「見たか慎太郎、あの脚!」

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こんなに充実感に満ちた仕事は他にあるだろうか?

Q:これから競輪選手を目指す若者、例えば高校生に「競輪ってこういう素晴らしいものだよ」と話すとしたら、どんなことを挙げますか?

「自分の可能性を試せること」ですかね。

自分の限界を知る、自分自身を知ることができます。いくらでも上に行くチャンスがあるのに、努力しないで「ここでいいや」と思っちゃう人は多いと思うんです。逆に、やる気があればいくらでも上に行けるのが競輪。野球やサッカーは特殊な才能がなければできないかもしれないけど、競輪はシンプルに努力で上に上がれる世界だと思います。

Q:佐藤選手自身が、身をもってそれを知っていらっしゃる。

そうですよ、俺は身長165cmしかないんですよ。そしてインターハイで優勝とか、圧倒的な才能があったわけではない。努力し続ける才能はあるかもしれないですけどね。それでも、ここまでやれる。努力次第でトップになれるのが、競輪の魅力だと思うんです。

俺は自分を鍛えるのが楽しいタイプでしたが、周りに認められて楽しさを見出すタイプもいる。それらが組み合わさって強くなっていく場合もある。お金も稼げる。

どこでその魅力に気づいて、努力するきっかけになるのかが肝かもしれませんね。

きつい練習中に「仮に20歳に戻ったとして、また競輪選手を選ぶか?」と考えたりもするんですが、自転車から降りてプロテインを飲んでいると「やっぱ競輪選手最高だな」と思います。こんなに充実感のある仕事は他にあるだろうか?1日のトレーニングメニューを自分で決めて、それを達成する。その「達成できた充実感」が毎日あるんです。こんなに素晴らしい仕事は他に無いと思っています。

苦しい練習をこなしたら自分に結びつく、それが結果になると確信できているから、このような考えが強いのだと思います。

45歳が挑む競輪界の頂点

Q:2019年から3連続目のKEIRINグランプリ。再びトップに登りたいという気持ちはもちろんあるかと思いますが。

はい、しかしそれは9人全員が思っていることです。その気持ちは過程、練習の中ではとても大事なことだと思いますが、本番でそういう気持ちが強すぎると、体が動かなくなってしまう。だから逆に楽しんでしまおうかなと思っています。

競輪ファンになったつもりで、一流の選手たちに混じって走れる喜びを感じながら走る。一番間近でレースを見るファンの気持ちでいようかなと思います。

Q:達観した感じがありますね。

若い頃、4年連続でグランプリに乗りました。そこから13年経って出たグランプリが、めちゃくちゃ新鮮だったんですね。「グランプリを走れる喜び」みたいなものを、若い頃の何倍もの強さで感じました。この年齢でグランプリを走れることって、とても貴重なことだと思うんです。いろんなことが重ならないと無理なことだと思うので。

だから「獲りたい、獲りたい」と力むよりは、「自分の力はどこまで通用するのか」と試すような気持ちで挑みたいなと思います。

でも練習の時は「獲りたい、獲りたい」と思っていますよ。そうでなければ練習になりませんから。客観的に自分を見た時、45歳のおっさんが「獲りたい」と言っても「オイオイ」って感じですから(笑)もう少し落ち着いた感じで、本番は走りたいですね。

だって吉田拓矢(KEIRINグランプリの7番車)は、俺が競輪学校に入った年に生まれたんですよ!

Q:こういう話を聞くとますますレースが楽しみになりますね!

……でもぉ、やっぱり一億円もらえるから勝ちたいですね(笑)「一億円もらえたら何買おうかな〜」とうちの妻が言ってます。カルティエがどうのとか……経費では落とせませんね(笑)

Q:では最後に、KEIRINグランプリの抱負をお願いします。

今回のグランプリの抱負は、ズバリ優勝!

……というのは当たり前ですが、ゴールした瞬間に「あそこで踏めばよかった」とか「力が余ってる」とか、そんなことがないように、力を出し切ることが目標です。