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それは出来なかった
レース後にはそのことについて、平原は記者団から質問攻めを受けた。
「やっぱり、他地区で付いているのに何もせずに最後を差したら自分が最低な選手だと思いますので、それは出来なかったです。」
レースは脇本が残り2周を切って8番手から加速すると、平原を引き連れて一気に先頭へ。そして逃げきり体制へと入った2人だった。最終ストレートで脇本と勝負することも可能だっただろう。だが平原としては連携を組む以上、脇本を一度でも守らなければ最後に脇本と直線勝負をする資格は無いと考えた。
「それがラインですから。正直脇本の走りはとてつもないです。少しでも調子を崩していたら脇本の後ろには付けないようなスピードですね。援護する必要もないかなと思った位です。でも来年以降に繋がる経験が出来たので、レースに悔いはないです。」
実現が難しいとされていた他地区のエース同士のタッグに沸いた『KEIRINグランプリ2020』。互いに優勝とはならなかったものの、事前からレースを含め大いにファンを沸かせてくれたことは間違いない。平原の脇本を守るという決断。その一瞬に「競輪」の奥深さを感じることが出来たのは筆者だけではないはずだ。