1000分の1秒が命のタイム種目
タイムトライアルやパシュート系の種目は、予選敗退と次の勝負への勝ち上がり、そして優勝と2位では1000分の1秒の差で勝敗が決まる事もあり、タイムにシビアな種目。選手の日々の惜しみない努力はもちろんだが、個々の機材の選択によって大きく結果も変わってくる。
オリンピックに向けて日々世界のタイムは速くなっている。今年の2月末から3月1日かけて開催された世界選手権では男女個人パシュート、男子チームパシュートの3種目が驚異的なタイムで世界記録を更新した。
改めて「速く走る為には何が必要か」について、UCI公式サイト掲載のコラム Seven steps in the pursuit of speedよりお送りする。
1.バイクのジオメトリと特性を理解する
トラック競技で使用される自転車はロードバイクと異なり、固定ギア。そしてブレーキは付いていない。ボトムブラケット(フレームとクランクをつなぐパーツ。通称BB)はロードバイクと比べると通常よりも高い位置にあり、急斜面のバンクを走行してもペダルが当たらないように設計されている。シートポストの角度をフレームと地面に対してほぼ直角にする事で、よりパワーが伝達されやすくなる。最小限の空気抵抗でペダルを回すフォームを実現させるため、ハンドルも独特な形状となっている。
フレームのチューブの形状は丸いパイプ型よりも翼型の方が空力性能が優れており、角張った形のフレームが多い。
2.ホイールの選択
ディスクかバトンか。ホイールの選択も大きくタイムに影響してくる。
前後ディスクホイールは非常に優れた空力性能を生み出せるが、操作性の悪さやスタートからの加速の遅さ、重量の増加なども発生するため、一概に最良の選択とは言えない。対して3〜5本スポークのバトンホイールを使用する場合、優れた軽量性、スタート時のスピード加速の違いなど、ディスクホイールとは違うメリットがある。
2019-2020UCIトラックワールドカップ第3戦香港大会、女子チームパシュートで国内記録の更新と共に銀メダルを獲得したベルギーチームは、メンバー全員が前後ディスクで走った。こういった団体種目の場合はチーム内で機材の統一なども話し合い、綿密に作戦を練る事が不可欠となっている。
3.何を着るか
スキンスーツは、トラック競技選手が着用できるジャージ類の中で一番空力性能が良い。
スキンスーツの生地は風洞実験を繰り返しながら開発・デザインされており、選手の体とバイクのポジションに合わせてスキンスーツのカットやフィッティングを行う事で、最大80%空力性能が向上すると言われている。
UCIルールでは、”選手の形態”を変えるようなウェア類の着用は認められておらず、ジャージの生地の凹凸差は1mm以下までと規定されている。