大きな期待のなかで始まった『競輪ワールドシリーズ2026』も、第1戦・防府競輪場、第2戦・小倉競輪場、第3戦・青森競輪場までの序盤戦が終わった。

トラック競技の世界トップ選手たちが、日本の競輪に挑むこのシリーズ。レースを重ねるごとに見えてきたのは、日本の競輪が単純なスピード勝負だけでは決まらないということ。位置取り、ライン、ブロック、仕掛けどころ、バンクごとの特徴。世界タイトルホルダーであっても、簡単には勝ち切れない“競輪の難しさ”が、各レースで浮かび上がっている。

ここでは、第3戦終了時点での外国人選手たちの戦績と、それぞれの序盤戦を振り返る。

ハリー・ラブレイセン

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防府で完全優勝。“絶対王者”は、競輪でも強かった

出場:第1戦・防府

戦績:第1戦 防府 完全優勝

オリンピック、世界選手権といった舞台で数々のメダルを手にしてきたハリー・ラブレイセン。開幕戦・防府で見せた走りは、まさに“絶対王者”と呼ぶにふさわしいものだった。

初日、2日目と勝利を重ねると、最終日の決勝でも主導権を握る走りを披露。新田祐大とラインを組んだ決勝では、世界最高峰のスプリント力だけでなく、競輪の流れのなかで勝ち切る対応力も見せた。最終的には3日間すべて1着の完全優勝。競輪初出走ながら、シリーズ開幕の主役となった。

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武器はトップスピードだけではない。踏み出し、加速の持続力、前に出てからの粘り、そして勝負どころで迷わない判断の速さ。トラック競技で積み上げてきた総合力が、競輪のバンクでも十分に通用することを証明した。

ただし、第2戦・小倉、第3戦・青森の出場はなし。開幕戦と比べて、外国人選手を相手にどう立ち向かうか日本人選手たちもすでに対策は練っている。今後、より警戒される立場になった時、強力な日本ラインを相手にどんなレースを見せるのか。王者の本当の適応力は、ここからさらに問われていく。

ジョセフ・トゥルーマン

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経験者だからこそ見える難しさ。勝ち切れないなかにも確かな前進

出場:第1戦・防府、第2戦・小倉、第3戦・青森

戦績:第2戦 小倉 決勝3着、第3戦 青森 最終日2着

ジョセフ・トゥルーマンは、男子では唯一日本の競輪経験者だ。過去の来日では複数回の優勝を記録しており、競輪適性の高さはすでに証明済み。だからこそ、序盤戦での走りに注目が集まった。

しかし開幕戦・防府では、初日に勝利を挙げるも、2日目以降は日本勢のブロックに苦しんだ。最終日も前を行く選手を捉え切れず4着。競輪ワールドシリーズとしての初戦は、やや苦い結果となった。

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一方、第2戦・小倉では初日、2日目と勝利を重ねて決勝へ進出。決勝では前からレースを組み立て、勝負どころで市田龍生都、阿部英斗らと激しく争った。最後は阿部、伊藤颯馬に交わされて3着となったが、主導権争い、牽制、ラインとの連係を含めて、“日本の競輪”で戦っていることが伝わる内容だった。

第3戦・青森では、準決勝でブロックに苦しみ4着。決勝進出はならなかったものの、最終日は先行してラインでワンツー。自身は2着となった。勝利こそ逃したが、自分のラインでレースを作る形が見えたことは収穫だった。

トゥルーマンの序盤戦は、前評判を考えればやや物足りなさも残る。しかし、毎レースで異なる展開に対応しようとする姿勢は明確だ。単純なスピードで押し切るのではなく、今の日本競輪のなかで最適解を探している段階と言える。経験値と修正力を考えれば、シリーズ中盤以降に最も上積みが期待できる選手の1人だ。

マシュー・リチャードソン

マシュー・リチャードソン, Matthew RICHARDSON, 競輪ワールドシリーズ, 3日目, 第2戦, 小倉競輪場

 “世界最速”が浴びた競輪の洗礼。スピードは本物、課題は位置取りと仕掛け

出場:第2戦・小倉、第3戦・青森

主な戦績:第2戦 小倉 初日1着、第3戦 青森 準決勝3着・最終日2着

マシュー・リチャードソンの日本競輪デビューは、強烈なインパクトを残した。第2戦・小倉の初日、圧倒的なスピードを見せつけ勝利。上がりタイムはバンクレコードに0.1秒差に迫るもので、SNS上でもそのスピードに驚く声が広がった。

しかし、2日目以降は一転して競輪の難しさに直面。準決勝ではブロックを受けて加速し切れず7着。最終日も位置取りに苦しみ、7着に終わった。初日1着からの7着、7着。世界トップの脚力があっても、競輪では“踏める場所”を確保できなければ勝負にならないことを示す結果となった。

マシュー・リチャードソン, Matthew RICHARDSON, 競輪ワールドシリーズ, 3日目, 第2戦, 小倉競輪場

続く、第3戦・青森では、内容に変化が見えた。初日は2着。2日目の準決勝では中野慎詞との激しい主導権争いを演じ、場内を大きく沸かせた。結果は3着で決勝進出を逃したが、“日本の競輪”の舞台で代表同士の意地が正面からぶつかる好レースを見せた。最終日も2着に入り、小倉で受けた“洗礼”を経て、少しずつ対応を進めている。

リチャードソンは、純粋なトップスピードで言えば“世界最速”。しかし、競輪ではそのスピードをどの位置、タイミングで使うかが問われる。今はまだ、トラック競技の感覚と日本競輪の駆け引きの間で調整を続けている段階だろう。裏を返せば、中盤戦以降、最も化ける可能性を秘めている選手だ。

エレセ・アンドルーズ

エレセ・アンドルーズ, ANDREWS Ellesse, 競輪ワールドシリーズ, 3日目, 第2戦, 小倉競輪場

開幕戦優勝、青森で再び頂点へ。安定感と修正力が光る

出場:第1戦・防府、第2戦・小倉、第3戦・青森

主な戦績:第1戦 防府 完全優勝、第2戦 小倉 決勝2着、第3戦 青森 完全優勝

女子で最も安定した成績を残しているのが、エレセ・アンドルーズだ。

第1戦・防府では初日、2日目と勝利を重ね、決勝でも強烈な捲りで優勝。競輪初出走ながら、落ち着いたレース運びと圧倒的なスピードを見せた。初戦からさまざまな走りを見せ、ガールズケイリンへの適応力の高さを示した。

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第2戦・小倉でも初日、2日目と勝利。決勝ではヘティ・ファンデルワウとの世界トップクラスの一騎打ちとなり、最後はファンデルワウに交わされて2着となった。敗れたとはいえ、レース後には「見る価値のあるレースができた」と語ったように、内容面では十分な存在感を示した。

そして第3戦・青森では再び優勝。小倉で敗れたファンデルワウ、そして日本の太田りゆらを相手に、再び頂点へ立った。防府、小倉、青森と全レース連続で決勝の心に立ち続けている。

アンドルーズの強みは、単にスピードがあるだけではない。レース後のコメントからも分かるように、1走ごとに学びを持ち帰り、次のレースで試している。展開に応じて走りを変えられることが、3戦を通じた好成績につながっている。

序盤戦は、アンドルーズを中心に動いてきたが、今後、マチルド・グロやファンデルワウとの再戦、日本人選手の研究が進むなかで、どこまで勝ち続けられるかに注目だ。

ヘティ・ファンデルワウ

ヘティ・ファンデルワウ, Hetty van de Wouw, 競輪ワールドシリーズ, 3日目, 第2戦, 小倉競輪場

小倉で完全優勝。アンドルーズとのライバル関係が女子戦線を熱くする

出場:第2戦・小倉、第3戦・青森

主な戦績:第2戦 小倉 完全優勝、第3戦 青森 決勝2着

ヘティ・ファンデルワウは、第2戦・小倉から参戦。初の日本競輪となった小倉では、初日から強さを発揮。2日目には後方からロングスプリントを決め、決勝でもアンドルーズとの直接対決を制した。3日間すべて1着の完全優勝。競輪デビュー戦としては、これ以上ない結果を残した。

ヘティ・ファンデルワウ, Hetty van de Wouw, 競輪ワールドシリーズ, 3日目, 第2戦, 小倉競輪場

第3戦・青森でも初日、2日目と勝利を挙げ、決勝へ進出。最終日はアンドルーズに敗れて2着となったが、2節連続で決勝の主役を担ったことに変わりはない。

ファンデルワウの魅力は、トップスピードの伸びと、後方からでも一気に届くロングスプリントにある。一方で、位置取りで包まれる場面や、仕掛けが遅れた時にどう抜け出すかは今後のポイントになる。小倉のように外を踏み切れる展開なら非常に強いが、日本勢のマークや牽制がより厳しくなった時、どのように対応するか要注目だ。

マチルド・グロ

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開幕戦で力を見せるも決勝で失格。次戦で問われる修正力

出場:第1戦・防府

主な戦績:第1戦 防府 初日1着、2日目1着、決勝失格

マチルド・グロは、第1戦・防府に出場。久しぶりの日本競輪となった初日、最後方から一気に仕掛けて8車身差の勝利を収めた。2日目も強烈な捲りで連勝。そのスピードは、やはり世界トップレベルであることを示した。

しかし、決勝ではレース中の接触により失格。2着で入線しながらも、結果としては悔しさの残る開幕戦となった。

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第2戦・小倉、第3戦・青森には出場していないため、現時点での評価は防府の3走に限られる。それでも、初日と2日目の勝ち方を見れば、次に登場した時も優勝候補の1人であることは間違いない。決勝の失格をどう受け止め、どのように修正してくるのかに注目いただきたい。

第1戦から第3戦までは、外国人選手たちが日本の競輪を体感し、学び、修正していく時間でもあった。レースを重ねるごとに対応力が増すのか。それとも、日本人選手たちがさらに研究を進めて包囲網を強めるのか。10日(金)からは第4戦・伊東温泉の開催も始まる。競輪ワールドシリーズの中盤戦は、単なる“世界のスピード対日本の競輪”ではなく、“どちらが先に適応するか”の戦いになっていく。

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「競輪ワールドシリーズ」とは?

1982年より「国際競輪」としてスタート、2009年より「短期登録制度」として行われていた外国人選手招聘レース。新型コロナウイルス感染症の影響などもあり2020年度以降中断されていたが、7年の時を経て復活する。

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