優勝しても“頂点”にいると思わない

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無限の可能性が故の「飽くなき探究者」

Q:自転車にのめり込んだのは、自転車競技に取り組まれた高校生の時からでしょうか?

競輪学校(現:日本競輪選手養成所)にはタイムを出さないと受からなかったし、競技の大会でもタイムが求められ、勝つ事ができませんでした。当時は今のように「自転車の面白さ」はわからなかった。「ただ苦しい」と思っていました。

ひたすら体力や身体作りに追われ、学校を卒業するまでは「仕事」という感覚でした。

Q:“楽しい”と感じた、ターニングポイント、それはどのようにして訪れたのでしょうか?

先輩に、自転車の乗り方だったり、身体の使い方を教わった時に「こんなに変わるんだ!」という発見がありました。それまでは“苦しければ速い”という呪縛がありましたが、解放されました……マインドが変わったんですよね。

自転車との新しい向き合い方が見えてきて、ギアや練習方法も色々と研究しました。結果として「これは無限に可能性があるな」と思いました。その考えが今もずっと続いてる感じです。

自転車に乗り出して25年、自転車を好きになって20年。ずっとそういうことを追求して今があって、まだまだやることがあると思っています。やりたいことが明確なので、時間も他の物も、何もかもが足りないです。楽しいという気持ちはずっと変わっていません。

Q:今の言葉からしても、そして周りの選手からの情報もからしても、平原選手のトレーニングへの向き合い方に関しては“探求”という言葉がふさわしい気がします。

終わりがない感じですね、尽きない。それが「尽きた時」に面白くなくなるのかなと思います。「勝てなくなった時」じゃなくて。ですから探求者かもしれないです。「飽くなき探求者」が自分を表現するのに一番近い言葉かもしれません。

Q:年齢を考えると肉体的な衰えは、やはり感じますか?

何で補っていくかなどを、追求して見つけていくしかないなと思います。

誰も踏み入れてない領域に行きたいですよね。いつスイッチが切れるかわからないですけど、体力だけでやってるわけではないですし。どういう風に“100%出し切るか”を求め続けて行きたいです。

わが道を走っているだけ

Q:「平原イズム」と言いますか、平原選手を慕う後輩がたくさんいらっしゃいます。指導者への転向などはお考えはないですか?

全然ないです。指導しているつもりもありません。自分がやりたいことを追い求める、我が道を行っているだけで、それに付き合わせる気もありません。それをやりたい人が、一緒になってやるだけです。

Q:KEIRINグランプリは後輩の宿口陽一選手との出場ですが、その辺りは?

宿口陽一

宿口陽一

緊張感もありますけど、楽しみたいなと思いますね。年末は集大成、1年間やってきたことを出す場面ですから。

Q:KEIRINグランプリで一番楽しみなことは何ですか?

自分でやってきたことがどれだけ通用するか、発表会のような場だと思っています。

なおかつ結果がついてきたら最高だし、満足感や充実感を得られるのだろうなと。自身のパフォーマンスを、100%出せるようにしたいです。

後編では、2020年に話題となった脇本雄太選手との連携の話、プロに入る前の競技時代の関わりなどを聞いていく。

「脇本から得たもの」平原康多インタビュー【後編】KEIRINグランプリ2021