ストレングストレーニングの役割

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ケイデンストレーニング

GRAND PRIX OF MOSCOW 2019

トラック選手のトレーニング場所はジムだけではない。筋力とパワーが鍛え続けられるベロドロームでのトレーニングがメインとなる。

ベロドロームのトレーニングでは、大臀筋と側広筋に焦点が当てられる。これはスプリンターが出すパワーの内55%を占める部位で、これらを鍛える”フォースインターバル”は「低回転(60rpm(=1分間に60回転))で高いトルクを出すトレーニング」であり、スプリンター達のトレーニングの中でも大きな意味を持つ。

また、高回転のトレーニングも必要だ。

トップクラスのトラック選手はケイデンス(回転数)を自由自在に切り替える事が可能であり、この能力はスプリントのような種目で大きく活きる。トラック競技の自転車は、レース中にギアを切り替えることができない。だからこそ、より高回転でペダルを回せる技術を鍛えなければならない。

高回転のケイデンスは神経筋を活性化させるため、短距離選手は”スーパースピンワークアウト”と呼ばれる130rpmで30秒もがき1分レストを5〜7セットなどのトレーニングを行う。

Filippo Ganna, Men's Individual Pursuit / 2020 Track Cycling World Championships, フィリポ・ガンナ

それに対して、中・長距離のサイクリストはより長い時間のメニューを行う。4km個人パシュートなどを専門とする選手はペース(ケイデンス)を調整しながら、なるべく短めのレストで4km×10本のメニューを行う。

トレーニング内容の違いは、種目によって選手が鍛える能力が異なることから生じている。

Asker Jeukendrup教授の調査によると、トップクラスのスプリンターは95%が無酸素域でのエネルギー利用であるのに対し、4km個人パシュートの選手は75%が有酸素域でのエネルギーを利用している事が明らかになった。

また普段室内でトレーニングを行なっている選手にとっては、週1回程度の公道トレーニングによる新鮮な空気と開放的な景色が身体のコンディショニングや精神面に良い効果をもたらすと言っている。

テオ・ボス

参考記事:Training a Track Star