「春のクラシック」男女賞金平等化

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現在の女子のレベルは「最低賃金には不十分」?

昨今の自転車界では、さまざまな大会で男女平等に向けた働きかけが行われている。

2020年以降には、女子ロードレースのプロ選手における「最低賃金」もUCIによって定められ、年々その額は計画的に増加し、金銭面での男女における格差は徐々に是正されてきた。

しかしこの動きには、一部に疑問を投げかける声もある。ベルギー地元メディア「Krant van West-Vlaanderen」のインタビューにて、UCIウィメンズチーム「AG Insurance-Soudal-Quickstep」のオーナー Patrick Lefevere氏は以下のように述べた。

「最低賃金を正当化するには不十分」

Patrick Lefevere氏(抜粋・意訳)

「例えば昨年(2022年)の『ツール・ド ・フランス ファム』では制限時間が繰り上げられましたが、これはそうでないとプロトン(集団)の半数ほどが制限時間に間に合わないからです。

レースを戦えない選手に£60,000を支払うことは適切でしょうか。現在の女子サイクリングのトップカテゴリーは、この最低賃金を正当化するのには不十分です」

なお彼の意見は「cyclingnews」においても比較的批判的なタッチで報じられている。

出典:cyclingnews(2023年2月17日)

「最低賃金なくして、女子の自転車競技は成長しない」

これに対して、ベルギー女子選手 ロッテ・コペツキーは以下のようにコメント。

ロッテ・コペツキー(抜粋・意訳)

「(現在定められているような)最低賃金なくして、女子の自転車競技は成長しないでしょう。選手たちの生計はプロサイクリングによって支えられるべきです。競技を続けるのに何か他の仕事に就かなければならないような状態では、男女間のギャップは大きく開いたままになってしまいます。

女子は(男子よりも)走行距離が短いことは確かです。ですが男子と同じく女子も全力を尽くしてレースを走っています」

このコペツキーによるコメントは、Patrick Lefevere氏の意見への反論として報じられた。

出典:cyclingnews(2023年2月24日)

初戦を制したのは「エリミネーション世界王者」

コペツキーによるコメントが報じられた数日後、Flanders Classicsが主催する2023年の”春のクラシック”が『オンループ・ヘットニュースブラッド』にて開幕した。

女子選手における最低賃金についてコメントしたロッテ・コペツキーが、この大会の女子エリートでチャンピオンとなった(男子はオランダのディラン・ファンバーレ)。

2006年に初回大会を迎えた本大会の女子カテゴリーだが、開催国のベルギーから優勝者が出ていなかった。第18回大会にして、ロッテ・コペツキーが悲願の優勝を自国にもたらす結果となった。

(左)シャリ・ボスイット(右)ロッテ・コペツキー

ロッテ・コペツキーはトラック・ロードで活躍する二刀流選手。女子サイクリングの発展を象徴する選手と言える。

2023年4月2日(現地時間)には、コペツキーがディフェンディングチャンピオンとして出場する「ロンド・ファン・フラーンデレン」が開催される。

「自転車競技」の発展にも注目を

本記事では「Flanders Classics」による賞金額の男女平等化についてお伝えしつつ、賞金や最低賃金など”お金”にまつわる自転車競技の男女差について、賛否両方の意見をご紹介してきた。

ぜひ男女ともに発展する自転車競技全体の動向にも注目しながら、1戦1戦を楽しんでいただきたい。

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