最短ルートはS級特昇
「競輪選手養成所へ入る前から『特別昇級でより早くS級に上がりたい』と考えていました。S級じゃないと、こういう車は似合わないと思っていましたから。GT-Rに乗る最短ルートはS級選手になって勝つことだ!と、思いを抱いていました」
ただ競輪選手になるだけでなく、トップ選手へ一気に登り詰め、そしてGT-Rを手に入れよう。そんな野望を抱いて競輪選手養成所へ入所した中野慎詞であった。ではランドクルーザーは?
「ランクルも元々好きで、乗りたい車でした。新型が発売されると知り、今オーダーをしないと絶対に買えない……と思いました。当時はまだ候補生であったものの、今オーダーをすれば早期卒業したタイミングに丁度納車されるな、と。
オーダー時点で早期卒業は決まっていませんでしたが、“俺は絶対に早期卒業する!絶対に稼ぐ!”と心に決めていたんです。
しかし、いざ早期卒業を決めたものの、新型コロナの影響で超長納期になってしまいました。卒業後、車が必要だけどランクルはいつ来るかわからないので、家族に借りた車などでしばらく過ごしていました」
現行の300系ランドクルーザーは、発売されるやいなや「最長5年」とも言われる超長納期化が話題となった。これはコロナ禍に端を発する世界的な半導体不足の影響と、世界中が待望したランクルの新型という事情もある。
このような背景により予定が狂ってしまったが、中野慎詞はデビュー戦も完全優勝、そこから連勝を重ねに重ね、見事S級への特別昇級を決めた。
「S級に特別昇級を決めた時に、それまでに獲得してきた賞金額とかを振り返ったら『あれ?GT-R買えるんじゃ?』と思いました。もちろん一括ではなく、ローンでの話ですけど。
それに“GT-Rはもう生産されないらしい”という話も聞き、なおさら今買わないと2度と買えなくなると思い。そこでGT-Rに憧れるきっかけになった地元のディーラーへ聞いてみました。あの“君みたいな人が買える車じゃない”と言われたディーラーです。
そしたら、ちょうど中古が1台あって。これはもう買うしかない、と。3年越しにリベンジを果たしましたよ(笑)」