきたい。道は前にしかないので、何があっても続けていくことが大事だと思う」と全体のディスカッションを閉める形でコメント。

片山右京氏

左から片山氏、奥氏、砂田氏、神保氏
最後のトーキングセッションはジロ・デ・イタリアと日本の競輪のコラボ映像で始まり、イタリアウィークの企画の一つ「ジロ・デ・イタリア×競輪」が幕を開ける形となった。
主催者提供のYouTubeはこちら
※日本のパネリスト4人が出てくるのは2時間40分ほどの部分から
展示企画は9月14日までの限定期間となっているため、ぜひ万博会場に足を運び、今しか観れないコラボレーションを楽しんでいただきたい。