「筋肉でペダルを踏んでる」 目下の課題
Q:以前から勧誘があり、いわば“満を持しての挑戦”といえるかと思いますが、練習自体はいつ頃から始めたのですか?
競輪のトレーニングを本格的に始めたのは2025年の1月です。ひたすらバンクで乗り込んでいます。
Q:練習はどうですか?
めちゃくちゃキツいです。自転車を漕ぐ体力も、技術もないので、がむしゃらに頑張っています。
Q:実際に走りを見た坂井選手からは、どんな言葉をかけられましたか?
「筋肉でペダルを踏んでる」と言われています(笑)。「ペダルは回すもの」という理解はしているつもりなのですが、スピードがあがってくると、ガッコンガッコンと三角形を描くように踏んでしまっている。難しいです。養成所の試験に落ちてしまった人にも練習で負けてるので、本当にやばいです。
Q:一方で、これまでのキャリアが活きている、と感じる部分もありますか?
ハロン(200m)とかを駆ける時のスピードの乗せ方は、普通はもうちょっと手こずるんだろうな、という感覚はあります。
トレーニングの目的は、追い込むことではなくて強くなること
Q:やっぱり、トレーニングのキツさの種類はまったく異なりますか?
全然違いますね。ただ、ウエイトリフティングでは追い込んで練習すると免疫が落ちて風邪をひくことが多いのですが、そういったことは今のところ起きていないですね(笑)。
Q:肉体を極限まで追い込むのが好き、という性質があるのでしょうか?
どうですかね……吐くまでやるようなトレーニングからは逃げ続けてきたので、いますごく苦労してます(笑)。
Q:逃げ続けてきた人は、オリンピアンになれないと思いますが……
ははは(笑)。正確に言うと、自分に必要なトレーニングはそういうものではない、と思っていたんです。
トレーニングの目的は、追い込むことではなくて強くなること。「今日も体を痛めつけたな」で満足してしまっては、本当に強くはなれないと思っています。自転車でも、それは同じだと思います。
Q:ちなみに普段は、どういった生活を送っていたのでしょうか?
家で映画を見たりすることが多かったです。スポーツ選手の難しい部分ですが、休みの日があっても、それは次のトレーニングのための休養だと思っていました。趣味がすごい充実してる人には、負けられないです。
今はとにかく乗り込み。筋肉はマッスルメモリーに頼ります
Q:先ほどInstagramのお話をしましたが、やはり筋肉を見せつけるポストが印象的です。脱ぐのは好きですか?
好きですね(笑)。トレーニングのモチベーションにはしてました。
でも、全盛期と比べて上半身の筋肉はだいぶ落ちました。少しずつ自転車用の体になってきていると思います。
とにかく今は、体が小さくなってでも、ペダリングを覚えないといけない。筋肉に関しては、マッスルメモリーに頼ろうと思います。
Q:養成所に入所したら、筋肉でマウントを取れそうです。
もちろん仕上げたらバッキバキにはなりますが、それでカマしても、“使えない筋肉”みたいな扱いになったら嫌なのでほどほどにしておきます(笑)。
目標は…ウエイトリフターならではの考え方
Q:あらためて、養成所入りに向けて、率直な今の心境は?
ワクワクもドキドキも、心配もあります。
Q:近い目標と、遠い目標を教えてください
まずは、夏に行なわれる2回目の記録会をターゲットにしていて、少しでも良いタイムを出したいですね。
遠い目標で言えば、師匠と一緒に走りたいです。競輪の世界に誘ってくれて、師匠にもなってくれた坂井選手と肩を並べてレースしたいですね。
Q:「S級S班」や「グランプリ制覇」ということは考えないですか?
ウエイトリフティングには「基準重量」というものがあって、大きな大会に出るためには、競技会などで一定の重さを挙げることが必要になります。そういう背景もあって、これまでは目の前の大会、そして目の前のバーベルを挙げられるか、ということだけに集中していた。正直に言えば、オリンピックのことを考えてやっていたわけではありませんでした。
同じように、競輪の最高峰であるS級S班になる、そのために何をする、という考え方は、少なくとも今はできません。
とにかく目の前の課題やトレーニングに集中して、それを続けていくことで、少しずつ最高峰が見えてくるんじゃないかと思います。