HPCJCと日本競輪選手養成所の取り組み
キャンプ1日目の昼食後には、「伊豆を拠点に活動するHPCJCと日本競輪選手養成所の取組み」と題された講義が実施された。
講義ではHPCJCのアシスタントコーチを務める佐々木龍也コーチと、HPDの教官を務める田中裕二コーチが登壇。2人とも元競輪選手という立場を活かし、現在は指導者としての道を歩んでいる。
2人のコーチによる特別講義はQ&A形式にて実施。
HPCJCとHPDについての説明に加えて競輪選手やトラック競技選手を目指す上での準備方法や、目指す上での心構えなどが参加者の前で語られた。
Q:トラック競技にはたくさんの種目がありますが、最も注目する種目はなんですか?
佐々木コーチ:『2023世界選手権トラック』で中野慎詞選手が銅メダルを獲ったケイリンですね。ケイリンは何が起こるかわからない種目です。スピードだけでなく、技術や運、そして日常生活も結果に現れる種目だと思います。
田中コーチ:私も同じく、日本で発祥して日本で育ってきたケイリンが最も注目される種目だと思います。
Q:日本の競輪では”気持ち”が結果を左右すると言われる印象があります。ケイリンでも同じことが言えるでしょうか?
佐々木コーチ:”気持ち”というのは大きく結果に影響するものだと思います。例えば強い選手や有名選手を前に縮こまってしまうと、その時点でパフォーマンスは大きく変わってしまいます。そして僅かな仕掛け所を逃さないためには、勇気が必要です。そしてサポート・応援してくれる方への感謝の気持ちを忘れずに持つことも重要です。時には感謝の気持ちが運を呼び寄せることもあります。
Q:日本トラック競技ナショナルチームでは2016年より外国人コーチを招いて強化を図っています。文化の違いなど困った経験はありましたか?
佐々木コーチ:英語です。競輪選手の時は英語もパソコンも関係なく、ただ黙々とトレーニングすることが大事だと思っていましたが、「もっと勉強していれば良かったな」と思うことが多くあります。
田中コーチ:コミュニケーションの重要性を改めて学びました。言語が違う相手でも、目を見て相手を理解しようという姿勢がとても重要です。態度や姿勢で築く信頼関係というものを学びました。
Q:成長する選手の特徴などはありますか?
佐々木コーチ:素直さが重要です。コーチングを素直に聞き入れ実践する。そして自分で考え、疑問があれば質問する。何事も自分を成長させるものと捉え、学ぶ姿勢のある選手はコーチとしても教え甲斐があります。
田中コーチ:競輪選手時代、逆に私は色々な意見を取り入れようとしすぎて何が何だか分からなくなってしまった経験があります。アドバイスを受け入れつつ、自分で考えることも重要ですね。
Q:性格面に加え、自転車を扱う上での素質などはありますか?
佐々木コーチ:自転車はペダルを回す乗り物ですので、まずはペダリングが上手い選手は強くなる素質があります。パワーがあっても上手くスピードへ伝達できなければ勝つことができません。
田中コーチ:競輪選手やトラック競技選手の体格を見比べてみると分かると思いますが、必ずしも大きな選手だけが活躍している訳ではありません。自転車という道具を自分の体の一部として使いこなせることが1つの重要な素質だと思います。
Q:どうすれば日本トラック競技ナショナルチームに入ることができるのでしょうか?
佐々木コーチ:1つは『全日本選手権トラック』などで好成績を残すこと。
田中コーチ:もう1つは、日本競輪選手養成所への入所試験に合格し、HPDの選手として選抜されること。
佐々木コーチ:それ以外にも他のスポーツで好成績を残した選手にも、日本トラック競技ナショナルチームの選手として活躍できるチャンスがあります。男女チームスプリントに出場している長迫吉拓選手や酒井亜樹選手はBMXレーシングで活躍していた選手です。
参加者からの質問タイム
HPCJCの佐々木コーチ、HPDの田中コーチによる講義の最後には、参加者からの質問タイムも設けられた。
Q:日本競輪選手養成所の適性試験を受験する上で、これだけはやっておいた方が良いことなどはありますか?
田中コーチ:適性試験では自転車を漕ぐ以外にも、一次試験において垂直跳び・背筋力・長座体前屈の測定があります。その3種目の数値を少しでも向上していくことがまず挙げられます。そのためには基礎体力の向上が必要です。基礎体力を向上させ、各種目に特化したトレーニングをしていくのがお勧めです。
田中コーチ:二次試験においてはWattbikeという自転車を漕ぐパワーやペダリングの回転数を測る試験もあります。そちらに向けたトレーニングも必要です。
佐々木コーチ:面接試験や学科試験もあります。身体能力強化だけでなく、そちらの対策も重要ですね。
Q:具体的なお勧めトレーニング方法などはありますか?
佐々木コーチ:トラックスタンドというトレーニングがあります。ピストバイクでその場で静止し続ける練習です。体と自転車の重心コントロールや力の伝達についての理解を深めることができます。スタンディングスタートの練習にもなりますし、狭いスペースで行えるので家の中でも練習できます。
遊んでいるように見えるかもしれませんが、ナショナルチームもやっているトレーニングです。
「競輪選手とナショナルチームを同時に目指せる」参加者コメント