スタッフからは不満も
今回チームを離れる7人の内の1人、ロス・エドガー短距離コーチは、スコットランド出身の元選手。2008年北京オリンピック男子ケイリン銀メダル獲得や、世界選手権、コモンウェルスゲームスなどでもメダル獲得歴があるイギリスの名選手だ。2009年〜10年にかけて短期登録選手として来日し、日本の競輪にも出走した過去を持つ。
引退後はスイスのUCIサイクリングセンターでコーチを務め、2017年からオーストラリアサイクリングチームに加入。2018年のスプリント世界王者マシュー・グレーツァーも指導してきた。
しかし、オリンピック開催まで残り1年という時期にチーム離脱を言い渡されたエドガーコーチは、同月18日、自身のTwitterを通じて公開書簡にて、オーストラリア自転車連盟に抗議をしている。
https://twitter.com/Ross_Edgar/status/1262120112275906560
以下公開書簡訳。
オーストラリア自転車連盟のリストラによって、私とパートナーのバーニーは悲しいことに解雇の犠牲者となりました。相談もなく、補償もなく、情のかけらも感じられません。世界的なパンデミックの真っ只中であり、生後4ヶ月の息子がいるにも関わらず、あと60日でオーストラリアを離れることとなります。すでに残り日数は今日で57日です(書簡公開時)。
日々に試練はあれど、私は一度始めたことはやり遂げるつもりでおり、オリンピックを終えたらヨーロッパに戻る計画でした。残酷にもその計画は前倒しになり、今は仕事をやり残したことに加えて重い心境を抱いています。
この場を借りて、過去と現在のスプリント選手たちに感謝の意を表したいと思います。君たちと最後まで仕事をやり遂げられないことは心が痛いですが、必ず役目を果たしてくれる事を私は知っています。また、私たちの日々を忘れようのない有意義なものにしてくれたスタッフの皆さんにも感謝しています。
私たちは今回の変更について何の相談も受けていないし、他に解雇された5人も同様です。解雇されずに残るスタッフもアスリートも何も正式な通達を聞いてはいないようです。この3年間でアスリートとコーチは関係性を構築してきました。アスリートを第一に考えるなら、現在は継続することが重要な段階です。
サイモン(パフォーマンスディレクター)の「再構築」は大きな変化であり、その結果、コーチへのサポートは削減されるでしょう。そしてそれは選手へと影響することが考えられます。またコーチの働き方を大きく変えることにもなります。このことから、再構築はアスリートに対しての配慮に欠けています。更にこの決定は前回のオリンピックでの成功に基づいたものだと思いますが、次のオリンピックまでの期間が短いことを考えると不確実性の高い動きであると言えます。
オーストラリアは3年近く私たちの家でした。オーストラリアチームでのプログラムでスタッフと家族のように暮らしたことに後悔はありません。バーベキューをしたことや、ビーチでの日常、皆と笑いあったこと。ですがもう、私がオーストラリアの選手たちにメダルを取らせることは実現しません。私たちの3年間に貢献してくれた全ての人たちに心から感謝します。
私たちは、落ち込んではいますが負けたわけではありません。チームは明日もいつものようにトレーニングをするでしょう。ここはメダルを獲得するための場所です。今いる選手たちは私が今まで見た中で最も才能があり、勤勉なアスリートたちです。それだけは変わらない事実です。
ロス・エドガー