3つ目:ライン取り能力の向上
冒頭でも述べたが、トラック競技で使用するピストバイクはブレーキが付いていない。ハイスピードで走行中、いざという時にブレーキをかける事が出来ないため、どの走行ライン※1に従って先頭へ出るかが鍵となる。
※1…この場合のラインは競輪のラインではなく、どの進路に進むべきかの意味
オムニアムのような種目では大集団で密集しながら走行する。マディソンでは時には時速60kmを超えるスピードの中でペアと交代しつつも、他チームの交代に巻き込まれないように走る必要がある。
「一瞬の判断で最適な走行ラインを見極める」・・・オムニアムやマディソンで鍛えられるこの能力が、ロードレースの集団スプリントの際に活きてくる。
At @sixdaycycling we've always known that the Madison is the best cycling race there is! Good to see @Olympics are joining the party! 🏅 🏅 pic.twitter.com/4cQyuezedy
— Six Day (@sixdaycycling) June 10, 2017
トラック競技で、自転車の”基礎”を身につける
「トラック競技(主に中・長距離種目)がロードレースに役立つ3つの理由」をご紹介した。
世界には「トラック競技で自転車競技の基礎的な技術を身につけさせる」という考え方がある。イタリアなど、幼少期やジュニア時代からトラック競技を取り入れる国や、イギリスでは数年前までロード選手の育成プログラムにトラック競技のトレーニングを取り入れていた。
その結果、2012年のツール・ド・フランスで優勝を飾ったブラッドリー・ウィギンス(イギリス/すでに競技から引退)や、同大会の2018年覇者のゲラント・トーマス(チームイネオス/イギリス)、世界最高峰のスプリンターとして名高いエリア・ビビアーニ(コフィディス/イタリア)やマーク・カベンディッシュ(バーレーン・メリダ/イギリス)などはトラック競技出身となっている。
トラック競技とロードレース、両方のフィールドで戦ってきたオランダのテオ・ボスは「若い時にトラック競技で技術を磨くのは良いことだと思う。外でロードレースを走ると色々と危険だったりするから、若い内はトラック競技の方が安全に技術を高めることができる。さらに言えば、ロードレースで若い時にチャンピオンになることは難しいし・・・」と語っている。
【トラック競技編 Pt.3】マディソンって、やってて怖くない?中長距離種目の何故/自転車競技の素朴な疑問を調査
前述してきたようにトラック競技とロードレースは決して無関係ではない。そして競輪発祥国である日本は、バンク数が世界一という特徴を持つ。トラック競技を走って、あるいは観戦して、新たな刺激と興奮、そして自身の走行能力の向上を味わってみてはいかがだろうか。
参考元:Attention Road Riders: How Track cycling will help your Road Cycling Performanceより
※本記事は、現役選手の意見も元に作成しております。